九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

「できることは何でも」 地域医療を守る経営努力

岩手県立磐井病院加藤 博孝 院長(かとう・ひろたか)1980年東北大学医学部卒業。仙台市立病院外科医長、いわて感染制御支援チーム統括、岩手県立磐井病院副院長などを経て、2012年から現職。東北大学臨床教授、岩手医科大学臨床教授兼任。  岩手県立磐井病院がある両磐地区は、この10年で人口が約2万人減少。高齢化による疾病構造の変化に対し、同院は「DPCデータの解析」と「戦略的目標の共有」を柱に経営を強化。その成果が評価され、2017年度に「自治体立優良病院総務大臣表彰」を受けた。 ―病院の状況は。  岩手県には九つの2次医療圏があり、そこに県立病院20カ所と県立病院附属の地域診療センター6カ所が配置されています。人口の減少や高齢化、医師不足など、どこも厳しい経営環境にあり、特に交通の便が悪く、人口の少ないところは深刻です。「都市部の収益を頼りに、県全体で何とか頑張っている」というのが、県立病院の現状です。 当院の圏域は県南の両磐地区で、人口は約12万人。この10年間で2万人ほども減少しました。高齢化も進み、骨折や肺炎、複数の健康問題を抱える患者さんが多くなっています。 当院の理念である「地域の皆様に納得のできる医療を提供します」を実現させるためには、こうした変化に対応していかなければなりません。 ―特徴について。  救急車搬送の多さが挙げられます。年間3000台近くあり、ここから岩手県高度救命救急センターまで1時間以上かかるため、ある程度の重症にも対応しています。小児科を中心に、夜間にウォークインで来院する患者さんも多く、救急体制は見直しを考えているところです。 近隣でお産のできる施設が減り、分娩が年間約700件と集中していることも特徴です。少ない人員で頑張っていたところ、2019年に、国連児童基金(ユニセフ)と世界保健機関(WHO)が認定し、国内審査を日本母乳の会が行う「赤ちゃんにやさしい病院」に認められたことは、大きな励みになっています。 当院が母乳育児に力を入れるようになったきっかけは、東日本大震災です。大変な状況下でも元気に退院していく母子の姿に、改めて母乳のすばらしさを感じ取ったスタッフが、情熱をもって推進活動をしてくれました。 ―「自治体立優良病院総務大臣表彰」の要因は。  経営への貢献度が高かったのは、2009年導入の「DPC」です。医療情報の一元管理とデータの把握・評価が容易になりました。毎月、院長、副院長、各部門の長で構成する経営部会で、経営に関する詳細なデータと収支状況を共有し、ベンチマークとの比較や機能評価係数Ⅱを上げる検討を重ねています。 病院全体で経営目標を共有するのに役立ったのは、「バランスト・スコアカード(BSC)」です。BSCの多角的視点から各部門の目標を設定することで、患者さんの満足度や職員のニーズといった多様な要素を盛り込んだ「戦略的事業計画」を立てています。実績評価も分かりやすくなりました。 他にも、クリニカルパスの研究、教育に熱心なスタッフの取り組みや、各病棟の職種間の指示を速やかに伝える連絡体制など、さまざまな要因があります。電子カルテの使い勝手を向上させるシステムは、自ら開発もしました。根底にあるのは「地域医療を守るため、できることは何でもする」という思いです。 ─今後の課題は。  働き方改革です。クラークの増員で医師の時間外勤務が月8時間程度削減できることが分かり、さらなる増員を考えています。併せて、常勤医だけで救急外来を維持する体制も、早急に考えなければなりません。医師の頑張りが評価される人事考課制度についても検討しています。 認定看護師の待遇改善も課題です。半年かけて勉強して資格を取っても、インセンティブが与えられなかったり、キャリアアップなどで認定業務から外れたりすれば、モチベーションが下がってしまいます。意欲ある若い人が「私もなりたい」と後に続くような仕組みが必要です。 岩手県立磐井病院岩手県一関市狐禅寺大平17☎0191─23─3452(代表)http://www.iwai-hp.com/

