九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

山口県医師会 会長 河村 康明

 新年明けましておめでとうございます。平成から令和の時代となり初めての正月を迎えるに当たり、一言ごあいさつを申し上げます。 人生100年の時代となり、高齢化が顕著となってまいりました。山口県医師会も40歳以下の若手医師不足だけでなく、70歳以上の高齢医師も徐々に減少し、5年後(2025年)には急速な減少が危惧されています。 このような時期に医療界では、医師の働き方改革・地域医療構想・医師の偏在など、さまざまな大問題を抱えております。一つひとつを個々の問題として捉えても、パッケージとして関連付けても、即効性のある解決策に乏しいところではありますが、医師確保対策について、県行政にその権限が委譲されつつあり、地域の意見を吸い上げながら良い方向に向かえばと考えております。 人口の減少と医師の減少が同時にやってきている状況下での解決策としては「ダウンサイジング」と「ソフトランディング」の二つが言われておりますが、いずれにしても痛みを伴う改革なので容易ではありません。また、国民皆保険制度が継続性を持って存続していくことを念頭に描きながらも、あらゆる保険で自己負担増がたたき台として挙がってきています。 山口県医師会は、日本医師会と連携を保ちながら、これらの諸問題を理解し、対応することが必要となってまいりました。  2019年、公立病院の在り方が論議される中で、山口県内の14病院の実名が発表されてしまいました。医師のみならず職員をも動揺させ、モチベーションの低下につながるこのような手法はいかがなものかと考えるだけでなく、今こそ医療関係者の結束が重要と考えております。 近年の病医院の動向を考えますと、承継問題も重要なことで、医師不足と承継をリンクさせながら新たな方策を考えることも必要な段階に来ていると思います。医療法人の解散も目立つようになり、今後の検討課題となってまいりました。 郡市医師会―山口県医師会―日本医師会がワンチームで諸問題に対応することが求められていると思いますので、地域の実情を考えながら、会員諸氏のご協力を切にお願いいたします。 結びにあたり、新春のお喜びを申し上げますとともに、皆さまにとって、今年が良い年でありますことを祈念して新年のごあいさつといたします。

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ネットワークの構築で地域医療拡充と人材育成を

一般社団法人 天草郡市医師会立 天草地域医療センター原田 和則 院長(はらだ・かずのり)1975年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第二外科(現:消化器外科学)医局長、天草郡市医師会立天草地域医療センター副院長などを経て、2012年から現職。熊本大学医学部医学科臨床教授兼任。  熊本県では、熊本大学と連携し、「地域医療実践教育拠点」や「熊本県地域医療連携ネットワーク構想」などの施策を通して、地域医療の活性化を計画している。その両方に携わる天草地域医療センターの原田和則院長に話を聞いた。 ―地域医療実践教育の天草での拠点となっています。  熊本大学医学部では、松井邦彦特任教授が主宰して「地域医療・総合診療実践学寄附講座」が開講されています。基幹型臨床研修病院など地域の中核病院に熊本大学のドクターを教官として常駐させ、研修医や専攻医の教育をその地で行うことが目的です。 地域医療実践教育拠点病院の第1号は公立玉名中央病院。2拠点目として2019年4月に当院が指定されました。現在、当院に教員が2人常駐し、専攻医1人、多くの研修医が学んでいます。また何人もの医学生が研修にやってきました。このような機会に専攻医・研修医や医学生に地域医療の実態を見てもらうことは良い経験になると思います。 教員2人は総合診療医です。当院は各診療科の専門医ばかりですので、いわゆる「行間の医療」に携わってもらえることで非常に助かっています。地域の開業医からも安心して任せられると好評です。 この「地域医療実践教育天草拠点」は教育の他に、医師不足の解消につなげる目的もあります。つまりここで育った医師に他の病院で活躍してもらう。当院で学んでいる専攻医は、2020年春、天草の他の医療機関に進み、新たな研修医や専攻医が当院に入って数年間学び、巣立っていく。そんな風に毎年度のつながりを継続し、地域に医師が増えることを期待しています。 ―熊本県地域医療連携ネットワーク構想とは。  教育が主目的の「地域医療実践教育天草拠点」とは異なり、こちらは地域の医療環境の拡充を目指すものです。 熊本県では熊本市と周辺に医師が集中する一方で、地域の医師不足は深刻化しています。大学からいつでも希望する医師を派遣してもらえるとは限りません。 そこで熊本大学では、ネットワーク推進医を任命。その推進医を各医療圏の拠点病院に派遣し、医療圏域内の他の医師や医療機関の相談や指導に対応しています。例えば、圏域内に麻酔科医が不足していると要望があった場合は、熊本大学から推進医の麻酔科医を拠点病院に派遣し、支援します。 現在、宇城、有明、阿蘇、球磨など10の医療圏内で、15の病院が熊本県地域医療拠点病院として指定され、当院はその一つです。このネットワークによって、圏域内で安定した医療体制の維持や拡充ができるとともに、地域完結型の専門医療の提供体制も構築できます。 さらには拠点病院で研修などを行うことで、圏域内の医師のスキルアップも可能です。これらは2019年4月から本格的にスタートしました。全国から参考にされるモデルになればと、関係者一同、非常に意気込んでいます。 ―今後は。  1992年、当院が開設されたころからの「救急車で天草の1号橋を渡らせない」という思いは、今も変わらずに持ち続けています。ここは公立病院ではなく、あくまでも医師会立。しかし、公的なミッションを常に持ちながら、医療に当たっています。 最新の医療機器を積極的に導入し、都市部の病院とそん色のない医療サービスを提供することに力を注いできました。医師の育成のために、さまざまな学会の専門医修練の指導施設にもなっています。 人材育成に関しては、医師だけではなく看護師や医療関連技士、理学療法士、作業療法士、医療クラークなどの専門職も育てなければなりません。 住民にとって、また医師などの医療関係者にとって「魅力ある病院づくり」を目指していきます。 一般社団法人 天草郡市医師会立 天草地域医療センター熊本県天草市亀場町食場854―1☎0969―24―4111(代表)http://www.amed.jp/mc/

