九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

地域医療に貢献する総合的な消化器内科医を育成

東北医科薬科大学医学部 内科学第二(消化器内科)教室佐藤 賢一 教授(さとう・けんいち)1988年東北大学医学部卒業。米国立がん研究所、東北大学病院消化器内科、宮城県立がんセンター研究所などを経て、2017年から現職。2019年から東北医科薬科大学病院副病院長兼任。  東日本大震災を受け、東北地方の復興を医療面から支えるため、37年ぶりに文部科学省から新設が認められた東北医科薬科大学医学部。2016年の開設から4年が経過し、医学部としての環境整備も進んでいる。消化器内科教室を率いる佐藤賢一教授に、現状と今後の教室運営を聞いた。 ―医学部開設までの歩みを教えてください。  東北地方の薬学教育と研究の先導的役割を担う教育機関を目指し、1949年に設立された東北薬科大学が始まりです。附属癌(がん)研究所(現:分子生体膜研究所)の開設、大学院設置など意欲的な教育、研究、学校運営を伝統にしています。 2014年に文科省の「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」で、本学の構想が選定され、2016年に現在の名称に変更して医学部がスタートしました。第1期生は現在、5年生になっています。 ―教室の運営について。  当医学部の使命は、「東北地方の医師不足の対応と被災地復興の支援」です。使命を果たすためのさまざまな制度、教育プログラムを用意しています。例えば学生は1学年100人を定員に、地域枠と一般枠に分けて募集します。地域枠の55人は、東北各県から奨学金を受けて学ぶ代わりに、医師国家試験合格後は、東北地方の医療機関で、最長10年を限度に勤務することが条件になっています。 特色のある教育プログラムとして、東北各県にある提携病院で入学時から実施する、「地域総合診療実習」があります。 地域医療は地理的条件、気候風土、住民の年齢分布などにより、必要とされる医療の在り方が変わります。医療現場を実際に見学し、医師や地域住民と意思疎通を深める滞在型の臨床実習の実施。学生に、早い時期から医師としての使命感や将来像を明確に意識付けることを目的としています。 ―消化器内科教室は医学部開設の翌年からですね。  2020年で3年が経過しました。医学部設立の目的に沿って、地域医療に貢献する消化器内科医の育成を目指すほか、研究室では肝疾患の基礎研究や肝がんの増殖関連分子の研究なども行っています。 診療は、上部消化管、下部消化管など4チームで行っています。地域医療支援として各地域の病院に、毎週、あるいは隔週で外来および消化器内視鏡の応援診療も実施しています。卒業生が入局してくると、各地域の病院へ常勤医として派遣することが可能になると考えています。 現在、教室のスタッフは20人ほどいます。臨床に意欲を持った若手が多く、スキルを磨くことに毎日励んでいます。女性医師も活躍しており、子育て世代にも優しい職場環境も心掛けています。 ―今後について。  東北は都市部を除き、地方へ行くほど診療所のような小さな病院が主体です。赴任しても消化器医は自分1人しかいない、というところが多くあります。 そのような医療現場では、患者さんの年齢や性別、さらには臓器の垣根も越えて診療ができるGP(ジェネラル・プラクティショナー)でなければ、地域の医療ニーズを満たすことができません。私の使命は、〝総合消化器病医〟と言えるような医師を育てることだと考えています。 東北医科薬科大学病院での診療4チームでは、助教クラスの若手の場合、数カ月ごとに各チームをローテーションし、広い知識、知見、スキルがより多く身に付くようなプログラムを実施しています。 今後は、さらに多くの症例や患者さんを診ることができる体制構築に本格的に着手したいと考えています。学生や若手スタッフと共に、東北医科薬科大学医学部の新たな歴史を築いていきます。 東北医科薬科大学医学部 内科学第二(消化器内科)教室仙台市宮城野区福室1―15―1☎022―259―1221(代表)http://www.tohoku-mpu.ac.jp/medicine/lab/gastroenterology/