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「共同」を意識して地域連携を推進する

公益財団法人 宮城厚生協会坂総合病院内藤 孝 院長(ないとう・たかし)1985年東北大学医学部卒業。財団法人宮城厚生協会坂総合病院(現:公益財団法人宮城厚生協会坂総合病院)副院長、同協会泉病院院長などを経て、2014年から現職。  前身である私立塩釜病院が開設されて以降、約100年にわたって塩釜地域の救急・急性期医療を担ってきた坂総合病院。2014年に院長となった内藤孝氏は、これまでの病院の歴史を重んじながら時代に沿った理念を掲げ、強固な地域医療連携を目指している。 ―2019年3月に病院の理念を改訂されましたね。  以前の理念は、時間の経過と共に院内で埋もれてしまっている印象がありました。そのため、改めて時代に適した分かりやすい指針を掲げたのです。 新たな理念は「わたしたちは確かな医療と共同で地域の安心を支えます」。当院はこれまで主に地域の救急・急性期医療を担ってきました。今後もその役割を果たすには、地域の行政、医療機関、住民の皆さんとの「共同」が欠かせません。それぞれの結びつきを大切にしながら、力を合わせて地域完結型の医療を実践したいと考えています。 また、理念の改訂と同時に、病院内外から意見を募って三つのビジョンを決定しました。まずは「断らない病院」、次に「人に寄り添う病院」、そして「職員が活(い)き活きと働く病院」です。当院では入院患者さんから差額ベッド代をいただかず、無料低額診療も実施してきました。今後も困難を抱えた患者さんを見守り、同時に良い職場づくりも意識したいと思います。 ―地域との連携についてお聞かせください。  当院は2007年に地域医療支援病院に指定されて以降、かかりつけ医との関係を大切にしてきました。2015年にはよりスムーズな連携を構築するため、「地域医療連携センター」を設置。ここでは患者さんの紹介、入退院支援などを地域の医療機関と協力しながら進めています。現在、塩釜地域にある開業医の約9割に登録医としてご協力いただいています。 地域住民とのつながりとしては、当院が中心となって結成した「みやぎ東部健康福祉友の会」が大きな役割を担っています。健康講座や血圧測定会などを定期的に開催することで、地域医療の向上を図るほか、当院の職員が地域の皆さんとふれあう場としても貴重な機会になっています。 ―臨床研修病院として医師の育成にも努めています。  当院は現在の臨床研修制度が始まる以前からスーパーローテート方式を採用し、専門性だけでなく総合的に診療できる医師の育成に取り組んできました。研修医は宮城県や他の東北地方に限らず、九州などからも応募があり、定員11人に対してほぼフルマッチの状況が続いています。 加えて、総合診療医の育成面では「みちのく総合診療医学センター」も挙げられます。ここでは当院と他の病院が連携し、日本プライマリ・ケア連合学会の認定を受けた研修プログラムを実施。総合診療・救急・在宅医療に加え、地域に密着した中小規模病院や診療所での医療が経験できる場を用意しています。少子高齢化や医師不足が進む地方では、総合医の需要が高まっていますので、今後も育成の分野には注力したいと考えています。 ―今後の展望は。  これまで以上に高齢者の疾患、中でもがんに対応できる医療が求められます。当院としては緩和ケアや在宅診療も充実させて、地域に住む高齢者が安心して暮らせる医療体制を整えたいと考えています。 院内に向けては、理念やビジョンを浸透させることが大切だと感じています。特に「職員が活き活きと働く病院」は重要なテーマです。職員同士が互いに認め合い、充実感を得られる環境を整えることは、結果的に患者さんの満足度向上にもつながります。職員が同じ目標を見ながら進むことで、より地域に信頼される病院を目指したいですね。 公益財団法人 宮城厚生協会坂総合病院宮城県塩釜市錦町16─5☎022─365─5175(代表)https://www.m-kousei.com/saka/