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グループ3病院が連携 地域の医療に応える

医療法人社団 昴会 日野記念病院仲 成幸 院長(なか・しげゆき)1990年滋賀医科大学医学部卒業。米ジョンズ・ホプキンズ大学留学、滋賀医科大学外科学講座(消化器・乳腺一般外科)准教授、日野記念病院院長代行などを経て、2019年から現職。  1985年に開設された日野記念病院は、日野町を中心とした地域医療と、質の高い急性期医療を提供している。2017年から院長代行を務め、2019年4月、院長に就任した仲成幸氏に、消化器センターや救急体制など地域医療の充実を目指した新たな取り組みについて話を聞いた。 新たな救急体制を導入  学生時代から親しみのあった滋賀県で、かつての指導医だった前院長に誘われて2017年に院長代行として入職。2年後の2019年4月に院長に就任した。 それまでは大学病院での勤務がほとんどだったため、地域医療は手探りでのスタートだったという。 「最初から消化器外科医としてだけでなく、院長代行として病院全体も見ていました。急性期病床が110床、療養病床が40床、合計150床の病院で、日野町の人口は約2万1500人です。過疎化が進み人口密度が低下する中、地域住民の要請に応え、信頼される病院づくりが必要だと思いました」 患者さん一人ひとりのニーズに合わせて診察し、夜間や時間外にも対応するべく、それまではなかったホットラインを設置。以前は受付にかかっていた救急隊からの電話を直接医師が取り、当番も決めて24時間対応できる体制を整えた。 救急受け入れは、専門外で対応できないこともあるが、応需率90%が可能になった。今後はもう少し数を増やして、地域の人が安心して暮らせるように努める。 急性期の専門医療を3病院で連携  「まずは住民の安心をサポートし、地域医療に貢献すること。その上でさらに幅広いエリアと患者さんをカバーできるように、専門的な急性期医療にも力を入れていかなければいけません」という言葉通り、自身の専門領域でもある消化器センターを設立。さらに同じ昴会の湖東記念病院、法人指定管理者である東近江市立能登川病院と連携し、地域医療と専門医療の両方の役割を3病院で担うようになった。 「当院の滋賀脊椎センターには県内外から多くの患者さんが来られています。消化器センターでは胃腸炎や急性虫垂炎、がんなど日常的な疾患から緊急の手術や専門的な治療が必要な疾患まで、あらゆる消化器疾患に対応しています」 また湖東記念病院では、心臓血管センターや脳神経外科センターで脳や心臓の高度な治療を、能登川病院には、常勤の眼科医が5人在籍して眼科の手術を多く手掛けている。 それぞれの病院がより専門的な領域を担い、お互いに患者さんを紹介したり医師の派遣をしたりするなど、連携を取りながら質の高い医療を提供している。3病院の病床数は合わせて381床。病院単体ではできない多様なニーズに対応することができる。 「少子高齢化や医療費の増加に伴い、病院の機能分化や集約化が必要と言われています。急性期医療をグループの病院で分担することで地域医療も急性期医療も充実させることができると思います」 過疎化が進む地域では、こうした病院同士の連携が、効率的かつ質の高い医療提供に必要だと考えている。 医師不足を補うために  地域医療における課題は医師不足だ。 「医師の確保が難しい地域なので、大学と連携して人材派遣もお願いしています。まずはしっかりと症例数を重ねて質の高い医療を提供し続けること。そうすれば患者さんだけではなく、それに関わりたいという医師が増えてくるでしょう。若手医師も積極的に受け入れ、人事交流をすることで医師の技術向上にもつなげたいと思っています」 新たな救急体制構築や専門性の高い医療を提供する病院との連携など、これからも住民に信頼される病院を目指し、地域に貢献していく。 医療法人社団 昴会 日野記念病院滋賀県蒲生郡日野町上野田200―1 ☎0748-53-1201(代表)http://www.hino-hp.jp/

