特定医療法人 萬生会理事長 河北 誠
萬生会のサンセリテ月出は3月で開設1年目を迎えた。本部機能の所在地というだけでなく、在宅療養支援診療所併設のサービス付き高齢者向け住宅と、訪問看護ステーションを備えた施設、というのが、在宅医療に力を入れる萬生会らしい。熊本市南区の熊本第一病院、合志市の合志第一病院の2か所を中心に、訪問看護ステーションやデイケア、デイサービスといった、グループ内の施設が展開されている。サンセリテは「まごころ、誠実」という意味のフランス語、月出は所在地の町名。
―ほかにもサービス付き高齢者向け住宅(=サ高住)はありますか。
ここが初めてです。4階建てで、2階が本部機能や管理部門と、訪問看護ステーション、在宅療養支援診療所。3、4階が居住区となります。
我々の2つ病院はケアミックス型ですが、最終的には社会復帰をさせるべきです。しかし独居老人など、なかなかご自宅では難しい方もおられますので、病院とは違う形態の施設が必要だと考えていました。そういう方の亜急性期から、最終的には看取りまで面倒をみようということで作った施設です。
現在ここは36室が満室で、少し待機者が出ているくらいです。大きな利益はありませんが、1年経って順調です。
―明治18年創業ということですが。
浦本萬生氏が、魚屋町(熊本市中央区)で浦本医院を開いたのが始まりです。その後昭和30年に法人化しました。
私と浦本氏の家系に血縁はありませんが、私の二つ前の理事長である佐分利正先生は浦本家の一族でした。佐分利先生の奥様が理事長を継がれる時、特別医療法人にしたんです。そのころに手伝ってほしいと言われて萬生会に来ました。そして、今理事長をしています。
あんまりしたくはなかったんですけどね。
―どうしてでしょうか。
持分ゼロで、私の財産じゃないんですよ(笑)。しかし借金の連帯保証人にはならなきゃなりませんからね。銀行も個人資産を担保に取ることまではしませんが、あんまりいい加減な運営をしていると、被ってきますよ。
だいぶ鍛えられましたが、理事長としてよりも医者という気持ちの方が強いですね。まだ現役で外来を診ています。
―専門は血液内科学で、熊本第一病院はその分野に強いとか。
無菌室を2床持っています。血液内科医は私を含めて4名です。
院長は糖尿病代謝内科で、この専門医が今2名。ほかには呼吸器、消化器を中心に診ています。病床数は125です。
あまりおいしいサイズの病院ではありませんから、ある程度特化した病院であるべきだろうと考えています。状況を見据えて、いろんなところに杖つきながら運営していますよ。合志第一病院も126床ですから、同様に難しいですね。
―合志第一病院の特徴は。
熊本県下では2番目にできたホスピス病棟16床を持ち、緩和ケアに力を入れています。一昨年に改修しまして、今は木目調の病棟です。「病院にいる」という意識を和らげて、少しでも自宅に近い感じを出したかったんです。
どちらの病院も24時間オンコール体制で、ご自宅での看取りにも対応します。平成24年度は法人全体で28人の在宅看取りを行ないました。「病院で死にたい」という方も多くいらっしゃいますから、そちらにももちろん対応しています。
―ピアノが理事長室にあるとは思いませんでした。
今は、ショパンのノクターンを練習しています。最近忙しくて、毎日は弾いていません。本当は毎日練習すべきなんでしょうが、なかなかそうは。小さいころはバイオリンをやっていましたが、中学生のころピアノを始めました。大学に入学してやめていたのですが、50ごろまた始めました。指先は使った方がいいですね。
熊本第一病院のロビーで秋とクリスマスの年2回、野上哲史院長と2人で院内コンサートを開いています。野上院長はチェロが弾けるんですよ。もう1人、ピアノのうまいい薬剤師もいます。患者さんが喜んでくれるのがうれしいですね。