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病院統合を実現して理想の地域医療へ

新潟県厚生農業協同組合連合会 小千谷総合病院髙橋 達 病院長(たかはし・とおる)1977年秋田大学医学部卒業。米マウントサイナイ医科大学リサーチフェロー、新潟大学医学部臨床准教授、新潟県厚生連魚沼病院病院長などを経て、2017年から現職。  新潟県小千谷市にある小千谷総合病院は、設立主体が異なる二つの病院を統合して2017年に開院した。2010年に旧魚沼病院の病院長として赴任して以降、多くの難題を乗り越えて統合を実現させた髙橋達氏に、新病院の先進性、地域医療機関との連携、今後の展望などについて話を聞いた。 ―病院統合の経緯について教えてください。  統合以前、人口4万人弱の小千谷市には新潟県厚生連魚沼病院と、公益財団法人小千谷総合病院という二つの中小病院がありました。 両病院は良いライバルとして互いに切磋琢磨(せっさたくま)してきましたが、2004年度に開始された新医師臨床研修制度などの影響を受け、いずれも医師不足が深刻化。同時に施設老朽化の問題もあり、2005年に病院統合案が持ち上がったのです。 しかし、実現までには多くの困難を伴いました。設立主体が異なる病院には、それぞれ独自の歴史や文化がありますし、職員の待遇なども違います。それでも小千谷市の強力なサポートを得ながら関係者の間で協議を重ね、最初の構想から12年を経て、2017年4月に300床の新病院が完成しました。 ―統合後の新病院に対する印象はいかがですか。  当初、両病院から集まった職員たちは業務手順の違いなどにとまどっていましたが、「医療」という共通の理念の下で融和が進んでいます。また、小千谷市だけでなく、周辺地域の患者さんにも身近な存在として認知されてきました。 そして何より、地域における病床数のダウンサイジングや医師の集約など、今後を見据えた病院が無事完成したことは大きな意味を持っています。地域医療構想や病院の統合再編に関する議論が進む昨今、当院はそのモデルケースになり得るでしょう。行政の協力と医療従事者の熱意や努力があれば、設立主体が異なる病院同士でも統合は実現できる。将来を先取りした一例として、多くの関係者に知ってほしいですね。 ―新病院の特徴は。  当院は主に1次・2次医療を担っています。高度急性期医療が必要な患者さんには、近隣の長岡中央綜合病院、長岡赤十字病院、立川綜合病院を紹介。そこで治療を終えた患者さんなどに対して、当院ではリハビリをなどを含めた回復期医療も行っています。 また、小千谷市と魚沼市の医師会から「在宅医療・介護連携支援センター」事業を委託されています。これは在宅医療体制のコーディネート、在宅医療の普及啓発を各医師会や介護施設と協働で行うものです。これらの地域医療連携によって、急性期・回復期・慢性期医療から在宅や介護施設への橋渡しまで、トータルに対応できることは当院の大きな特徴の一つです。 院内の主な設備としては、ロビーに床暖房を設置し、冬場でも来院された人が寒くないように配慮。病棟では個室的多床室を採用して、廊下側のベッド横にも窓を設けています。患者さんからの評判も上々ですね。 ―今後の病院運営について、展望をお聞かせください。  現状、三つの目標を立てています。まずは一般病棟の会計について、出来高払いからDPC方式へ移行すること。これは今年の4月を予定しています。二つ目は医師の確保に向けて基幹型臨床研修指定病院を目指すこと。そして最後は、総合病院としての医療体制をさらに充実させることです。 加えて、私個人としては今後の社会構造の変化に対応するため、高齢者医療をより重視したいと考えています。当院が地域の中心的な存在となり、これまで以上に地域の医療機関などと連携しながら、高齢者の皆さんが地元で生き生きと暮らせるような医療を提供していきたいですね。 新潟県厚生農業協同組合連合会 小千谷総合病院新潟県小千谷市平沢新田111☎0258―81―1600(代表)https://www.ojiya-ghp.jp/

