劇的に治るのが循環器の魅力

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長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学 教授
長崎大学病院循環器内科 科長 前村 浩二

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【Profile】
前村浩二( まえむら・こうじ)
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 循環病態制御内科学教授 医学博士、総合内科専門医・指導医、循環器専門医、高血圧専門医、脈管専門医
1986年 東京大学医学部医学科卒業/1996年 同第三内科助手/1996年 米国ハーバード大学留学/2001年 東京大学医学部附属病院循環器内科助手/2005年 東京大学医学部附属病院特任講師/2008年 長崎大学大学院循環病態制御内科学教授/2009年-2011 年 長崎大学病院副病院長(兼任)
【研究テーマ】循環器内科学, 特に動脈硬化, 血管生物学 循環器領域の時間生物学

安政4年11月12日。長崎奉行所西役所で、のちの初代陸軍軍医総監松本良順は弟子たちと、オランダ軍医ヨハネス・レイディウス・カタリヌス・ポンペ・ファン・メールデルフォールトから医学を学び始める。この日が長崎大学医学部の創立の日とされ、ポンペの医戒が長崎大学医学部の校是となった。今回は日本の近代医学が発祥した地で、ポンペのように若い医師を育てる前村教授に話をうかがった。出身は鹿児島で東大出。長崎には4年半前に来たばかりなのだという。

―どんな活動をされていますか。

高血圧協会では長崎の世話人をやっています。

140・90で切ると、高血圧は全国に4千万人いるのですが、サイレントキラーというように、なかなか気付けない病気です。なので、市民に啓蒙活動をやっています。市民公開講座をどんどん打ってやろうと考えていますよ。

―専門は高血圧ですか。

高血圧も専門の一つです。大学によって違いますが、循環器内科、腎臓内科、内分泌内科などが高血圧を一つとして診ています。

私の専門は血管なので、高血圧のほかにも動脈硬による疾患も診ています。心筋梗塞や脳卒中、末梢動脈疾患などです。昔は閉塞性の動脈硬化症などと言っていましたが、今はまとめて末梢動脈疾患と呼んでいます。

我々が一番多く診療しているのは冠動脈疾患で、狭心症の症状が出たらステントで広げる、バルーンで広げる、あるいは外科にバイパスを作ってもらうということをやっています。その前の予備群を見つけ出してコレステロールを下げるとか、糖尿病高血圧の治療だとか、禁煙を奨めたりと生活改善を促すとか、そういう予防医学が病人を出さないためには大事ですね。

―食事には気をつけていますか。

ある程度は(笑)。定期的に血液検査をやって、コレステロールが上がってきたら、コレステロールを上げるような食事をちょっと控えたりね。

―循環器内科の魅力は。

自分の素早い判断で、患者さんを劇的に回復させられることです。かなり医者の技量によるところが大きい科だと思います。だから修練を積むと、重症患者を治すことができるようになる。ぐったりしていた人がよろこんで帰るさまを見れるうれしさがありますね。その差を見た時にやりがいがあるなと、専門に選びました。

―なぜ医者を志したのですか。

家業が医者だったわけではないので、子供のころから医者になると決めていたわけではなかったんです。文系よりも理系の勉強が好きだったので、理系の大学に行くことにはなるんだけど、せっかく行くならば人によろこばれる仕事を選びたかった。それで何が一番良いかと考えた時、医学部を選んでいました。

当時は卒業と同時に専門の科を決めるの大学も多かったのですが、私の場合は内科全般を2年やってから循環器を専門にすることを決めました。

―内科全般に通じるのは良いことですか。

良いことだと思います。

地方に行くと「私は循環器だけしか診ません」なんていう医者は外で使いものになりません。

昨今「総合診療医」と持てはやしますが、広いだけで浅い知識を持つ医者を指す言葉ではないと考えています。今は全科に深く通じるというのは無理な時代ですが、ある程度高いレベルで全てを診れる医者は、専門性が低くても有能であると考えています。「研修医のレベルで」ということであれば誰にでもできることなんですが、そうではないので教育は難しいですね。

また僕は「循環器に関しては抜きん出た知識を持つ医者」を育てることが仕事ですから、「総合診療医」を目的としては育てません。全体を底上げして、その中で循環器を高いレベルで診れるという人を育てることが大事だと思います。大学を出るみんなが、どこに行っても初期治療は全部診れるように教育をしたいですね。

専門医と呼ばれる側を見ても、それぞれが他科の知識をなるべく高い水準で持っておくということが、都市部を除けば日本全体で求められています。「専門でないことは専門家にコンサルする」という環境があることは大事ですが、自分の専門以外のことを最初から診ることをやめていては、臨床の医師としてはあまり優れているとは評価しづらい。もちろん高い専門性を軽視するわけではないのですが、特に長崎県の状況を見ると、やはり全体を診れる医者の重要性を感じます。

―教育する上で気を配っていることは何ですか。

以前、データだけ見てサマリーを提出する学生がいました。「患者は診察したの?」と訊くと、一回も診ていないと答える。僕はそれじゃいけないと思って、以後は診察するように指導しました。患者さんと話すってことは大事なことなんですよね。たとえ無駄話でもいい。話すと患者さんは安心してくれて、治療にも良いことです。医師のスキルの中には、短い時間で患者さんから必要な情報を聞き出すというものもあり、雑談はそれに反することですけれど、それでもコミュニケーションの練習にはなります。患者さんと話せるようになるのが、医師として最初におぼえるべきことだと考えています。患者さんと接せず、データだけ見るという医者にはなって欲しくはありませんね。

また、大学病院にいると、高い専門性を持った専門家が揃っていますから、全部コンサルで済んでしまいます。「貧血だから血液内科にコンサルしました」「便潜血があるから消化器内科にコンサルしました」と、他科に頼ってしまいます。速くコンサルしなきゃならないことも一杯ありますから、むやみに引き伸ばしちゃいけませんが、まずは自分で診て、自分で考えて、その上で相談する。そんな医師になって欲しいと思っています。

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【記者の目】

ポンペの言葉として知られる長崎大学医学部の校是を紹介しておきたい。

医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬのなら、他の職業を選ぶがよい。

前村教授自身は長崎の出身ではなく、大学内ではよく知られるポンペは一通りしか知らないという話だったが、教授が育てようとしている医師もまた、そういう医者であるように感じた。


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