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地域の救急医療体制を「チーム関門」で支える

独立行政法人国立病院機構 関門医療センター佐藤 穣 副院長・救命救急センター長(さとう・ゆたか)1983年山口大学医学部卒業。米スクリプス研究所研究員、山口大学医学部附属病院、関門医療センター総合診療部長などを経て、2015年から現職。山口大学医学部臨床教授。  2011年に救命救急センター長、2015年には副院長に就任。2019年9月には、山口県救急医療功労者として知事表彰を受けた。下関・長門地区の救急医療と救命救急センターの現状、今後の課題を聞いた。 ―救急医療の現状は。  救急医の引き揚げに伴い、当時、統括診療部長、総合診療部長だった私が救命救急センター長に任命されました。実は、内科救急の経験しかなく、自分が講習に行くところからのスタートでした。 当院の救命救急センター長は下関・長門地域のメディカルコントロール(MC)協議会会長を兼任しており、消防を含めた地域の救急体制全てを束ねる立場。就任当時、救急は市内の病院で輪番制でしたが、救急担当者が誰かもお互いに分からない状態でした。 消防局警防課の提案で、当院を含めた市内4病院(下関医療センター、下関市立市民病院、山口県済生会下関総合病院)の救急担当ドクターと下関市保健部で会合を開き、救急医療体制について議論を続けました。その結果、効率的な輪番制と密な連携体制「チーム関門」が実現し、救急車受け入れ率98%という全国でも高い実績を残しています。 MC協議会会長としては救急隊の教育も担当しており、定期的な救急症例検討会の開催や救急活動訓練の指導をしています。また、日頃から、搬送を担当した救急隊長には患者さんの診断がつき次第、電話を入れてフォローしています。 市の保健部が救急医療のコーディネートに関与し、円滑な救急医療の推進や連携を支援しているのも、全国的に珍しいことです。 今回の受賞は、この「チーム関門」への表彰であり、さらに救急医療の質的向上を目指せという激励だと受け止めています。 ―救命救急センターについて。  「救命救急センターER24」は、24時間365日ウオークインや救急搬送の患者さんに対応可能。ドクターヘリはもちろん、海上保安庁や自衛隊のヘリも受け入れられる大型ヘリポートがあります。年間受診者数は8000人以上、年間救急搬送数は3000台以上。とにかく「断らないこと」がミッションです。 初期診療は救急担当医と研修医が行い、それぞれの専門科が「チーム関門医療センター」として対応。身体疾患がある精神科の患者さんなども幅広く受け入れています。 今の救急医療は高齢者医療です。患者さんの全体を診て、どういう病態にすぐアプローチしなくてはならないのかを見極める能力が必要であり、救急医療とは総合診療であるとも言えます。リハビリや栄養、福祉など多職種の連携は必須で、在宅復帰に向けて早期から対処する仕組みをつくっています。 ─今後の課題は。  医師の臨床研修が必修化されて以来、15年間で209人の研修医が「卒業」しました。研修医は1年目から総合外来を担当し、2年間の「副直」研修として救急に従事することが必須です。ERでは研修医が初期対応を行い、われわれがバックアップします。研修医は診断推論を徹底的に学び、総合診療マインドを培います。また、多職種が研修に関わり、チーム医療の大切さも学びます。ERは研修医にとっても大切な場です。 この地域の救急医療が崩壊することはないと思います。ただ、医師不足や医師の高齢化は深刻な問題です。病院としては、さらに多職種の連携を強めて、患者さんの退院後、地域包括ケアまで含めて考えていく必要があります。 スタッフには「自分の年老いた両親を入院させたい病院であるか」を考えるようにと話しています。「One for all, all for one」の精神で、仲間を大切に、プロフェッショナリズムを磨いてほしいと思います。 独立行政法人国立病院機構 関門医療センター山口県下関市長府外浦町1―1☎083―241―1199(代表)https://kanmon.hosp.go.jp/