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全人的医療を提供できる呼吸器内科医を育成

産業医科大学医学部 呼吸器内科学矢寺 和博 教授(やてら・かずひろ)1994年産業医科大学医学部卒業。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学留学、産業医科大学呼吸器内科学准教授などを経て、2016年から現職。産業医科大学病院呼吸器内科診療科長、同呼吸器病センター部長兼任。  北九州近郊の中核医療機関として、診療・教育・研究に取り組む産業医科大学。呼吸器内科医が不足する中、良質な呼吸器内科専門医を一人でも多く養成しようと尽力する矢寺和博教授に、教室運営の現状や医師の育成方針について話を聞いた。 ─教室運営の現状は。  3次救急が中心ですので、コモンディジーズよりも高度で集学的治療を必要とする疾患を扱うことが多いです。この1、2年は、専門医制度の変更や働き方改革の影響を受け、教室運営にも変化が表れてきています。  2018年にスタートした新専門医制度では、医師の地域偏在などを解消するために、一部の都道府県・診療科において基本領域ごとの専攻医の採用人数に上限が設けられています。福岡県もその対象になっているため、希望する人数の採用が難しくなってきました。 しかし、呼吸器内科医は依然として不足。北九州市近郊には医師不足の地域があります。医師の偏在を解決しようとするのであれば、県ではなく地域で考えるべきです。このままでは逆に、地域医療の崩壊につながりかねないと懸念しています。 診療範囲は北九州市内のみならず、東は山口県の周南地域、西は遠賀・中間地域までカバーしています。遠方は週1回の訪問で済むように調整したり、逆に患者さんを当病院に送っていただいたり、十分ではありませんが、二重、三重のバックアップ体制を敷いて対応しています。 また、呼吸器疾患の受け入れ窓口を一本化しようと2015年に開設した「呼吸器病センター」が定着してきたことも大きい。事前に患者さんの症状の詳細を把握できるようになり、緊急度を考慮した効率の良い診察が可能になりました。 ─医師の育成は。  北九州市は、高齢の一人暮らしの患者さんが多い地域です。高齢者は一つの病気でバランスが崩れることがよくありますので、身体的な治療に終始せず、患者さんがどこでどのように生活しているのかまで考慮し、全人的医療を提供するよう指導しています。 呼吸器内科医は、呼吸器疾患の病態を評価できる知識が必要です。また、自ら治療するか、他の診療科の専門医にお願いするかの判断も必要になってきます。 さらに、近年注目されている肺がん治療薬の免疫チェックポイント阻害薬は、全身に副作用が出る可能性があり、がんの治療だけを行えばよいという時代ではなくなってきています。これからは内科医として、全人的な対応ができるスキルがより重要になってくるでしょう。 呼吸器内科医である前に一人の内科医であり、内科医である前に一人の医師であることを、若い医師たちにも忘れないでいてほしいと思っています。 一方、呼吸器内科、呼吸器内視鏡、気管支鏡、感染症、アレルギーなど、可能な限り専門医資格を取得するよう指導しています。資格を取得することで、医師としての自信を得られますし、それを維持しようとモチベーションアップにもつながります。 ─今後の展望は。  医師が働きやすく、やりがいを感じる環境を整えていきたいと思います。 女性医師が、出産や育児でキャリアを断絶することなく、安心して働けるように取り組んでいます。また、北九州市内の病院に医局から3〜5人ほど派遣して、診療のサポートを行うことができる環境が、地域医療と医師の働き方の両面で理想的ではないかと考え、実現に向けて構想を練っています。 プロフェッショナルの世界は実力主義です。若い医師には、医師としての実力をしっかりと身に付けて、私を含め、先輩医師たちを超えていってくれることを期待しています。 産業医科大学医学部 呼吸器内科学福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1─1☎093─603─1611(代表)https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/kokyuki/