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「地域を診る」医師を育て さらに信頼される病院へ

JA新潟県厚生農業協同組合連合会あがの市民病院藤森 勝也 病院長(ふじもり・かつや)1985年自治医科大学医学部卒業。新潟県立新発田病院内科部長、新潟県立加茂病院副院長、新潟県立柿崎病院院長などを経て、2017年から現職。  1954年に水原町国保直営病院として発足。2015年に新病院が完成し、「あがの市民病院」に改称。阿賀野市の総合病院として地域医療に貢献してきた。病院の特色や今後の展望を、藤森勝也病院長に聞いた。 ―阿賀野市の状況は。  当院は、県庁所在地の新潟市から東に約20㌔の阿賀野市にあります。新潟県は医師不足の県で、厚生労働省が示した「医師偏在指標」では全国47位でした。 新潟県には20の市があり、阿賀野市の医師数は20市中19位。人口10万人当たりの医師数が約87人(全国平均は約252人)で、相当な医師不足の市と言えます。阿賀野市の人口は約4・2万人、高齢化率約33%、高齢者単身世帯・高齢者世帯が全体の世帯数の約23%で増加しています。 ―病院の特色は。  総病床数196床(一般急性期病床92床、地域包括ケア病床104床)で、介護医療院54床を病院内に併設。急性期から回復期、慢性期まで幅広く対応するケアミックス型病院です。16の診療科を持ち、1日の外来数約410人、介護医療院を含めた1日の入院数約196人、年間救急車受け入れ488台、年間救急外来数1369人、年間訪問診療数240件、訪問看護と訪問リハビリ数6187件に上ります。「糖尿病・生活習慣病予防治療センター」「消化器病センター」「骨関節疾患センター」「地域医療・連携センター」の四つのセンターを有し、透析、呼吸器診療にも力を入れています。 「糖尿病・生活習慣病予防治療センター」「消化器病センター」「骨関節疾患センター」では、常勤医が地元新潟大学の非常勤医と協力して、生活習慣病、消化器病、骨関節疾患の発症・進行に関する実態と要因を究明。市民の健康寿命を延ばすための施策立案を、科学的かつ効果的に進める研究も行っています。 また、初期臨床研修医の地域医療研修病院として、基幹型研修病院から受け入れ、共に勉強しています。訪問診療、連日の外来研修とそこからの入院診療、午後の救急当番とそこからの入院診療、週1回程度の当直業務、毎週の内科回診、内科検討会での発表、職員の前で15分程度の教育講演担当などを行っています。 週末には「地域を診る」ために地域の名勝地を訪れ、特産食品を味わい、伝統と文化に触れてもらっています。それまでゼロだった臨床研修医数は、2017年に4人、2018年に15人、2019年に19人で、2020年は18人が内定しています。 ―今後の展望は。  病院では「健康寿命日本一」を目指す自治体と協力し、地域包括医療ケアを充実させる取り組みとして、「自助」に力を入れています。ヘルスプロモーション活動として、年8回の糖尿病教室、年数回の地域講演会・出前健康講座、中学校での「たばこの害」「こわ~い薬物依存」の講演、地域医療フォーラムや病院祭での講演、年10回の新潟大学医学部健康講座塾など、さまざまな健康情報提供の場をつくっています。 地域活動として、七夕コンサート、クリスマスコンサート、民謡流し参加などを通して、地域の方々との「ふれあい」「交流」を図っています。加えて、近隣の医療施設と医療機器の共同利用や在宅療養後方支援病院のシステム化を実施。また、市内介護施設と、「あがの介護・病院連携の会」を設立し、隔月で定期開催しています。連携の会では、「患者情報連絡票」を作成。外来受診をよりスムーズにし、顔の見える関係性づくりを行っています。 当院は、予防医療から急性期・回復期・在宅医療を含めた慢性期、介護分野までの包括的医療を提供する地域の中心的病院として、また住民に信頼され、愛される病院であり続けたいと、今後も職員一同〝ワンチーム〟で活動していきます。 JA新潟県厚生農業協同組合連合会 あがの市民病院新潟県阿賀野市岡山町13―23☎0250―62―2780(代表)https://www.niigatakouseiren.jp/hospital/aganoshimin/

