土佐市立土佐市民病院 田中 肇 病院長
1982 高知学芸高等学校卒業 1988 高知医科大学卒業、同第一内科入局 1989 出口病院 1990 高知医科大学第一内科 1991 田野病院 1997 土佐市立土佐市民病院 2008 同病院副院長 2012 同病院院長
■免許・資格等
日本内科学会認定内科医 日本内科学会認定総合内科専門医 医学博士 Immune Responses to dihydrolipoamide dehydrogenase (E3) forPrimary biliary cirrhosis 日本消化器病学会専門医 高知大学医学部臨床教授 日本医師会認定産業医 ICD(インフェクションコントロールドクター) 医療安全管理者
高知県災害拠点病院に指定され、女性医師・スタッフによる女性専門外来の設置など新たな取り組みも進める土佐市立土佐市民病院。田中肇院長に、目指す病院の姿や思いを聞いた。
―災害拠点病院としての現状、備えは。
南海トラフ地震や東南海トラフ地震が起きた時には、土佐市内を含め高知県の海岸沿い広範囲に大きな被害が出ることが予測されています。当院のある場所は標高が高く、ハザードマップを見ても津波を免れるという想定ですので、土佐市近郊が被災した際の医療拠点として、非常に期待されています。
発災から48時間以内の超急性期に患者さんが集中することが予想されます。事前の準備をしっかりしていますし、医師・看護師、ほかのメディカルスタッフも含めた「トリアージ訓練」なども日ごろから実施しています。DMATは現在1隊あり、もう1隊作ろうと準備を進めているところです。
―医師不足、偏在が言われています。
大都市圏はむしろ多いのでしょうが、それ以外のところは少ないんです。当院の常勤医師は現在18人。足りているとは言えないですね。
しかも、当院の医師のほとんどは高知市在住です。夜間に災害が起きた際には、当直の医師以外、医師がいないということにもなりかねません。災害拠点病院として、そのあたりも含めたシミュレーションが必要です。
また以前は、当直医も、内科系、外科系と1人ずつ設けていましたが、今はどうしても外科だけ、内科だけの日が出てしまっています。
内科医自体は8人いますが、子育て中で時間短縮勤務にならざるを得ない先生もいますからね。市民の方々にご迷惑をかけることもあると思います。
育児中のスタッフからの要望が多かったため、2012年4月から病院に保育所を併設しています。万一の時はすぐに様子を見に行けますし、安心して預けていただけているのではないでしょうか。当直時など夜間勤務の際の対応も含め、もう少し広げていきたいと思っています。
―女性専門外来も設置されたそうですね。
女性医師、女性スタッフによる女性のための外来です。患者さん、市民の希望や期待を受け、「土佐市・近傍の女性を元気にする」を合言葉に作りました。
女性には男性にはわからない、特有の病気があります。また性周期に伴うさまざまな病気、症状が生じることもあります。月2回、基本的には予約制で、1人の外来患者さんに30分程時間をかけて診察しています。
患者さんのいうことを丁寧に聞くことができ、深くて良い診察ができていると聞いています。例えば尿漏れなどで「泌尿器科には行きにくかったけれど女性専門の外来だから来ることができた」ということがあったようで、作った甲斐があったなと思いますね。
―今後目指す病院像は。
1番は患者さんのため、そして、職員のためにも良い病院でなければと思います。職員が疲弊しているようでは、患者さんに良い医療を提供できませんからね。
自治体病院ですので、地域に根差した病院であることを心がけています。重大な病気の場合は、高度急性期の病院への紹介も必要だと思いますが、なるべく治療を地域完結できる病院にしたい。患者さんが当院から帰られる時に...もちろん病気だから困ったり悩んだりといろいろなことがあるのだろうと思いますが、それでも出ていく時の顔の方がちょっと明るくなる、笑顔になれる、そんな「まごころ」のある診療を目指しています。
―医療従事者にメッセージを。
当院では総合診療と専門医療をうまく組み合わせた研修ができますので、若い先生にどんどん来て頂きたいですね。私たちも熱意を持って指導します。
また、高知市内の高度急性期病院での治療を終えた方が安心して自宅に帰れるような取り組みを介護との連携を含めやっていますので、ぜひ利用して頂ければと思っています。
昔は介護士や訪問看護師、ケアマネジャーと話をする機会があまりありませんでしたが、今はしっかり連携し、顔の見える関係をつくってきています。お互いにサポートし合い、それが結果的に患者さんのためになっていると思っています。