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地域の中核病院として災害・救急医療を強化

いわき市医療センター福島県いわき市内郷御厩町久世原16 ☎0246―26―3151(代表)http://iwaki-city-medical-center.jp/  1950年の開院以来、いわき医療圏の中核病院として地域の医療を守り続けてきた、いわき市立総合磐城共立病院。2018年12月25日に「いわき市医療センター」と改称し、新たなスタートを切った。そこには災害・救急医療における最新設備がそろっている。 ◎東日本大震災を機に災害に強い病院へ ホスピタルストリートには医療ガスが配管され、災害時の対応が可能に   施設の老朽化や耐震性の問題などにより、新病院の建設計画に着手したのは2010年。順調に計画が進んでいたとき、東日本大震災が発生した。新谷史明いわき市病院事業管理者兼いわき市医療センター院長が当時を回想する。 「建物の被害はほとんどなかったのですが、ほぼすべての入院患者さんを屋外にいったん退避させました。そして、落ち着いた後に戻っていただこうと考えていたところ、多くの人が不安で戻りたくないと訴えたのです。この経験から、誰もが安心して避難できる免震構造で、災害時も病院機能を持続可能な施設が必要だと強く感じました」 その後、再び計画が動き出し、2016年2月、新病院の建設に着工。そして2018年12月に地上13階建て、屋上ヘリポートを備えた「いわき市医療センター」が開院した。 新病院は、免震構造を採用。インフラが遮断された場合でも、72時間以上の医療活動が可能となる自家発電や貯水槽などを完備。講堂やホスピタルストリートに医療ガスの配管を設置。駐車場の一部には簡易トイレ用のマンホールが用意されている。 また、エネルギーの供給設備を一括して運転・管理する会社と契約することで、エネルギーの安定供給と省エネ・省コストを実現した。 ◎スムーズな動線と横断的な総合医局制度  新病院のフロア構造を考える際、新谷院長がこだわったのは「動線」だ。以前の施設は増築を重ねた影響により、使い勝手があまり良くなかったという。 その教訓を踏まえ、新病院には全体で計17基のエレベーターを配置。医師やスタッフがどこにでもスムーズに移動できる構造となった。加えて、診療科の医局についても、新谷院長の考えが取り入れられている。 「以前は各科の医局が離れた場所にあり、こちらの動線も気になっていました。診療の相談にも煩雑な手続きが必要で、各診療科の医師のいわゆる横のつながりが希薄だったのです。そのため、全ての医師が一堂に会して顔を合わせるように『総合医局制度』を導入。プライバシーに配慮しつつ、コミュニケーションの場となる共有部分を多く取り入れています」 ◎「慈心妙手」を掲げ患者さん中心の病院に  いわき市医療センターでは、基本理念として「慈心妙手(じしんみょうしゅ)」を掲げている。 「相手を思いやる気持ちで患者さんに接し、優れた医療技術で診療・治療を行う」という意味だ。この理念は新病院の設備にも反映されている。「カフェを併設したラウンジ、コンビニエンスストアを設けるなど、患者さんのアメニティーに配慮しました」 また、利便性向上の一つとして「患者サポートセンター」を新設。「ここでは入退院支援、地域医療機関との連携、医療福祉相談などを一括で行っています。最新の医療機器を含め、これまで以上に患者さんに思いやりのある機能がそろったと思います」 新谷史明 いわき市病院事業管理者兼いわき市医療センター院長  少子高齢化や医師不足など、地方の医療機関が抱える課題は多い。地域医療構想に基づいた医療機能の役割が求められる中で、新谷院長はどのような未来を見据えているのだろうか。 「高度医療や災害・救急医療を推進しつつ、地域医療支援病院として各医療機関との協力体制をより強固にしたいと考えています。もちろん、地域の皆さんとのつながりも大切です。市民向けの健康講座などを通して、今後も地域の健康を守り続けます」