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北陸3県でタッグを組み アレルギー医療職を育成

福井大学医学系部門医学領域 小児科学大嶋 勇成 教授(おおしま・ゆうせい)1985年京都大学医学部卒業。福井県立病院、国立療養所(現:国立病院機構)南京都病院、カナダ・モントリオール大学附属ノートルダム病院アレルギー研究室などを経て、2010年から現職。  福井大学、金沢大学、富山大学の3大学が協力してアレルギー専門医不足の解消を目指す教育プログラムが、2020年春、スタートした。基幹校として、事業をリードする福井大学の大嶋勇成教授は、「将来的には他エリアでの展開も考えられる」と意気込む。地域格差の改善に挑む地方の実情とは。 ―就任から10年です。  教室員の増加とともに、関連病院も大幅に増えました。県内の主な入院施設に、当教室の教室員が勤務しており、全体の風通しがいいのが強みにもなっています。救急、周産期含めて連携が進み、どのようなお子さんがどのような病気で、どこに入院しているかをしっかり情報共有できています。大学での治療後の長期フォローについても、得意分野をどうすり合わせるか、顔が見える関係性が生かされています。 大学として、難治性疾患全般を担うのは当然ながら、初代教授の専門だった先天性代謝分野は特色の一つです。タンデムマス法を用いた新生児マススクリーニングの研究を全国に先駆けて始めており、現在は全国各地から送られてくる検体の精密検査、先天性代謝異常症が疑われる患者さんの検査を行っています。 教室運営における課題は、やはり地方における医師不足です。限られた人材で、県全体の医療を守り、次世代を育成しなければなりません。一人ひとりが相当な自覚を持つ必要があります。 ―「北陸高度アレルギー専門医療人育成プラン」とは。  北陸は、小児科に限らずアレルギー全体の専門医が少ない地域です。県庁所在地はまだしも周辺の医療圏はさらに少なく、診療レベルの均てん化が急務となっています。国も政策として打ち出しているものの、都市部と地方の現状には雲泥の差があり、同じ論理は当てはまりません。そこで、地方なりのアプローチで改善できないかと、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の藤枝重治教授と共に文部科学省の公募に応募し、採択されたプランです。 もともとアレルギー研究で連携が強かった福井大学と金沢大学、富山大学の国立3大学が協力して育成プログラムを作成。eラーニングやWeb会議を用いたカリキュラムで構成し、年1回のセミナーも開催。遠隔教育だからできる多施設・多職種連携を図ります。さらに、難治アレルギーデータベースを活用し、臨床研究も推進します。 大学院生対象の本科コースでは、研究者や専門医を育成。医師・メディカルスタッフ対象のインテンシブコースでは、短期集中型のカリキュラムで専門知識を身に付けます。 福井大学では、小児科と耳鼻咽喉科のほか呼吸器内科と皮膚科、4部門のアレルギー専門医がそろうメリットを生かし、全6課程のうち3課程を実施します。小児科には「小児アレルギーエデュケーター」という資格がありますが、対象患者の枠を成人にまで広げれば、小児病棟以外でも活躍できる。そこにも期待しています。 ―課題は。  目標は、地方にいながらも領域をリードできる研究者を育てること。さらに医師だけでなくメディカルスタッフのマンパワーを拡充すること。看護師、薬剤師、保健師、栄養士などに、関心を持って参加してもらえたらと思います。アレルギー総合診療を実践し、疾患対策の中心的役割を担える人が1人でも増えれば、現場は格段に前進します。目標は、2021年までに30人を育成することです。 各県にはアレルギー拠点病院が認定されているものの、一部は積極的に活動できていません。そのような状況で、自前で人を育てるのは難しいでしょう。この育成プランが軌道に乗れば、マンパワー不足にあえぐ拠点病院も利用することができます。地方自ら解決の糸口を見いだすモデルになれるよう、実績を重ねたいですね。 福井大学医学系部門医学領域 小児科学福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23―3☎0776―61―3111(代表)http://www.med.u-fukui.ac.jp/SHOUNI/

