3月8日は世界腎臓デー 尿検査と血圧チェックで健康管理を

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成人の8人に1人が慢性腎臓病(CKD)

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斉藤喬雄(さいとうたかお)
福岡大学医学部教授、福岡大学病院腎臓・膠原病内科、血液浄化療法センター部長
■東北大学医学部卒業後、オーストラリアのモナッシュ大学で腎免疫学を研究。東北大医学部助教授などを経て2000年福岡大学医学部主任教授、福岡大学病院副院長などを経験、現在に至る。歴史探訪が趣味。

腎臓が悪いというと透析のことばかり考えがちですが、われわれがなぜ慢性腎臓病(CKD)を重視するかというと、腎臓が悪いと血管障害を起こしやすいからです。

一般には知られていないようですが、腎臓は血管の一部です。尿を作るだけのように思われますが、腎機能の60㌫を健康ラインだとすると、成人の8人に1人、1千万人以上がCKDだということになり、50㌫まで下げても500万人くらいになります。そしていま透析を受けている人は30万人。この数字を少ないと見るのではなくて、透析にいたるまでに血管障害、広い意味の心不全で亡くなっている人が多いということなんです。

腎臓が悪くなると、誰でもと言っていいほど高血圧になり、それから、動脈硬化が起きます。その結果として最終的には心筋梗塞などの心不全になります。普通思われているような、突然心臓の血管が詰まって瞬間的に死ぬのではなく、長い間に心臓の血管が硬化していくケースがむしろ多く、それを含めて「心血管疾患」と私たちは呼んでいます。いま話題になっているメタボリックシンドロームなどがCKDと重要な関係にあります。

自覚症状がないまま死亡してしまう怖さ

昔の一般的な腎臓の病気は慢性腎炎でしたが、これはある程度治療のメドが立ったし、予防的な措置もあって相対的には減ってきています。

腎臓の病気で問題なのは「自覚症状がない」ということですね。末期的になっても腎臓そのものの症状が起きるわけではなく、最終的におかしくなるのは心臓であり、脳であり、肺に水がたまって呼吸ができなくなる。

このような障害は、腎臓機能がゼロにならなくても強く出て亡くなってしまうことが多く、私たちはそれがおそろしくてCKDのキャンペーンをしているんです。

こういった動きは2002年くらいから米国を中心に、腎臓と他の臓器との関連を取り上げる必要があるとのはたらきかけがあり、日本では2006年に「日本慢性腎臓病対策協議会」が設立され、2008年に私が総会長となった第51回日本腎臓学会学術総会のころから成果がでてきました。

少ない腎臓専門医

腎臓学会の会員はいま9千人くらいですが、専門医は3千500人くらいです。ところがCKDの人は1千万人くらいいるわけですから、とても対処できない。だから一般の医師にも働きかけていこうという動きになっています。

福岡でもようやく県や市が医師会と一体となって、住民健診にCKDの検査をどう取り込むかを協議しています。

尿蛋白とクレアチニン

健診の基準には大きく2つあって、1つは蛋白尿が出ていないか、これは腎臓病の初期をとらえるには重要です。2つ目は腎臓の実際の働きを知るために、クレアチニンという老廃物が血液にどれくらい溜まるかを調べます。多少クレアチニンが増加しても、ほとんど患者さんに自覚症状がありません。まずそれを調べて腎機能の低下を知るのがCKDの検査で、これに高血圧や糖尿病があれば重要な問題です。

忘れられがちな腎臓

一般の方は、心臓や肝臓や肺機能のことは気になっても、腎臓にはあまり関心がありません。医師でも心臓や血管異常を診ても腎臓病を疑わない人が少なくありません。私たちがCKD対策協議会でやろうとしているのは、腎臓病への認識を高め、一般に広げていこうということなんです。しかし行政にも加わってもらうにしても、保健所の対応が腎臓中心というわけじゃないので、なかなか難しいところです。

定期的な検査の必要性

2008年から始まった、40歳以上が対象の特定健診で尿蛋白の値を知ることは最低限必要です。気になる方はかかりつけ医でクレアチニンも調べてもらえばいいでしょう。そうしたことに注意を払わずに健康食品に関心を寄せたり、塩分ゼロ、糖分ゼロの食生活を行なっても良い結果は出ません。

かかりつけ医の検査で問題が見つかれば、専門医が対応することを検討していますが、今は、自覚症状がない個々の人に関心を持ってもらうことが大切だと考えています。

血圧を測る大切さ

私たちが重要視しているのは血圧を測るということです。今は家庭でも正確に測れます。朝は低くて昼には上がり、夜にまた下がるのが正常な変化ですが、腎臓が悪くなるとしばしばこれが逆転します。

私が指導しているのは、朝と、夜お風呂に入る前に測って日々ノートに記帳すること。それで100㌫とは言いませんが、これを日課としてできる人とできない人とでは病気への対応が違ってきます。腎臓医は、時には循環器医以上に血圧を重視している面があり、外来の患者さんにこのように血圧を管理してもらうことがよくあります。

動物は栄養が足りない環境で進化してきましたが、裕福な世の中になって摂取が過剰になり、人体の仕組みがマイナスに作用するようになってきました。メタボも高血圧も、そのジレンマの産物です。

腎臓病の薬は色々ありますが、CKD関係で最も重要なのは降圧薬です。「腎保護薬」という腎臓にいい高血圧の薬が出てきました。しかし、それを使うにしても血圧の管理が重要で、その変化を見ながら降圧薬を使うのがCKD治療の主要な部分です。

日常生活の中で自分の血圧を知っておくことはCKDの予防だけでなく、健康管理という点からもとても大切なことです。


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