長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 泌尿器科学分野 酒井 英樹 教授

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健康長寿社会の泌尿器科医の使命とは

【さかい・ひでき】 長崎県立佐世保北高校卒業 1983長崎大学医学部卒業 同附属病院泌尿器科研修医2000 長崎大学医学部附属病院泌尿器科講師 2009長崎大学大学院医歯薬学総合研究科腎泌尿器病態学分野(現:泌尿器科学分野)教授

 「泌尿器がん死亡者数減少」「腎不全患者の生存率とQOL(生活の質)の向上」「高齢者に多い排尿障害や骨盤臓器脱に対する低侵襲治療の推進」。

 健康長寿社会の実現を目指して3点を教室の運営目標に掲げる長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学分野。酒井英樹教授に最近のトピックを聞いた。

―全国のがんの罹患(りかん)数予測(2017年)では、前立腺がんは第3位と上位です。

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 前立腺がん対策はわが国の重要な課題です。今春には、日本泌尿器科学会から前立腺がん検診ガイドラインの改訂版が発行されます。改訂版で注目されるのがこれまでアメリカなどで否定的な意見が多かった前立腺特異抗原(PSA)検査を使った前立腺がん検診が、改めて推奨されている点です。

 PSA検査は採血のみと簡便です。数年ほど前までは「見つけなくてもよいがんまで見つける」と言われ、過剰診断、過剰治療につながると否定的な意見もありました。

 しかし、検診による前立腺がん死亡率の低下、転移がん罹患率の減少効果が立証され、今回の改訂に反映されています。

 このようにガイドラインで推奨されたことに伴い、今後はPSA検診の重要性が広く認知され、適切なPSA検診がさらに普及することを期待しています。

 われわれ泌尿器科医としては、早期の前立腺がんが見つかった場合には、排尿機能や性機能を温存しながらもがんを根治させることに、より力を注いでいかなければなりません。

 そのためには手術支援ロボット「ダビンチ」は重要なツールです。「ダビンチ」は、術者の視野が拡大されるためより精密な手術が可能です。長崎大学病院では2014年に導入しましたが、これまで約200例の前立腺がん手術に使用しました。

 前立腺がんは進行が遅いものが多いのも特徴の一つです。このため、進行するリスクが低いがんの方の場合には、すぐに根治治療をするのではなく、3カ月に1回PSAを測定し、進行の可能性が高くなった時点で適切な治療をする「監視療法」を実施することもあります。

 患者さんの評価を適切に実施して、根治と機能温存が両立した最善の治療を提供できるように努力しています。

―高齢化の進行に伴って泌尿器科として特に注力している疾患などはありますか。

 排泄は高齢者が快適な生活を送るためには重要な要素の一つです。

 排泄がうまくできないことによって活動が制限され、QOLを下げかねません。当科でも「高齢者のQOLの向上」を運営目標の一つに掲げ、高齢者に多い排尿障害の治療に力を入れています。

 頻尿や尿失禁といった症状を伴う過活動膀胱は男女ともに高齢になるほど増加します。当科でも患者数が年々増加し、薬物療法や外科的治療で対応しています。

 そのほかに患者さんのQOLを良くするために力を入れている分野が高齢女性に多い骨盤臓器脱です。

 子宮脱、ぼうこう瘤、直腸瘤の三つを総称してそう呼びます。加齢による骨盤底筋群の脆弱(ぜいじゃく)化が原因と考えられます。症状が悪化すると、日常生活がひどく制限されてしまうこともあります。

 骨盤底筋体操やペッサリーによる保存的治療によって症状が改善しない場合は、外科的な治療も選択肢の一つです。

 当科では、医療用のメッシュシートを膣と膀胱の間に挿入する経膣的メッシュ手術や、腹腔鏡下にメッシュを用いて膣と仙骨を固定する手術を行っています。

―新たな専門医制度がスタートします。長崎県での取り組みの特徴はどのようなものでしょうか。

 私たちは「ながさき泌尿器科専門研修プログラム」として4年間のプログラムを作成しました。基幹施設となる長崎大学病院で泌尿器科診療の基本および先進医療を学び、四つの二次医療圏にある計八つの連携施設で一般泌尿器科診療について学びます。1年目は大学で、2、3年目は連携施設、そして4年目に再び大学での研修という流れになっています。

 本プログラムの特徴は一般泌尿器科から腎移植などの先進医療まで幅広く学べることです。女性泌尿器科、内分泌疾患、尿路結石などの外科手術にも取り組むことができます。泌尿器科のサブスペシャルティ領域はすべて網羅しています。専攻医にとっては広い領域を学べることが魅力だと考えています。

―2018年には二つの研究会・学会で会長を務められます。それぞれの狙いなどについて教えてください。

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 7月5日(木)と6日(金)に「第27回日本腎泌尿器疾患予防医学研究会」を長崎市で開催します。テーマは「すこやかな生活〜泌尿器科医の役割〜」としました。

 超高齢社会で、多くの人が健康に過ごせるようにするために、われわれ泌尿器科医が果たすべき役割は何かを考えたいと思っています。特に、CKD(慢性腎臓病)の管理や排尿機能の維持などが課題に挙げられると思います。患者さんのQOLを維持、向上させるような医療についてみなさんと考え討議します。

 11月1日(木)から4日(日)までの4日間は「第70回西日本泌尿器科学会総会」を長崎市で開きます。テーマは「めざせ健康長寿社会〜明日への挑戦〜」です。

 九州・中国・四国で泌尿器科医療に関わる医師らが集まり、健康長寿社会をテーマにして泌尿器科医療が抱える今後の課題について議論します。昨年は参加者が約1千人超。今年も多くの方が参加されると思います。

 シンポジウムでは、「QOL向上を目指した泌尿器がん治療」および「健康長寿と排尿機能」の二つをメインテーマにしています。

 国が推進する働き方改革でも、「高齢者の就労促進」が掲げられています。高齢者の健康のために泌尿器科医が何をすべきかを考えていきます。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学分野
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac. jp/urology/


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