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病院建設計画スタート 地域のさらなる医療充実を

医療法人青仁会 池田病院池田 大輔 院長(いけだ・だいすけ)1998年川崎医科大学卒業。鹿児島大学医学部附属病院(現:鹿児島大学病院)、国立病院九州循環器病センター(現:国立病院機構鹿児島医療センター)、池田病院循環器内科などを経て、2012年から現職。  鹿児島県の大隅半島にある肝属医療圏。圏内診療の体制拡充と高度化が医療従事者、および地域住民の変わらない願いとなっている。同地域中心の鹿屋市で、約50年にわたり地域医療に取り組む、中核病院の一つ「池田病院」。病院の建設計画を含め診療体制の充実に努める池田大輔院長に現状と展望を聞いた。 ─肝属医療圏の現状は。  高隈山系と国見山系に囲まれ、長らく〝陸の孤島〟と呼ばれてきた肝属地域も、数年前に高速道路が開通し、交通事情はかなり改善しました。しかし医療施設が集積する鹿児島市への患者搬送は、まだ時間を要するのが実情です。 また、当医療圏の人口のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は30%に達しています。特に本土最南端の佐多岬がある南部エリアの高齢化は相当進行しており、がん、心疾患、脳疾患などの死亡率が県平均を超えている状況です。 このため、鹿屋市医師会を含む四つの医師会が連携し、検診の充実、および在宅医療や介護受け入れなどの拡大を最優先事項に、住民の診療に当たっています。しかし、医師不足もあり、改善は思うように進んでいません。 医師会をはじめ各医療機関は、自らの特色や強みを発揮しながら、医療資源のさらなる拡充に取り組み、地域住民の医療ニーズを満たす努力を続けています。 ─病院の特徴について教えてください。  鹿屋市で、透析医療を本格的に行う医療機関としてスタートし、現在、多数の施設を持つ池田医療介護グループを形成する一方、10年ほど前から私の専門である循環器をはじめとし、カテーテル治療や外科治療を展開。現在、診療科目21、189床の総合病院になりました。開業時よりドクターの数も3倍に増え、市民から厚い信頼を得ています。 当院は救急医療と循環器、透析、がん、脳卒中などに強みを持つほか、鹿屋市では少ない呼吸器内科、血液内科、肝臓内科、消化器内科については、特に鹿児島大学と連携しながら診療を行っています。 ちなみに、2019年から、鹿児島大学から研修医の受け入れも開始しています。「来て良かった」「もう少しここで働いてみたい」と思っていただけるように、アットホームな雰囲気の中で研修を行うことに努めています。 大隅半島は自然が豊かで、特に食べ物は〝日本一おいしい〟と私は信じており、生活環境も満足していただけるものと確信しています。研修医の受け入れが医師不足の解消と地域医療の充実につながることを願っています。 ─今後の目標は。  一つはスタッフが、100%力を発揮できるための、組織づくりです。 650人を超えるスタッフが、人間関係を豊かに、チーム力を結集しています。当院が目指す医療提供体制を整えるためには、職員個々の能力アップと、教育システムが必要であると考えています。 私も院長として、可能な限り、諸問題に対処し、解決するよう努めると同時に、次世代を担うスタッフが、モチベーションを持ち続け、キャリアアップしていける組織運営の推進にも、力を注いでいます。 もう一つは、地域医療へのさらなる貢献の一環として、当院の医療体制強化とともに、地域住民がより利用しやすい施設の実現を目指し、病院の建設計画をスタートさせています。 現在の建物はすでに築35年ほど経過して老朽化が目立ち、患者やスタッフの増加によって、かなり窮屈になっています。これまで以上にハイレベルな診療や療養に取り組める先進的な医療施設を数年以内に建設し、地域住民の医療ニーズに少しでも対応していきたいと考えています。 医療法人青仁会 池田病院鹿児島県鹿屋市下祓川町1830☎0994―43―3434(代表)http://www.ikeda-hp.com/

