患者さんには質の高い医療と介護を職員には医療人として満足のいく仕事を
■病院の現状
2009年に病院事業を継承してから、透析の患者さんも増加してきたため、2012年の夏に新人工透析棟を造設しました。その後も想定以上に患者さんは増加してきているため、今後は紹介された患者さんをいかに受け入れていくかが課題となっています。
単に受け入れ数を増やしたのでは、職員たちはぎりぎりの状態で働かなければならないし、そこで提供する医療の質が落ちては本末転倒です。医療の質をキープしながら、受け入れ体制を整えていきたいと思っています。
■職員の確保について
当院のような中小規模の個人病院は、公立病院、大病院と違って、職員の確保が厳しい状況にあります。そうした状況の中では、若い職員が入ってきたときに、継続して働いてもらうことが大事になります。
職員教育をしっかり行い、きちんと仕事ができるような道筋を作る。新入職員の中には、以前の職場でくじけたり、挫折したりした経験がある職員もいます。そこをわれわれが上手にサポートして、やりがいを見つける手伝いをすることが大切なのです。
たとえば、新しく看護師が入ってきたときには、「はい、ここで働いてください」と本人に任せきりにするのではなく、プリセプター(新人看護師の教育・指導を行う看護師)をつけ、技術面、精神面で支援できる体制をとっています。また、既存職員の看護体制としてもパートナーシップをとり、お互いの看護技術の向上を目指しています。
実際にペアを組んでみて、「なんだか合わなかった」ということのないように、そのあたりは看護部長がうまく考えてやってくれています。
■職員のモチベーションを高めるために
私は、幹部・中間管理職同士のコミュニケーションを深め、風通しをよくすることを重んじています。いきなり全体のコミュニケーションを深めようとしても無理がありますから。
職員のモチベーション管理についても同様です。まずは幹部・中間管理職のモチベーションを上げて、部下とのコミュニケーションを密にすること。その上で職員教育を行うように心掛けています。
ですから、飲み会も多いです(笑)。ちなみに、2月18日には年に一度のボウリング大会がありました。これは西友会という職員の会が企画したもので、みんなで楽しく親睦を深めています。
もちろん、院内の親睦会だけでは、広い意味での「人のつながり」をつくることは難しいです。
私は休日に、他院の先生方とゴルフをすることも多いのですが、そうして医者同士のネットワークを作っておくことで、患者さんを紹介したり、紹介されたりすることもスムーズに行えています。
■医者になるきっかけ
実家は医療とは関係ないのですが、学生のころ、渡辺淳一さんが書かれた多くの医学小説を読んで、医者に憧れて医学部に進みました。
泌尿器科を選んだのは、仕事の内容というより医局の雰囲気です。もとより外科系の仕事をやりたかったのですが、一般外科は緊急手術もあり、自分自身のQOL(生活の質)を保ちながら仕事をすると考えると、私には厳しいかなと思って。志が足りないですかね。
そんな中、手術もできてQOLを保ちながら仕事ができると思えたのが泌尿器科でした。実際になってみると、自分に合っているなと思いました。でも、最近は泌尿科医というよりは透析医というところに重点を置いています。
■理事長・院長として
理事長は病院の経営を見る立場で、院長は患者さんを診る立場です。私は理事長として単に職員を雇用し働かせるのではなく、院長として、患者さんを診ることで職員を引っ張っていきたいと考えています。
職員には、この病院で働く以上、医療人として満足できるような仕事をしてほしい。それが職員のモチベーションにもつながると思うので、しっかり考えて指導していきたいですね。
まずは、患者さんにすべきことをしっかりする。病院の利益を最優先にしていると、患者さんはもちろん、職員もついてこなくなりますから。
当初は私が職員を引っ張っていたのに、最近では職員が私の背中を押してくれるようになり、非常にうれしく思っています。
■今後の展望
まだまだ当院が持っている機能を100%生かしきれているとは言い難い状況です。マンパワーの不足が要因ではありますが、あまり性急すぎると、職員に負担がかかります。そこを鑑(かんが)みながら、少しずつクリアしていきたいと考えています。
当院には、四国地方で唯一、「ハイパーサーミア(がんの温熱療法)」があります。今年4月には、大学病院でハイパーサーミア治療を担当していた先生が当院の常勤になりますし、今後はますます地域に貢献できる病院として、その能力を100%にまで高めていきたいと思っています。