明日に向かう15病院の実践
この本は月刊『中央公論』に連載された「21世紀の精神科医療」を1冊にまとめたものである。
日本各地の15の精神科病院が紹介され、「精神科病院とは何か」を知ることができる。鮫島病院も6番目に出てくる。
帯に書かれた日本医師会会長(第17代)唐澤祥人氏の「これまであまり知られていなかった精神科医療の現場を伝える貴重なレポート」という言葉が、この本の内容を端的に語っている。
もっとも本書は病院の紹介だけではなく、5人の精神科医が一堂に会した座談会が大きな魅力となっている。医師たちが何を思って治療しているかがうかがい知れるだけでなく、精神科病院の歴史や医療制度の実態、それに対する医師らの意見や要望がわかる。特に病院経営の話は興味深い。
一般企業では近年、精神保健の分野が大きく注目されている。精神科病院の役割や重要性を知ることの意味は、誰にとっても大きいだろう。
平易な言葉で手軽に読めるこの本は、タイトルどおり「患者のための」本だが、精神科の患者のためだけとするには少々もったいない。