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医療の質を維持し、健全な病院経営を目指す

佐賀大学医学部附属病院山下 秀一 病院長(やました・しゅういち)1984年宮崎医科大学(現:宮崎大学)医学部卒業。久留米大学高度救命救急センターICU、堀川町山下内科呼吸器科医院、佐賀大学医学部附属病院総合診療部長などを経て、2016年から現職。同病院総合診療部教授兼任。  佐賀県の高度急性期医療を担う佐賀大学医学部附属病院。2011年にスタートした病院の再整備も順調だ。新専門医制度や働き方改革など医療を取り巻く環境が変化しつつある今、健全な病院経営に向けた取り組みや展望を山下秀一病院長に聞いた。 ─経営の現状は。  世界レベルの優れた医療設備と機器をそろえようと、2011年から病院の再整備を進めてきました。高度救命救急センターや増設した手術室は、すでに完成し、工事費の著しい高騰でストップしていた外来棟の再整備も再開しました。2020年の10月には第1期分の増築工事が完成予定です。再整備の効果は表れてきており、年間の手術件数は7000件に達する勢いです。 私は開業医の経験があり、病院長就任当初から数字の見方はある程度わかっていました。しかし、大学病院の経営は非常に複雑です。積み立ても目的のあるものしかできないため、一般病院のように赤字が出たからといって内部留保からカバーすることはできません。 具体的な数値目標を掲げる方が成果を出しやすいと考え、現在は、各診療科から目標数値を提示。それを基に病院全体の目標数値を決めるようにしています。売り上げだけでなく、手術数やカテーテルアブレーション治療の件数など、各科の得意分野も目標数値に設定しています。 毎月、その達成状況をチェックし、達成できていない科は診療科長や医局長などを集めて、原因と対策を考えます。患者さんを紹介いただく数が減少している医療機関には、診療科長と一緒に私があいさつに伺うこともあります。 ─現状の課題は。  新専門医制度が始まって3年目になりますが、当院もシーリング(専攻医の募集定員の制限)がかかり、希望通りに医師を採用できていません。 現在、大学で訓練した医師を地域の病院に出していますが、現状の医師不足に加えて本格的に働き方改革が始まれば、その医師たちを引き上げなければならなくなり、地域医療が崩壊するのではないかと危惧しています。今は、閉塞感でいっぱいです。 言うまでもなく、医師の労働環境の改善は重要です。当院も、特定看護師をつくる準備をしたり、医師事務作業補助者の数を増やしたり、ワークシフトやワークシェアによって、純粋に医師が能力を発揮できる環境を整えようとしています。しかし働き方改革は、もっと一つひとつのことをきちんと考えて実施すべきです。今のスピード感で進めるものではないと思います。 難しいかじ取りになりますが、高度急性期医療を必要とする患者さんをしっかり診療できる体制を整えるべきだと考えています。 ─今後の展望は。  職員が頑張ってくれたおかげで再整備の採算のめどが立ちました。今後は、再整備のためにずっと抑えてきた、高度医療機器の調達に向けて計画をシフトしていきます。まずは、悪性腫瘍の高度治療に対応できる高エネルギー放射線治療装置リニアックなどを導入していく予定です。 地域の医療機関との連携においては、2020年4月から、佐賀県診療情報地域連携システム「ピカピカリンク」の開示情報を広げ、カルテやサマリーも閲覧できるようにします。これによって、紹介いただいた病院の医師と当院の医師の連携がスムーズになり、患者さんにも、より安心していただけると思います。 また、当医学部は、新規抗がん剤や細胞製人工血管の開発研究など、ユニークな研究にも取り組んでいます。大学ですからこうした臨床研究や技術開発にも力を入れていきたいですね。 何より、佐賀県の高度急性期医療を担う医療機関としての役割を果たしていけるよう、健全な病院経営に尽力していきたいと思います。 佐賀大学医学部附属病院佐賀市鍋島5─1─1☎0952─31─6511(代表)https://www.hospital.med.saga-u.ac.jp/