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地域と連携しながら強みを生かす病院へ

盛岡赤十字病院松田 壯正 院長(まつた・もりまさ)1976年岩手医科大学医学部卒業。盛岡市立病院、岩手医科大学医学部産婦人科学講座、盛岡赤十字病院副院長などを経て、2014年から現職。  盛岡医療圏における中核病院として2020年4月、開院100周年を迎える盛岡赤十字病院。災害救護や地域医療機関との連携を基本方針に掲げるほか、周産期医療にも積極的に取り組む。これらを陣頭で指揮する松田壯正院長に話を聞いた。 ―災害医療の体制についてお聞かせください。  赤十字病院として、災害医療・救護に取り組んでおり、1996年には岩手県基幹災害拠点病院に認定されました。救護方針を決定する災害コーディネーター、DMAT(災害派遣医療チーム)、dERU(移動型の仮設診療所)などを常時配置し、災害が発生した際は、即座に対応できる準備が整っています。 その活動は岩手県内にとどまらず、東日本大震災や熊本地震の被災地など全国各地で活躍しました。最近では、2019年10月に台風19号の被害を受けた宮城県丸森町へ、DMATを派遣しています。 ―地域医療機関との連携も大きな特徴ですね。  まず挙げられるのは、遠野市の公設助産院「ねっと・ゆりかご」との連携です。遠野市の出産数は年間200件ほどありますが、地元にはお産ができる医療機関がありません。 そこで市は2007年に助産院を開設し、周産期医療が充実している当院と嘱託医療機関契約を締結。インターネットを介し、胎児の情報などを共有するシステムがスタートしたのです。これにより、妊婦さんは遠くまで通院しなくとも専門的な検診を受けられるようになり、安心して出産を迎えることができるようになりました。 また、2016年に地域医療支援病院として認定されて以降、かかりつけ医や介護施設との連携を推進しています。「地域医療連携室」を設け、患者さんの紹介があった場合は30分以内に検査・診療方針などを決定。逆紹介も連携室が一括して対応するなどスムーズな調整を実現しました。 当院の患者さん自身が、かかりつけ医を探すことも可能です。病院入り口に設置したタッチパネル式のモニター「どこだ兵衛(べえ)」により、約90の連携医療機関の中から希望の施設を検索することができます。 地域医療連携では「在宅療養後方支援」も行っています。介護施設などと提携し、事前に在宅患者さんの情報を登録してもらうことで、緊急時には当院が速やかに対応するシステムです。現在は八つの施設、計195人の患者さんが登録されています。今後も、さらに数を増やしたいですね。 ―病院のその他の強みは。  産科や小児科などの周産期、外科、血液内科の入院患者さんが多く、中でも周産期は顕著です。当院における2018年度の出産件数は約780件で、岩手県全体の約10%を占めています。これは大きな強みですので、今後も周産期医療や産後ケアに積極的に取り組んでいきます。現在は通院型の産後デイケアを実施していますが、いずれは宿泊型の導入も視野に入れています。 さらに意欲ある職員たちも強みになっています。他病院での長期研修や内外での勉強会など、当院では積極的に職員のキャリアアップをサポートしており、資格を取得している看護師やスタッフが数多く在籍しています。彼らの存在は当院の基本方針の一つである「良質な医療の提供」に大きく貢献しています。 ―今後について。  人口減少や医師不足など、地方医療を取り巻く環境は厳しさを増しています。当院としても、医師や助産師の確保には苦労しているところです。しかし、だからと言って医療の質を落とすことはできません。 今後も地域の医療機関や行政と緊密に連携し、当院の持つ周産期医療などの強みを生かしながら、地域の皆さんの生命と健康を守っていきたいと思います。 盛岡赤十字病院盛岡市三本柳6地割1―1☎019―637―3111(代表)http://www.morioka.jrc.or.jp/

