公立病院ならではの特徴を生かし市民に貢献を
開院から68年を迎える山陽小野田市民病院。市が経営する公立病院で、2015年にリニューアルしている。白を基調とし、清潔感のある広々とした造りは、市民に好評だ。今年4月に就任した矢賀健病院事業管理者に話を聞いた。
―現在の病院について聞かせてください。
市民の健康に貢献できる良い医療を提供すること。それを大きな目標として掲げています。そのためには、安定した経営が必須です。人材確保も、新たな設備の導入も、経営の安定なくしては困難だからです。
当院では経営会議を月2回開催。各診療科・部門からの報告を受け、その都度、対策と方針を練っています。一時期は、厳しい経営状況が続きましたが、2015年に病院を建て直してからは、業績が回復してきました。現在、215床ある病床の稼働率は84.7%。平均在院日数は16日。外来患者は1日約410人です。
できるだけ患者さんの声を聞くことも、私の方針です。投書による患者さんからの声を大切にするため、集まった意見を貼りだす掲示板を新しく設置しました。
今は月に3〜4通ですが、掲示することによってさらに集まることを期待しています。
投書への回答率は、今のところ100%です。実際に取り入れて改善した部分もあります。女子トイレにおむつ交換台を設置しましたし、以前から要望のあった授乳室も新設しました。
当院の建物はユニークな造りです。太陽光や地熱をエネルギー源として活用していますし、雨水もトイレに利用するなどして、地球環境に配慮した設計となっています。耐震性が高い鉄骨造りで、災害時にも医療が継続できるよう設計されています。
―診療面ではどんな特徴がありますか。
救急から在宅医療の直前まで、全般的に取り組んでいます。特に、泌尿器科と産婦人科は充実しているのではないでしょうか。
近隣の公立病院で透析ができるのは、当院だけですし、二次医療圏で分娩ができるのも大学病院を除けば当院だけです。分娩数は、毎年増えており、昨年は440件扱いました。合併症がある方など難しいケースは、大学病院に紹介しています。
当院のもう一つの特徴は、市の健康増進課と協力して、活動できることでしょう。例えば、市の検診で尿酸値が高い人が多かった場合、市に「精密検査を呼びかけましょう」「腎臓病のセミナーを開催すべきです」などのアドバイスができます。予防医学の面から介入すれば、重症化を防いだり、市の医療費節減にもつながったりするので、市民にとってもメリットになるわけです。
―今後の課題だと考えていることを。
まずは、医師の確保が挙げられます。小児科の患者さんは増えているのに、医師は非常勤しかいないのが現状です。産婦人科の医師も不足しています。私の任期の間に、常勤の医師を確保・増員できればと考えています。
当院は、在宅療養後方支援病院でもあります。地域移行が進む中、この分野のニーズはさらに高まると予想されます。近隣のクリニックなどと連携し、地域包括ケアにも取り組んでいきたいと思っています。
職員の意識向上も図りたいですね。学会や研修に出る頻度が低いことも課題の一つでしょう。外の世界を見て「自分ももっと頑張ろう」という人が出てきてほしいと思っています。今後は研修など、教育の機会を増やしていく予定です。
私は、前任の山口労災病院で、10年以上、医療安全統括責任者を務めていました。医療安全は、病院にとってベースになるもの。この取り組みも、もっと推進したいと思っています。
山陽小野田市民病院
山口県山陽小野田市東高泊1863-1
TEL:0836-83-2355(代表)
https://sanyo-onoda-city-hosp.jp/