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地域医療の核としてあらゆる泌尿器疾患に対応

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科腫瘍学講座泌尿器科学分野 榎田 英樹 准教授(えのきだ・ひでき)1992年鹿児島大学医学部卒業。鹿児島市立病院泌尿器科、出水市立病院(現:出水総合医療センター)泌尿器科、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科腫瘍学講座泌尿器科学分野講師などを経て、2012年から現職。  鹿児島県内の地域医療の核として、あらゆる疾患の治療を行っている鹿児島大学・泌尿器科学分野。腎臓移植や小児泌尿器疾患などのスペシャリストをいかに育成しているのか、また基礎研究への取り組みなどを、医局長を兼任する榎田英樹准教授に聞いた。 ─医局の特徴、強みは。  現在、医局には18人、関連病院に出向している医師を含めると40人弱が在籍しています。 一般的に泌尿器科は排尿障害とがんの治療を主としていますが、当科は腎臓移植、血液透析を含む血液浄化治療、小児の先天奇形や不妊の治療など、幅広く行っています。 全国的に見ても、腎臓移植と小児医療の両方を診る医療機関は数えるほどです。当病院が診なければ、患者さんは東京や福岡の病院まで行かなければなりません。特に腎臓移植は、手術後の管理が大事ですから、地元の病院で受けるほうがいい。地域医療の観点からも当科の存在意義は大きいと考えています。 もちろん、高度な手術は、専門の医師でなければ対応できません。そこで、高度専門技術を必要とする手術の症例数が多い病院に、医師を2年間ほど派遣。研修によって技術を習得する手法をとっています。2019年は、腎臓移植手術の研修から医師が戻ったことでマンパワーがアップし、年間27症例の腎臓移植手術を行いました。 ─診療の現状は。  高齢化が進み、泌尿器科医の需要はこれまで以上に高まっています。 最近は、患者さんのダメージが小さいロボットや腹腔鏡を使用した手術が増えました。 以前は、大きく浸潤した局所進行の前立腺がんは、手術を行っていませんでしたが、現在は、術前のホルモン化学療法で腫瘍を小さくし、ロボットを使って取り残しがないように切除して再発を抑えています。 また、2005年から密封小線源療法にも取り組み、治療数は600人を超えます。放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込む治療法で、麻酔は下半身だけに効く腰椎麻酔、治療時間も3時間程度で済みます。比較的悪性度の低い種類のがんが対象ということもあり、約95%の根治率を達成しています。 ─地域医療の現状は。  離島については、現在、奄美大島に常勤の医師3人が出向。種子島医療センターには非常勤の医師が週1回通っています。 ドクターヘリで運ばれる急患も受け入れていますが、治療後が問題です。離島に帰る際は、船や飛行機を利用しますが、寝たきりの患者さんの場合、安全上の問題から断られることがあります。そのため蘇生用の機器を持って、医師が付き添うこともあります。 離島に限らず鹿児島はへき地が多い地域です。本来は、各地に泌尿器科医を出向させるべきですが、医師不足のため十分な対応ができていません。学生に早い時期から泌尿器科の魅力を伝えるなどして、医師の育成にも尽力しています。 ─教育・研究は。  後期研修の1年目は医局で高度な医療を経験。2年目以降は、地域医療を担う連携病院で経験を積んでいきます。 連携病院では、自分の診断・治療の結果に責任を持たなければならない場面が多くなります。そうした経験が自立心を育み、一人前の泌尿器科医に成長させてくれます。 また、研究も大切な仕事です。当教室では、マイクロRNA(短鎖核酸)の基礎研究に力を入れています。 独自の患者プロファイルを作成・解析し、がんで発現するマイクロRNAを尿中で測定することに成功しました。現在は、尿路上皮がんの診断・予後予測マーカーの開発と、新規治療法の開発につながる研究を行っています。将来的には、研究成果を、臨床の現場に応用し、社会に還元したいと考えています。 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍学講座 泌尿器科学分野鹿児島市桜ケ丘8─35─1☎099─275─5111(代表)https://www.kufm.kagoshima -u.ac.jp/~urology/