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広域病院企業団として地域医療をリード

置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院林 雅弘 医療監・院長(はやし・まさひろ)1981年山形大学医学部卒業。同医学部助教授、米カリフォルニア大学サンディエゴ校留学(文部科学省在外研究員)、公立置賜総合病院副院長などを経て、2017年から現職。山形大学医学部臨床教授・非常勤講師兼任。  2000年、山形県の置賜地域にある2市2町の公立病院と診療所を再編・統合し、置賜広域病院組合が設立された。病院再編の先進事例として注目を集めた同組合は、2017年に病院企業団となって新たなスタートを切り、さらなる改革を進めている。 ―企業団設立までの経緯を教えてください。  現在の体制ができる以前、置賜医療圏の長井市、南陽市、川西町、飯豊町はそれぞれの自治体で病院や診療所を運営していました。しかし、経営難や医師不足などが深刻化したことで統合案が持ち上がり、2000年に山形県と2市2町による一部事務組合を設立。高度医療や救急医療を担う総合病院を新たに建設し、長井病院、南陽病院の各市立病院は初期医療や回復期医療、川西町立病院は外来のみの診療所として再編したのです。飯豊町国保診療所は運営を町から受託し、医師の派遣などで協力しています。 そして2017年、地方公営企業法を全部適用し、置賜広域病院企業団として新たな体制をスタートさせました。これにより病院運営がスムーズになり、以降はさまざまな改革を行っています。総合病院では7対1看護体制に移行して急性期病院の機能を強化。南陽病院はすでに建て替え、長井病院は3年後に建て替える予定です。在宅支援機能なども充実させました。今後も患者さんのニーズに応じて、柔軟に改革したいと考えています。 ―地域医療機関との連携は。  インターネットを介して、地域の医療機関が患者さんの診療記録を共有できる「OKI―net」、大腿骨骨折の患者さんに特化した「大腿骨地域連携パス」などがあります。ネットワークに登録している各機関が綿密に情報交換することで、患者さんの継続診療が円滑になるだけでなく、地域全体の医療向上にもつながっていると思います。 また、医師が不足している病院に当院から外来医を派遣する体制や、協働診療のシステムもあります。協働診療は平日夜7~10時の間、開業医に当院へ来ていただき、当直医と一緒に1次救急の患者さんを診療するものです。これにより医師間、病院間のコミュニケーションが活発になり、地域の医療連携を進める上でも欠かせないものになっています。 ―研修医やスタッフの教育についてお聞かせください。  現在の臨床研修制度が始まった当初、当院を希望する研修医は少ない状況でした。そこで地元の山形大学と臨床研修に関する協定を結んだほか、当院の医療設備や症例の多さ、教育プログラムをパンフレットなどで紹介。その結果、徐々に研修医が増加し、近年ではほぼフルマッチの16~17人が研修しています。2019年には総合病院のそばにレジデントハウスが建設され、研修医に対する環境がより整いました。 看護師に関しても当初は不足気味でしたが、基本的な知識や技術を学べる研修プログラムが認知されるようになり、今では多くの応募があります。IVナースの教育体制が整っていることも強みの一つでしょう。 ―今後の展望は。  置賜2次医療圏は人口減少が激しく、医師不足や診療科の偏在も大きな問題で、小規模の病院は運営が困難になると予想されます。当院としてはこれまで以上に医療連携を図り、地域のニーズに応え続けたい。そして、この地に急性期医療ができる病院を残したいと考えています。 当企業団で働く職員は非常勤を加えると1000人を超え、置賜地域では大きな職場の一つです。雇用の側面からも地域での役割や期待は大きいと感じています。今後も職員や医師に対する教育、研修を充実させ、魅力ある職場づくりを心がけながら、地域全体に貢献したいと思います。 置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院山形県東置賜郡川西町西大塚2000☎0238─46─5000(代表)http://www.okitama-hp.or.jp/

