高度急性期を核に経営効率では語れない医療を
静岡県西部に位置する人口80万強の政令指定都市、浜松市。12市町村が合併し、全国で2番目に広い面積を持つ。その北西部の中核病院である聖隷三方原病院は、県内最多934床のベッド数を誇る。
―病院の特色は。
高度救命救急センターとしてドクターヘリも活用しつつ、高度急性期医療を中心に展開しています。一方で、困った人に手を差し伸べるという病院の成り立ちにも関わりますが、ニーズがありながらも他の医療機関が経営効率的に手を出せない分野も大切に育ててきました。
一つは精神科です。急性期を担いながら精神科2病棟を持つ施設はほぼないでしょう。がんを発症した患者さんなど、県東部からも来られます。
日本初のホスピスも同様です。隣の中東遠医療圏も含め、当院にしかない終末期医療を担う責任は大きいと考えます。緩和ケアは全国トップクラスだと自負しています。
170床の重症心身障がい児施設も擁しています。新生児高度医療で多くの命が救われる反面、障がいが残る子も多いため、ここも捨て去ることはできません。
結核病棟は県西部に二つしかなく、当院が合併症がある患者さんを受け持つことですみ分けしています。しかし、もう一つの公的機関が結核病床を返上するかもしれず、役割はさらに増しています。さらにリハビリ病棟も備えています。これらのさまざまな領域は、われわれが覚悟を持ってやるしかないと考えています。
当院は地方都市の街外れにあり、診療圏も広く、その半分を占める北遠地域にとっては、最終医療機関です。独自性を考慮したうえで、今後も地域に必要とされる医療に取り組んでいくつもりです。
―高度医療のための先行投資も進めています。
昨年末、ハイブリッド手術室が完成しました。低侵襲の経カテーテル的大動脈弁置換術を行うのに必須の設備で、今年9月に第1例を実施しました。ステントグラフト内挿術などもより安全に行えるので、導入後に50例ほどの手術に利用しました。
3台保有するMRIのうち普及型の1.5テスラMRIを昨年更新し、同じく放射線治療装置の1台も最新型に入れ替え、10月から稼働させます。
これらは地域の皆さんのためですが、職員のためでもあります。最新の医療を行う施設に勤めることは、意欲向上につながります。
加えて、幅広い医療を展開することも人員確保の強みにしたいと考えています。新専門医制度が始まり、都会志向、大学医局志向はさらに強まっています。当院は独自に医師を集め育ててきました。専門医資格取得期間も残ってもらえるよう、なるべく病院で自己完結できる基幹型の教育システムを整えたいと思っています。
―今後の構想などを。
病院長になり17年目となります。病院のために汗水たらす時期は過ぎ、今は地域全体のことを考えて動いています。
地域医療構想に関しては、西部医療圏では2年前から調整会議が進んでいます。が、みんな総論には賛成でも個々の調整になると難しい現状があります。2025年問題を見据えた在宅医療ネットワーク構築にしても、どこが費用負担してシステムを構築・維持するかなど課題は山積みです。国がナショナルクリニカルデータのようなシステムを示して法制化し、診療報酬の加点がつけば、一気に広がるのでしょうが...。今はさまざまな局面で過渡期です。
来年10月、病院近くに移ってきた県立西部特別支援学校の隣に、アリーナを備えた地域障がい者総合リハビリテーションセンターを完成させる予定です。パラリンピックで障がい者スポーツの気運も高まる中、喜んで使ってもらえたらうれしいです。これも当院らしい仕事だと思っています。
社会福祉法人聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院
静岡県浜松市北区三方原町3453
TEL:053-436-1251(代表)
http://www.seirei.or.jp/mikatahara/