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制限のない医療提供 いずれ改革が必要に

社会医療法人里仁会 興生総合病院藤原 恒太郎 理事長・院長(ふじわら・こうたろう) 1989年旭川医科大学医学部卒業、1993年岡山大学大学院医学研究科修了。心臓病センター榊原病院、興生総合病院副院長などを経て、2006年から同院長、2014年から現職。  24時間の救急対応をはじめ、「できることを、できる限り提供したい」と話す藤原恒太郎理事長・院長。現在の医療制度は、これからの社会において持続可能なのか。話を聞いた。 ―地域の現状は。  当院では、24時間365日、近隣の民間病院とも連携を図りながら、できる限り受け入れる体制を整えています。当直は、医師や看護師だけでは成り立たないため、薬剤師、検査技師、放射線技師を各1人配置しています。普段から、救急の患者さんが来たら、メディカルスタッフがすぐに駆けつけ、お互いに役割分担しながら、よく頑張ってくれています。 しかし、患者数が非常に多いわけではありません。三原市全体の人口は減少しており、近く9万人を割ると言われています。医療を必要とする高齢者の人数も減っており、今後の医療需要は減っていく一方だと思います。 ―病院運営について。  厚生労働省が提言している地域医療構想の内容について、一部批判も出ていますが、私は正しいと考えています。人口が減少している中、「各病院が協力して病床数を削減しましょう」というのは一つの方法だと思うのです。とはいえ、病院運営を継続するためには、ある程度患者を獲得する必要があります。厚労省は、合併や統廃合を推奨していますが、それぞれ経営母体が違うため、実施は難しいのではないでしょうか。 借金がある病院もあれば、ない病院もある。赤字の病院もあれば黒字の病院もある。給与水準も違います。診療費は同じですが、掛かる経費は違います。赤字分を補填してもらえる病院もあれば、補助金をもらえる病院もある。一方、自力で設備投資をし、さらに収支を黒字にしなければいけない民間病院もあります。 そのような病院が合併するのは非常に難しい。三原市内でも二つの医療機関名が公表されましたが、「この病院と合併しなさい」というところまでの指示はありません。 この地域で、さらに深刻なのが、医師不足の問題です。大学病院に医師の派遣を依頼していますが、非常勤でも難しい状況です。医療機関に限らず、中小企業は、専門性に特化して事業を行うことがセオリーかもしれません。しかし、病院には専門に特化する人的余裕はないのです。 医師が何でもやらなければならない。私も人間ドックを担当しますし、整形外科の医師が流行期には発熱外来も診ます。救急外来も全員で取り組みます。できる限り患者さんを受け入れるには、特化するわけにはいかないのです。 ―医療制度の課題は。  ドラッグストアで風邪薬を買ったら、3000円ほど。病院で処方されれば、診療費も含めて3000円もしないでしょう。湿布薬も病院のほうが断然安い。人件費が含まれているにもかかわらず、なぜ病院のほうが安いのか。それは、国民皆保険制度があればこそです。しかし、この制度をこの先も本当に維持していけるのか、非常に疑問に感じています。 国民皆保険制度は、日本の経済が右肩上がりだった頃であれば良い制度だったと思います。しかし、現代にマッチしているとは言い難い。今や国は1000兆円の借金を抱えています。借金の要因は一つではないにせよ、社会保障がこの国の財政を圧迫していることは明らかでしょう。 このまま制度を続けていくと、日本の医療制度は崩壊するかもしれません。「持続可能な社会」という言葉がありますが、そのような厳しい状況の中でも、病院を存続させることは理事長であり院長である私の使命です。できることを、できる限り、あらゆる努力をしつつ、持続させていきたいと思います。 社会医療法人里仁会 興生総合病院広島県三原市円一町2―5―1☎0848―63―5500(代表)http://kohsei-hp.jp/

