独立行政法人 国立病院機構 熊本医療センター 富田 正郎 腎臓内科部長

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CKDの治療は患者ごとに、あるいは季節ごとでも異なる

1986 熊本大学医学部卒 同第三内科(現腎臓内科)入局1987 八代総合病院 1992 三井大牟田病院 済生会熊本病院 1996 荒尾市民病院 2001 国立熊本病院(現国立病院機構熊本医療センター) 2002 同腎臓内科医長 2014 同腎臓内科部長 ■学会資格など:日本内科学会総合内科専門医・指導医 日本腎臓学会腎臓専門医・指導医 日本透析医学会透析専門医・指導医 日本救急医学会専門医 日本糖尿病学会専門医 熊本大学医学部臨床教授 熊本市CKD 対策病診連携会議プロジェクトチーム講師 日本高血圧学会指導医 プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医 医学博士

 WHOが食塩摂取目標を1日5gとしている。日本では厚生労働省が目標量を男性8g未満、女性7g未満(ともに18歳以上)と定めている。市民感覚からみれば、「多く取っても汗をかけばいいのでは」との疑問が浮かぶ。そのことをまず聞いた。食生活の改善についても尋ねた。

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 確かに汗をかいて塩分を体外に排出するのは非常に有効な手段です。

 夏は冬よりも血圧が低い方が多いのですが、これは発汗によって体の塩分が減ることがその理由の一つです。

 血圧を下げるためには摂取塩分の量を減らすことが一番です。運動などで汗をかいて体から塩分を出すことは2番目に重要です。かつてその目的で「健康サウナ」が流行したことがありました。そして3番目に「降圧利尿薬」(塩分を尿に排出することで血圧を下げる薬)などの薬物治療が挙がります。

 病院では1番目、2番目の選択肢を飛ばして、いきなり薬を出される場合が多い。これは、昔の研究で食事療法や運動療法をしても血圧が下がる人は10%にしか過ぎないから最初から薬を使うべきだ、とされたからです。しかし私は同意しません。当時は高血圧には自覚症状がないため十分な動機付けがされなかったからです。最近はCKD(慢性腎臓病)対策による啓蒙(けいもう)から「透析にだけはなりたくない」という強い動機付けにより、塩分制限を厳格に実践される患者さんが多く、降圧薬が減量となる、あるいは不要となるケースも見かけます。

 しかし塩分制限にも落とし穴があります。CKDの患者さん(特に高齢者)では、塩分を保持する腎臓の働きも障害され、塩分欠乏(=脱水症・低血圧症)になって逆に腎障害を悪化させる場合があるのです。また、高齢者の方は味覚の鈍化もあり塩分制限により食欲が落ち、栄養障害やうつ病に陥る副作用も起こり得ます。

 運動もし過ぎると体を壊しますよね。「健康サウナ」もともすれば脱水になって腎機能を悪化させてしまいます。適正量の調整が難しいため、一般的にサウナや温泉施設には「腎臓病の人は入浴を避けるか、主治医に相談して下さい」などの制限文言が書かれています。
実は病院の薬も同様で、過量な降圧剤は腎臓を悪くします。何事も「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」です。

 4gとか3gなどの強力な塩分制限をされている方が夏場で汗をかき、降圧薬も内服し続けた結果、過度の低血圧・急性腎不全・熱中症・脱水症となり救急車で緊急搬送されて来ます。夏場は塩分制限を弱めたり降圧薬を減らすことも重要です。

 「CKD」というのは、原因の異なるさまざまな腎臓の病気をすべて一律に同じ病気として捉えようとした試みですが、そもそも原因がそれぞれ全く異なるため治療方法も千差万別になります。塩分制限ひとつをとってもその方の病状次第で異なるのです。

食事が一番、運動が二番、お薬は三番手のCKD もある!

 「CKD」の中で透析になる患者さんが一番多いのは2型糖尿病です。ですからCKDの最大の予防は2型糖尿病にならないことです。2型糖尿病は「食べ過ぎ」が原因ですので、過食を避けることが一番の治療です。運動も重要ですが、その分油断して食べ過ぎてしまうとほとんど効果が出ません。最近では尿中に糖を排出させる薬が発明されています。ちょうど高血圧の患者さんに降圧利尿薬を飲んでいただいて塩分を排泄させるのと同じ理屈です。しかしながら、今まで述べてきたように、食事が一番、運動が二番であり、お薬は三番手です。「薬を飲んでいるから大丈夫」と油断してさらに食べ過ぎるようなことになれば、薬の効果を打ち消すどころか、むしろ害にさえなります。

 重症のアル中の患者さんに、「薬を飲んでいればお酒はいくら飲んでも構いません!」という医者はいないと思いますが、食事制限をまったくしない2型糖尿病の患者さんに「薬で採血結果が良いから大丈夫ですよ」とか、メタボや境界型DMの患者さんに「今はまだ大丈夫ですよ」などと指導される場合があります。過体重の人が透析になりたくなければ食事制限が一番です。

 たばこ、アルコール、あるいは覚せい剤中毒を断つことのほうが食事制限よりもある意味では簡単かもしれません。なぜなら完全に遠ざけて、ゼロにすることができるから。『制限し過ぎる』ことがないからです。ところが塩分制限やカロリー制限になると、し過ぎると栄養障害や脱水となり明らかに寿命が縮まります。多くても少なくてもいけません。完全に遠ざけることはできないためリバウンドも起こりやすい。けれども、それを頑張り続けることが一番大事です。

国立病院機構 熊本医療センター熊本市中央区二の丸1-5
TEL:096-353-6501


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