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緩和ケア病棟を中軸にして見据えるのはAクラス

新潟県立加茂病院新潟県加茂市青海町1―9―1 ☎0256ー52ー0701(代表)http://www.kamo-hospital.kamo.niigata.jp/  新潟県の県央地域にある県立加茂病院。1970年に竣工した施設の老朽化に伴い、2019年9月に地上6階建ての新病院が完成した。緩和ケア病棟の新設や、高性能の医療機器の導入などにより、これまで以上に魅力ある病院として生まれ変わろうとしている。 ◎地域の伝統を意識しつつ優しい空間を演出  新潟県のほぼ中央に位置し、「北越の小京都」と呼ばれる加茂市。自然と伝統が調和し、穏やかな時間が流れる街の中心部近くに県立加茂病院はある。  2019年9月に完成した新病院の内部は、地元に古くから伝わる縞(しま)織物や、加茂市が全国一の生産量を誇る桐(きり)たんすの文様などをモチーフとしたデザインがちりばめられている。加えて、各フロアはテーマごとに配色が異なり、明るく優しい空間を演出。「患者さんはもちろん、看護師などのスタッフからも『きれいな病院ですね』と言われます」と秋山修宏院長は笑顔で語る。 ◎行政間の調整が難航し建設がいったんストップ  新病院の完成までには苦労も多かったという。建設計画の初期段階から関わってきた秋山院長は、三つの点を挙げた。 「新病院の基本計画は2013年11月に策定され、目玉として緩和ケア病棟30床の設置が盛り込まれました。個人的に大変だったのはこの点で、さまざまな準備に多くの時間を費やしましたね」。中でも日本医療機能評価機構の病院機能評価を受審するため、さらなる医療安全、職員の意識向上に取り組んだことは印象に残っているという。 フロアごとに配色が異なる。採血を受け付けるA1フロアのイメージは赤  二つ目は電子カルテの導入。「前病院は全て手書きで対応していたので、基礎となるマスターづくりや具体的な運用法の考案、そして実際に使いこなすまでには苦労を伴いました。そのおかげで、現在はスムーズな体制が構築されつつあります」 最後は政治的な話だ。「新病院建設の過程では、県と市との調整がスムーズに進まず、途中でいったんストップした経緯があります。私自身は何もできず、推移を見守るしかない立場だったものの、やはり心配しました。しかし、新病院は無事完成しましたし、建設が中断している間に病院機能評価や電子カルテの取り組みに注力できたので、結果的には良い猶予期間だったと思っています」 ◎新病院の完成を機に大きな伸びしろを意識 秋山修宏院長  加茂市周辺の中核病院、また急性期病棟設置病院として、県立加茂病院の果たす役割は大きい。その一方、人口減少、医師不足などにより、病院運営のかじ取りが年々難しくなっているのも事実だ。秋山院長は現状や将来について、どのように考えているのだろうか。 「新病院の完成を機に、伸びしろができたと感じています。その一例は高性能の内視鏡やCTなどを導入したことです。以前から当院は消化器系の指導施設として認定されており、それが強みの一つでした。最新の医療機器やシステムを整えたことで、さらに病院としての魅力が増し、ここで研さんを積みたいという若い医師が多く集まることを期待しています」 緩和ケア病棟の重要性も語る。「現在、加茂市を含む県央地域に緩和ケア病棟を設置している病院はありません。都市部の新潟市や長岡市でもまだ数える程度です。ここに当院の大きな伸びしろがあると思っています。現状はまだ運用を始めて間もなく、入院患者さんは12人ほどですが、将来的には県内全域から多くの患者さんに来ていただきたいですね」 最後に、秋山院長は好きなプロ野球に例えて今後のイメージを語ってくれた。 「規模や経営状況などを考えると、今はBクラスのチームかもしれません。しかし、新病院が完成しましたし、スタッフも日々頑張っています。伸びしろを存分に生かし、まずはAクラス入りを目指します」

