西日本旅客鉄道株式会社広島支社 広島鉄道病院 病院長 小野 栄治
1967 修道高校卒 1974 広島大学卒 広島大学医学部第二外科入局。以後 河石病院、県立広島病院、松山赤十字病院、国立大竹病院に勤務。1985 ハノーバー医科大学腹部移植外科留学(2年2ヶ月) 2005 広島鉄道病院副院長2011 同院長
広島鉄道病院は、広島駅の新幹線口側、西日本旅客鉄道広島支社の隣に位置する。財務省中国財務局、広島県、広島市、西日本旅客鉄道で構成する協議会が計画した事業計画により、再開発が急ピッチで進められている地域だ。病院西側の向かいには、広島県が作る高精度放射線治療センター(仮称)および広島県医師会の地域医療総合支援センター(仮称)が合築される予定。
病院が一般開放されたころ院長は、広島大学で腎移植の研究をしていた。病院には外科スタッフとして医局の先輩が勤務しており、当時は関連病院のひとつとして知る程度だったらしい。野球が好きで、少年期は西鉄ライオンズの投手、稲尾和久のファン。次第にカープファンになっていったという。学生時代は医学部の準硬式野球部。院内に野球部の後輩は現在2人。1人は外科、もう1人は泌尿器科の研修生。院長は院内のソフトボールチームに入っているが、出番は少ないらしい。
―ここは国鉄が作った建物ですね。
当院の歴史について触れさせていただきますが、大正9年に当時の鉄道省の医療施設として広島駅構内に連なる場所に広島鉄道治療所という名称で設置されたことに始まります。その後、昭和15年に病院に昇格し入院設備が整備され、昭和19年に現在の広島駅のすぐ南側の松原町に作られた新病院に移転しました。
しかし翌年8月6日の原爆のために全壊してしまいましたので、二葉の里地区で仮設の病院を立ち上げ、徐々に整備しながら診療を続けました。
その後昭和38年、現在地に現病院が作られ今年でちょうど50年を迎えます。
当時としては最新の機器を整備した鉄筋コンクリート構造の病院として注目されましたが、長年の経過を経て、今では老朽化による影響は避けられず、構造的にも時代のニーズに十分には対応しきれていないところも徐々に目立ち始めました。このため、新病院を整備することが大きな懸案となり、JR西日本の社内でも色々な検討がなされた結果、平成24年度末に建設計画の意思決定がなされ、現在準備が進められているところです。
JRの医療機関については、国鉄分割民営化が計画された当時、全国に様々に設置されていた医療機関をJR各社ごとに一つの病院にまとめることを前提とした統廃合計画が進められました。それを受けて関連の多くの医療施設が廃止されましたが、JR東日本とJR西日本については、それぞれ二つの病院を残すことが認められ、当院については昭和57年に一般開放された後の実績が評価され、大阪鉄道病院とともに存続することが決定されました。当時の職員の方々の努力が評価されたのだと思います。地域医療の提供を地道に継続していたことで、地域からの信頼と支持が得られていたことが、大きな力になったことは間違いありません。
―そして、新病院を作る計画ですね。
新病院の場所は、今の病院の東側になります。今は乗務員宿泊所や女性職員の寮、労働組合の事務所がある一角を壊して建てます。病床数は292床から275床と、少しコンパクトになりますが、その分、より充実した医療を提供できるようになる予定です。病棟の数は変わりませんが、一般病棟の数は現在の7から6になります。
―新しい病院になると、どんなところが変わるのでしょうか。
特に、癌に対する機能を強化する予定です。
充実のための一つとして、新たに緩和ケア病棟を作ります。人生の幕を閉じる時に過酷な思いをする人を、我々は多く見ていますから、これは是非に作りたい。現在も当院の緩和ケアチームは頑張っていますが、今は環境が整っていないし、他院に紹介することもあります。しかしまだ県内には少ないので、入れるとも限らないし、なるべく当院で看てあげたい。
また、化学療法室を独立させ、10ベットに拡充させます。手術室は4室と数は増やしませんが、将来的に増やす余地を残した設計です。診療機器の拡充とともに、関係スタッフの研修、研鑽の努力を重ね質の高い癌診療の提供ができる体制を整えたいと考えています。
向かいにできる放射線治療施設とはしっかりとした連携を進めるつもりです。病院が東側に移動する分、少し距離ができますから、患者さんのトランスポートに関しては考えなければなりませんね。当院の放射線科の医師は今3人いますが、画像診断部門を充実させる要員で、放射線治療は行いません。だから向かいに高度な施設ができるのは、ありがたい話なんです。現病院が建てられた当時には、放射線治療施設もありましが、かなり以前に廃止となり撤去されています。
―癌以外で強化する部門はありますか。
他は、検診部門を強化します。現在行っているJR西日本の社員や関連会社の社員の職員検診だけでなく、ドック検診も充実させ、一般の方々の利用も促進し、当院のアクセスの良さを生かして行くことも目標の一つです。JR東海の名古屋セントラル病院では新病院を建てて以降、人間ドックで1日40人くらいを診ていますから、当院でも30〜40人くらいを診れるようにしたいですね。
そのほか、柱となる消化器科、外科、整形外科、呼吸器内科の強化は当然重要なところですが、それに加え少人数のスタッフで頑張っている循環器内科の強化として、シネアンギオや、CTをグレードの高いものに更新します。それにより得られる精度の高い画像を基にした検査、治療ができる環境を整えたいと考えています。特に高機能のCTはカテーテルを用いた検査に近い3D画像が得られ、心臓の血管の異常を大まかにとらえることができるので、患者さんの負担を少しでも軽減できることにも期待しています。
また、地域連携のためのシステム構築は必要です。病院が新しくなる機会に強化しようと考えています。画像診断部門は診断体制や機器の整備も行いますので、連携の中で利用していただくような仕組みを作っていきたいですね。
高精度放射線治療センター(仮称)
広島県が整備する放射線治療施設。広島市東区(広島鉄道病院の前)に、広島県医師会が整備する地域医療総合支援センター(仮称)との合築により作られ、鉄骨鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造、鉄筋コンクリート造)。延べ床面積は4千㎡ほどになる。予定では、平成27年7月に工事を完了し、同年度中から運営をはじめる。
広島県医師会を指定管理者とする公設民営方式で、放射線治療専門医や専門技師などの集約により、各種癌に対する放射線治療の実施件数を増加させる。
広島大学病院、県立広島病院、広島市立広島市民病院、広島赤十字・原爆病院の4病院が協力し、強度変調放射線治療などの高精度放射線治療を外来診療で行なう。無床で入院施設はない。紹介元医療機関で検査・診断が実施されている患者を受け入れ、患者の経過観察は紹介元医療機関で行なう。また、県内医療従事者や臨床研修を受入れ、人材育成を図る。
開設当初は高精度リニアック装置3台を置く予定だが、5台まで設置できる構造。
開設時の人員体制は、放射線治療専門医の常勤3名(別に専門医を前述4病院から派遣)、医学物理士3名、診療放射線技師8名、看護師5名、事務等2名を予定している。