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数々の改革を行い、3年連続の黒字化へ

岩手県立宮古病院村上 晶彦 院長(むらかみ・あきひこ)1979年岩手医科大学医学部卒業。岩手県立宮古病院消化器内科科長、岩手県立中央病院副院長などを経て、2015年から現職。岩手医科大学臨床教授兼任。  医師不足や少子高齢化などの影響により、地方の公立病院の多くは厳しい経営を強いられている。そのような中、岩手県立宮古病院は2017年から2年連続で黒字を達成した。キーパーソンは、2015年に院長として赴任した村上晶彦氏。村上院長が実施した病院改革はどのようなものか。 ―黒字化に至るまでの主な施策を教えてください。  まずは医師の確保です。2000年の時点で当院には50人の医師がいましたが、2011年は27人にまで減少。それに比例して収益も悪化していました。しかし、その後は研修医の獲得などに取り組んだことで徐々に医師が増加し、現在は38人が常勤しています。これに加え、非常勤の専門医にも来ていただくことで、以前よりも診療体制を充実させて、患者さんの受け皿を広げました。 次に大きかったのは、2 016年に地域医療支援病院の承認を受けたことです。私は約30年前にも当院で一度働いており、当時の同僚だった先生方が近隣地域で開業されています。そこで皆さんの協力を仰ぎながら、患者さんの紹介率・逆紹介率を高め、支援病院の承認を得ることができました。これにより、入院患者さんのDPC(診断群分類包括評価)係数が上がり、診療報酬も増加しました。 その他の施策としては、地域がん診療連携拠点病院としての強みを生かし、がんの手術、化学療法、放射線治療などの件数を増やしたこと。また、院長や事務長などの執行部も参加する「地域包括ケア病棟会議」を毎週開催し、患者さんに対する治療や支援策を詳細に検討していること。透析病床を9床から15床に増やしたことなども収益に一役買っています。 これらの結果、私が就任した2015年度の経常損益はマイナス約1億3000万円でしたが、翌年度はマイナス約6500万円で赤字幅が大きく縮小。そして2017年度はプラス約2000万円、2018年度はプラス約1億1000万円と2年連続で黒字を達成しました。さらに2019年度も黒字の見通しとなっています。 ―救急・災害医療でもさまざまな試みを始めましたね。  救急医療に関しては、2015年に地域の消防本部と提携し、救急車から病院に心電図を伝送できるシステムを導入。当初は1台のみの試験運用でしたが、74人の心電図を伝送、5人を心臓カテーテル治療で救命したことにより、翌年からは全ての救急車11台に導入されています。現在、当院では宮古医療圏における約82%の救急車を受け入れていますので、今後も救急医療の整備に注力したいと考えています。 災害医療ではDMATを1隊から3隊に増やし、同時に隊員の育成にも取り組んでいます。2016年の台風10号による災害や2018年の北海道胆振東部地震の時は当院のDMATが被災地で活動しました。それとは別に、私自身も2019年の台風19号で大きな被害を受けた宮古市重茂地区で訪問診療を実施。災害拠点病院として、災害医療の向上は常に意識しています。 ―今後の病院運営についてどのようにお考えですか。  東日本大震災以降、宮古には明るいニュースが少なく、どこか元気がありませんでした。そのような中、職員や地域の皆さんの協力を得て、当院が2年連続で黒字になったことには大きな意義があると感じています。今後も地域連携を大切にして、「地域になくてはならない病院」を念頭に置きながら、引き続き経営の安定化を図ります。 同時に、若い医師の育成も重要です。特に「医師の地産地消」として、県内の医学奨学生を中心に育てたいですね。これにより、岩手県全体の医師不足に対して、少しでも貢献したいと思っています。 岩手県立宮古病院 岩手県宮古市崎鍬ケ崎1─11─26☎0193─62─4011(代表)http://www.miyako-hp.jp/

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