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急性期と回復期・慢性期病院統合で地域完結型へ

JA長野厚生連 南長野医療センター篠ノ井総合病院小池 健一 統括院長(こいけ・けんいち)1975年信州大学医学部卒業。同小児医学教室教授、同附属病院長、信州大学副学長、JA長野厚生連篠ノ井総合病院病院長などを経て、2017年から現職。信州大学名誉教授兼任。  病院統合には大きな労力を伴うが、篠ノ井総合病院は2段階に分けてスムーズな統合を実現した。2017年、同じJA長野厚生連の新町病院とまず「業務統合」。そして2019年に「経営統合」し、急性期と回復期・慢性期で明確なすみ分けをして軌道に乗せた。 ―2段階統合の理由は。  ソフトランディングさせるというのが大前提でした。統合する新町病院は、篠ノ井総合病院から車で30分ほどかかる山間部にあり、診療圏の人口が減少の一途をたどっています。また、医師不足にも悩まされていたので、これを解決するのが第一。当院の医師を新町病院へ派遣し、外来診療(循環器内科、総合診療科、小児科、整形外科、リハビリテーション科など)や当直業務を支援しました。   次いで、当院の医師と新町病院医師(院長)による入院患者の診療チームをつくりました。2019年4月からは新町病院待望の常勤医師を送ることができ、2020年の4月には2人に増員します。   新町病院の医師1人が受け持つ入院患者の数は、最も多い時には約35人でしたが、今は25人前後に落ちつきました。医師派遣などの実績が評価され、当院は2018年に地域医療人材拠点病院、2019年へき地医療拠点病院に指定されました。   統合に当たり、当院が急性期、新町病院が回復期・慢性期と明確に役割を分担。新町病院には同じ電子カルテを導入してもらい情報共有をスムーズにしたり、入退院支援の看護師やクラークを増員したりするなどの対応をとりました。   さらに新町病院では、より多くの回復期の患者さんを受け入れられるように、2018年に28床だった地域包括ケア病床を現在は40床にまで増床。事務次長が篠ノ井総合病院から新町病院へ異動し、各種のデータに基づいて方針をしっかり示し、意識改革を促したことが大きかったと思います。私自身、全体的に見て軌道に乗ってきたと感じています。 ―現在の状況は。  医師以外にもさまざまな職種を派遣。新町病院の薬剤師3人のうち1人が産休に入っているので、週2〜3回応援に行っています。放射線技師も3人から2人に減ったので、当院の技師長など放射線技師が拘束当番を受け持っています。 実は、〝新町病院なら仕事を続けられる〟という職員が出てきたことは、うれしい驚きでした。迅速な対応が求められる急性期病院に勤務し続けると、疲れが出てくることもあります。そのような職員に「患者さんとじっくりと向き合う新町病院に移ってみてはどうか」と提案しました。将来的には最初は篠ノ井総合病院で経験を積み、その後は新町病院と、2病院間を行き来できるシステムをつくりたいと思います。 また看護師の離職の原因となっている子育てにも貢献したい。病児、病後児を預けられる場がなかったため、「日本一使い勝手のいい病児保育」も立ち上げたいと思っています。 篠ノ井総合病院は、救急車の受け入れ数が年間4600台を超えています。転院先を探すのが難しい状況の中で、新町病院が回復期を受け持ってくれたことで、機能分担がスムーズに図れるようになりました。 地域の医療は、できる限り地域内で完結させなければなりません。遠方から入院の場合は、付き添いやお見舞いが大変です。長野県は山が多く、集落ごとに独立しており、険しい山道も少なくありません。身近な場所に病院がある環境をこれからも守っていきたいと思います。 篠ノ井総合病院では2013年から整備工事を始め、第1期の本館棟建設が2017年に終了。現在は第2期工事の計画を進めています。プライバシー配慮や感染防止などの観点から、新しい病棟はすべて個室にしたいと考えています。 JA長野厚生連 南長野医療センター 篠ノ井総合病院 長野市篠ノ井会666─1 ☎026─292─2261(代表) https://shinonoi-ghp.jp/

