「病院の中に町がある」 ホスピタウンというとらえ方 ―高齢化社会にこそ身体にやさしい統合医療を―

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一般社団法人 玉名郡市医師会立|玉名地域保健医療センター 赤木 純児 院長

1973 九州大学文学部入学 1977 年卒、同年宮崎医科大学入学。1983 同大学を卒業し、熊本大学医学部付属病院第二外科研修医 1984 熊本市民病院麻酔科/外科研修医 1985 熊本大学大学院医学研究科博士課程 1989 同修了後、国立宮崎病院勤務 1991 熊本大学医学部付属病院第二外科 1992 米国国立癌研究所リサーチフェロー、1995 熊本大学医学部付属病院第二外科 1998 玉名地域保健医療センター 2000 国立病院機構熊本南病院 2010 玉名地域保健医療センター院長。現在に至る。玉名郡市医師会理事日本統合医療学会熊本県支部長

 玉名で生まれ育ったという若い女性に、玉名市の魅力を聞くと、「温泉があること。よそで暮らしたらわざわざ探さなければいけない」と即座に答えた。

 玉名地域医療保健センターの赤木純児院長は2度目の登場。温泉は住民の健康に寄与するのか、うまくいっていると語った在宅治療のその後は、統合医療は広がっているのかなどを聞いた。

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中央グレ―の背広姿が赤木院長。医療センター開設30 周年記念パーティーで。(6 月27 日司ロイヤルホテル)

 当院の周辺は温泉が多く、玉名だけでなく山鹿(やまが)や平山にも温泉があります。昔から温泉養生といって、身体を温めることは病を癒やすにはいいことは知られていましたが、最近になって42度前後のお湯につかると、ヒートショックプロテインという蛋白が体内で産生されることが分かってきました。この蛋白は、傷んだ細胞を修復する働きを持っています。また、体を温めると免疫が強化されることも分かってきました。だから、温泉につかっているだけで、いろんな病気が癒えるのです。銭湯みたいに頻繁に温泉に行く環境が整った玉名は、そういう意味では、住民の健康に非常に貢献していると思います。

 当院のハイパーサーミア(温熱療法)は、いわば、温泉療養を強化したような治療法です。ヒートショックプロテインの産生や免疫力の増強のほかに、42℃以上に温度が上がると、癌細胞が特異的に死んでいきます。一昨年にもお話ししましたが、我々は西洋医療に加えて、温熱療法や免疫治療や漢方治療などを取り入れた統合医療をしています。たとえばがん治療において、西洋医療だけで治癒しなければ、「もう治療法はありません、緩和病棟に行って下さい」と医師から宣告されて、いわゆる「がん難民」になってしまいます。でも実際はそうではなく、西洋医療の隙間を埋めるいろんな治療法( 補完・代替医療) が存在しています。統合医療は、西洋医学に加えて、補完・代替医療を行う治療法です。

 米国や中国ではすでに統合医療の病院が運営されていて、移植手術をやっている隣の部屋で鍼(はり)を打っているし、漢方薬も処方するしヨガもやっている。こういう統合医療病院では、補完・代替医療が西洋医学と同じレベルで行われているのです。

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 右写真上=九州新幹線新玉名駅から玉名地域保健医療センターまでおよそ800m。同下=玉名地域保健医療センターから遠くに新幹線駅を望む。赤木院長によれば、ハイパーサーミアや免疫治療などをインターネットで知って、宮崎や大分から紹介状を持って来る人もいるという。「高速道路もすぐそばを通っていますからね」。

 日本では、医師たちはまだまだ最先端の西洋医療にばかり魅力を感じていて、統合医療への意識は低い状態です。それは、西洋のものを無条件に信奉するという日本人の性癖かもしれません。欧米がすでに統合医療へシフトしていっているにも関わらず、日本の医療は西洋医学以外の医療を軽視するような風潮がはびこっています、いわばガラバゴス状態になっているのです。

 ただ統合医療はエビデンスが出にくい領域ではあるので、統合医療を認識してもらうためにはエビデンスをちゃんと出していこうという流れが出てきています。私も日本統合医療学会の熊本県支部を昨年立ち上げ、エビデンスのある補完・代替医療の紹介のために活動を広げているところです。西洋医学に補完・代替医療をプラスすれば治療効果が上がるし、西洋医学から見放された「がん難民」に「まだこんなに治療法はありますよ」と治療法を呈示できることは患者さんに安心感を与え、それでまた治療効果が上がります。

 玉名は、訪問看護ステーションがよく機能していること、医師会病院と医師会の先生方との連携が以前より非常にうまくいっていることなどがベースになって、全国でも有数の在宅医療のモデルになっています。在宅医療は、国のいう「地域包括ケアシステム」の構築には欠かせないものです。「地域包括ケアシステム」とは、私の考えでは、医療・介護・福祉などの多職種の人たちが中心となって作られる、新しい形のコミュニティーだと考えています。古来の日本には、自然発生的なコミュニティーが存在していて、その中では住民が皆家族のように関わり、助けあって生活していました。しかし、今や古来のコミュニティーは完全に崩壊して、その結果、核家族化、独居老人、老々介護などの問題が噴出しています。医療・介護・福祉などの多職種の人たちが中心となって作る、現代型のコミュニティーとしての「地域包括ケアシステム」は、これから高齢化社会を迎える日本にとって、必須のシステムになってくると考えています。街に病院があるのではなく、病院の中に街があるという、いわば、ホスピタウンの考えで、これからは、医療関係者が医療・介護・福祉はもちろんのこと、それ以外の住民の生活全般を見守り、支えるという思想で、街づくり、病院づくりが必要になってくると思います。医療・介護・福祉などの多職種の人たちが中心となって作る、現代型のコミュニティーとしての「地域包括ケアシステム」を実現した、ホスピタウンこそ、理想だと考えています。


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