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必要とされる医療は? 私たちは悩み続ける

地方独立行政法人 岐阜県立下呂温泉病院山森 積雄 理事長(やまもり・つみお)1973年岐阜大学医学部卒業。岐阜大学医学部附属病院、岐阜県立岐阜病院(現:岐阜県総合医療センター)、国保関ケ原病院(現:国保関ケ原診療所)、岐阜県立下呂温泉病院理事長兼院長などを経て、2017年から現職。  医療機関を取り巻く状況が目まぐるしく変わる中で、岐阜県立下呂温泉病院が、地域と向き合うための理念として定めたのは「生活の場の医療」だ。未来を予測するのは難しいが「私たちが地域ですべきことは分かっている」と、山森積雄理事長は語る。 ─現状についてどのように捉えていますか。  毎年、正月になると「10年後の医療はどうなっているのだろうか」と予測しています。数年ほど先の短期的な見通しなら、ある程度は当てることができる。しかしながらそれ以降は、私が考えていた医療とはまったく別の形になっていくのが常です。 2000年に介護保険法が施行された際には「医療のあり方がガラリと変わっていくのではないか」と直感しました。しかし、現在に至っても、思っていたほど医療と介護の連携は伸びていない。 また、2004年に初期臨床研修制度が始まり、医師たちの勤務先の選択肢が広がりました。大学は従来と同じように医局を運営することが難しくなり、地域への医師の派遣にも影響を及ぼしたのです。 その代わり各地に医師が分散することになって、結果的にはなんとか地域医療を維持していくことができるだろう。そう考えていましたが、医師不足は深刻化するばかりです。 近年、医療業界に特化した転職エージェントを通じて、コンスタントに医師を獲得しています。2014年の移転で病院が新しくなり、全室を個室とするなど特徴を打ち出したことが一つの呼び水となっているのでしょう。 こうした前向きな要素はあるものの、地域に必要な医療を届けるという観点で見れば、まだ医師の数は十分ではありません。 ─地域でどのような役割を果たすことが重要でしょうか。  下呂温泉病院は「どのような疾患の患者さんも受け入れる地域完結型の医療」を目指してきました。医師が減少していくこの状況下では、方向性を見直さざるを得ません。 そこで、私たちは「地域にとって欠かすことができない医療」だけに絞ることにしたわけです。 高度な技術が求められる医療は、都市部の医療機関に担っていただく。この地域で暮らしている人々にとって、近くになければ困る医療。例えば透析医療、小児医療などは、当院ができる限り守り続けていく。理念として「生活の場の医療の提供」を掲げている背景には、このような考え方への転換がありました。 ─公立・公的病院再編など、今後もさまざまな変化が訪れます。  国民皆保険制度の確立は1961年。保険料を徴収しておきながら、近隣に受診できる病院がないのはいかがなものか。そんな地域の課題を解決し、高まり続けるニーズに応えることができる医療提供体制を整備しようと、公立病院や公的病院が各地域につくられました。 地域医療構想が進められる中で、将来的に必要な病床数は大きく減少することになります。また、国が公表(2019年9月)したように、公立・公的病院は再編を迫られています。 「医療費の抑制」という問題だけは、昔からずっと変わっていないと感じます。ただ、その施策は目まぐるしく変わっている。私が予測する「10年後の医療」は、ますます当たらなくなるでしょうね(笑)。 高度な専門性を駆使して難しい疾患を治す医師のことを、世の中はしばしば「名医」と呼びます。私が考える名医とは、患者さんに寄り添って、悩みながら医療と向き合うドクターであり、迷う医師(迷医)こそが名医であると考えます。 地域医療が厳しいことは変わらない現実。困っている患者さんたちに何ができるか? 私たちは悩み、考え続けていくのみです。 地方独立行政法人 岐阜県立下呂温泉病院岐阜県下呂市森2211☎0576─23─2222(代表)https://www.gero-hp.jp/