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医師増員で巻き返しへ 地域包括ケア病棟も新設

富士宮市立病院佐藤 洋 病院長(さとう・ひろし)1985年浜松医科大学医学部卒業、同附属病院内科。静岡市立静岡病院、米ロヨラ大学シカゴ校生理学教室、浜松医科大学研修センターなどを経て、2018年から現職。  医師不足による整形外科閉鎖をきっかけに、2015年「富士宮市地域医療を守る市民の会」が発足。病院、市、医師会、市民が協働で地域医療の維持に取り組んできた。その間、病院は病床転換や医師獲得などの手だてを講じ、体制を立て直してきた。今後の展望は。 ―地域における役割や医療の現状は。  二次医療圏のエリアは、ここ富士宮市と富士市の2市。当院は市で唯一の総合病院であり、救急指定病院、地域医療支援病院です。人口13万人の富士宮市と、富士市北部の一部、山梨県峡南地区の患者さんを引き受けています。   数年前は医師の派遣が十分に得られず、2014年には整形外科が一時閉鎖に。2016年には小児科、2017年には泌尿器科の常勤医師がゼロになりました。   最近では大学からの医師派遣が回復し、整形外科は医師4人体制に。2019年10月には病棟も復活しました。   同じく昨年10月、京都府立医科大学から常勤医が派遣され、泌尿器科も再開。当院には前立腺がん治療に力を発揮する高精度放射線治療装置トモセラピーがあり、これも再び活用できそうです。   小児科もこの春に増員予定で、5人体制になる計画です。人材確保に奔走してきたのが、やっと形になってきました。   研修医も4月に5人、入ります。当院の研修医は一般採用と同じ扱いです。給与体系がしっかりしており、場所柄も良いため、毎回定員に対してフルマッチを実現できています。 ―地域包括ケア病棟を新設。背景と展望は。  整形外科の閉鎖後、病棟が空きましたので、その有効利用のために地域包括ケア病棟にシフトしました。   5年が経過し、整形外科病棟の再開に合わせる形で昨年10月、30床の新病棟をオープン。今のところ、8~9割の稼働率です。   新病棟1階にある地域医療連携室を介し、院内急性期病床からのポストアキュートが「3分の1」、整形外科のリハビリ対応が「3分の1」、院外からのサブアキュートが「3分の1」の割合で運用できればと考えています。レスパイト入院の問い合わせもいただいていますので、対応していければと考えています。   富士宮市で地域包括ケア病棟を持つのは当院だけです。地域包括支援センターは6カ所あるのですが、回復期医療に十分に応えられているとは言えません。サブアキュートの患者さんをもっと積極的に受け入れたいものの、問題はやはりここでも人材不足。現在は脳神経外科と内科の医師を中心に運営していますが、本来は病院総合医を1人でも確保したい。ただ、なかなか難しいのが現状です。 ―今後の見通しについて聞かせてください。  まずは、急性期病院としての役割をしっかりと果たすこと。骨折などで夜間に救急車を呼ぶと静岡や御殿場まで搬送されるため、朝まで我慢される方や、手術のために搬送先からこちらに戻る方もいる。心苦しい限りですが、整形外科ではようやく昨年11月から夜10時まで受け入れ可能になりました。少しでも改善できるよう、考えていきたいと思います。   そして、経営改善も大きなテーマです。新病棟建設や電子カルテ導入などの先行投資が膨らんだことで、財政的にかなり厳しい状況です。診療体制は徐々に整ってきましたので、なんとか収益を増やしたいところ。需要に応じて地域包括ケア病棟の病床数を増やすなど、新たな展開も考えていくつもりです。   当院が得意とするのは、消化器系の腹腔鏡手術や肝炎治療。さらには循環器内科、腎臓内科なども強みです。これらを生かしつつ、より頼りにされる病院にしていきたいですね。 富士宮市立病院静岡県富士宮市錦町3―1 ☎0544―27―3151(代表) https://fujinomiya-hp.jp/

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