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市、大学と連携協定締結 医師を確保し、一歩前進

JA三重厚生連 三重北医療センター いなべ総合病院相田 直隆 院長(あいだ・なおたか)1987年名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立病院、大垣市民病院、三重北医療センターいなべ総合病院副院長兼院長補佐などを経て、2018年から現職。  2019年6月、いなべ市と名古屋市立大学、いなべ総合病院の経営母体であるJA三重厚生連の三者は、連携に関する協定を締結。市が大学に寄附講座を開設し、病院への医師派遣が進んだ。「これからが正念場です」と語る相田直隆院長の胸中とは。 ―隣町の菰野厚生病院と「三重北医療センター」の統一名称を掲げています。  二つの病院の経営母体は同じ「三重厚生連」。一体化することで、医療機能の分担・集約化や医療資源の有効活用を進めようと、2017年に新体制をスタートしました。 当院は220床、菰野厚生病院は230床。合わせて450床となりました。小規模病院は診療科を維持するだけでも大変です。総合病院として互いに内科と外科は欠かせませんが、それ以外の科はある程度集約し、双方で外来を応援しあう体制を整えつつあります。 例えば、眼科手術は実績のある菰野厚生病院に集約。逆に、泌尿器科は当院。耳鼻科や皮膚科も当院で、と考えています。菰野厚生病院は慢性期医療が充実しています。互いの強みを生かして補完できれば、集約化で医療の質が向上し、患者さんにとってのメリットも大きいでしょう。 ただ、両院を結ぶ交通手段がまだないのがネック。行政区が違うため定期バスが走っておらず、コミュニティーバスの整備が課題です。 ―名古屋市立大学との連携を強化しています。  背景には深刻な医師不足があります。11人いた内科医が年々減り、2018年には常勤医が2人だけに。診療に支障をきたす状況でした。さまざまな事例を調べてみると、同じ境遇の病院はいくつもありましたが、V字回復できたのは行政と大学、病院が連携した例が多いと分かりました。 2019年6月、いなべ市と名古屋市立大学、JA三重厚生連との間で三者協定を締結。これに伴い名古屋市立大学には、地域医療を研究する寄附講座「いなべ市地域医療連携推進学」が設置されています。この寄附講座では、地域包括ケアシステム実現に向けて求められる病院機能や地域医療ネットワークの構築について研究していきます。 当院には、名古屋市立大学病院「地域医療教育研究センター」の分室が置かれることになりました。センターに所属する教員は、当院に勤務しながら診療や研究、医師の教育などに当たることになっています。 いなべ市には市民病院がなく、当院が市民病院的な役割を担っていることから、いなべ市に全面的に協力していただく形で、今回の締結が実現したのです。 ―220床規模でのダビンチ導入は珍しいのでは。  三重県でのダビンチ導入・導入方針表明は当院で5例目ですが、他の施設は400床以上。当院のような規模での導入は維持費などを考えると無謀だと思われるでしょう。 しかし、若い医師を呼び込むには、高度な医療を行っていることが不可欠。先進的な取り組みをしていると発信することに意義があります。 先日行った市民講座とダビンチ内覧会の参加人数は過去最多の200人。メディアにも取り上げられ、関心の高さがうかがえました。今後も泌尿器科、消化器外科を強みにしたいですね。 目下、一番の願いは内科医の増員。満足にできていない救急医療を充実させるためにも必要です。また、複数の自動車関連工場があるいなべ市は、若い世代が増加しているエリア。若い世代が安心して子どもを産み、育てられる地域であるためには産婦人科、小児科は必須です。 〝崖っぷち〟は脱したものの、今も氷の上を歩いているような心境です。市唯一の総合病院として、周辺地域を合わせた医療圏8万人の安心を守ることができるよう、とにかく前へ前へと進むしかないと思っています。 JA三重厚生連 三重北医療センター いなべ総合病院三重県いなべ市北勢町阿下喜771☎0594―72―2000(代表)http://www.miekosei.or.jp/

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