"質"重視でさらなる発展を
救急強化、最新機器導入、連携で転換期に挑む
◎京都西部の高度急性期を担う
私たちの病院は、結核療養所「松尾病院」として、1937(昭和12)年に発足。現在は、社会福祉法人京都社会事業財団に属しています。当初は京都大学から志ある医師が集まり、結核に対する手術も多く実施され、全国から患者さんが集まっていました。
結核患者数の減少に伴い1964(同39)年、総合病院化し「京都桂病院」と改称しましたが、今も呼吸器疾患は得意とする領域の一つです。そのほか、消化器、循環器にも力を入れ、この三つはそれぞれセンター化しています。歯科以外の科はそろった総合病院で、すべての科が高い質の医療を提供していると自負しています。
医療圏は、京都市の西京区 を中心とし、乙訓(向日市・長岡京市・大山崎町) 、右京区、亀岡市まで広がります。西京区からの患者さんが40%ほど。あとの乙訓、右京区、亀岡市が10〜20%ずつになっています。
京都市では、大学病院や赤十字病院などの病院が東側のエリアに集中し、西側では29診療科、585床の当院があります。
府内6カ所ある地域がん診療連携拠点病院の一つであり 、地域医療支援病院 の指定も受けています。地域の基幹病院として高度急性期、急性期を担当する形は、今後も続くと思います。
◎先進的なTQMへの取り組み
当院は長年、医療の質を追求してきました。2005年に、医療の質を担保するTQMセンターを設置。ただ、TQM(TotalQuality Management)という考えはそれ以前から継続しており、委員会、会議を経てセンターになったという歴史があります。
医療安全、感染対策、クリニカルパス、褥瘡(じょくそう)対策などに対して、組織横断的に情報や問題点を共有し、解決策を探ったり、QIを策定して質を測定し改善に結びつけたり、患者・職員満足度調査から課題を見つけて対応することもしています。
また現場でのちょっとしたことから課題を見つけ、自分たちでPDCAサイクルを回し、解決していく。その意識を持つことで医療の質の向上を図ってきました。
私自身、TQMに関しては当初から中心になって関わってきた経緯があります。毎年3月にTQMシンポジウムを開催。今年で10回目を迎えます。
◎最新鋭のリニアック
高精度放射線治療装置(リニアック)として、1年前に「Vero4DRT」、昨年6月には「エレクターVersaHD」を導入しました。
呼吸によってわずかに動く腫瘍も追尾照射でき、Veroはピンポイント、Versaは広域の治療が可能。いずれも国内での導入がまだまだ少ない最新鋭の装置です。
当院はこれまで低侵襲な腹腔鏡・胸腔鏡手術に積極的に取り組んできました。その方針はそのままに、高齢者に負担が少なく治療効果が高い最新の放射線治療装置を加えたことで、より良いがん治療を提供できると考えています。
◎救急への対応力を上げる
本院でさらなる充実が望まれる分野は「脳神経系」です。総合病院として、さらに強化する必要があると考えています。
4月からは、脳神経外科医3人に来ていただく予定です。常勤医4人の神経内科(うち3人は専門医)とともに、脳神経の疾患すべてを診て、血管内治療、手術もできる体制を整えていく計画です。
救急も強化します。京都市内では現在、救急に強い他病院の救急車受け入れ台数が各8000台ほど。当院は約3000台です。一昨年、救急や外傷を専門とする寺坂勇亮医師が、救急初療室長として着任しました。この2年で救急車受け入れ台数が約1000台増加しています。
救急科は、今はまだ医師1人体制です。医師を増やし、充実させていきたい。ER型の救急医療体制を確立させ、最終的には高エネルギー外傷にも対応できるようにしていきたいと思っています。
◎高齢者対応の新病棟へ
当院の建物は、古いものだと築50年経ちます。結核療養所だった歴史から山の斜面にあり、京都特有の高さ制限があって高層の建物が建てられない。そのため建て増しなどを重ね、院内は迷路のようになってしまっています。
そこで、約2年半後をめどに、病棟機能を集約した新病棟を建設。さらにその後、HCU、ICU、SCUを充実させた救急部門と関連部門が入る新棟を造る計画です。
今後、高齢の患者さんや認知機能が低下した患者さんはますます増加するでしょう。新病棟は、高齢者に配慮した造りにする計画で、今は、各部署からのヒアリングを重ねているところです。
◎連携の充実と強化
毎年1月、全職種参加の「行動方針説明会」を開いています。今年の行動方針は「連携の充実と発展」。内部、外部との連携を想定しています。
外部の連携で最も重要なことの一つは、在院日数短縮を目標とした連携です。患者さんの状態が落ち着いたら、あうんの呼吸で受け入れてもらえる病院を増やし、急変など何かあったときには、当院がさっと受け入れる。そんな連携を、もっと密にしていきたいと考えています。
連携病院は現在も多くありますが、1院で受け入れてもらえる数はそれほど多くありません。人工呼吸器が必要となれば、その枠はさらに狭まります。受け入れ先の病院の課題もあるでしょうが、当院としても何ができるか考え、連携の充実と発展に努めたいと考えています。
高齢者・がん患者の増加で口腔ケアが重要になりますので、地域の歯科医師会とも連携を深めています。当院には歯科・口腔外科がありません。地域の歯科医の方が当院に訪問診療にきてくださるようになったり、院内で合同講演会を開いたりと、少しずつつながりがでてきていますが、まだまだ充実させたいですね。
地域の訪問薬剤師向けの研修会を院内で開いています。近隣の高齢者向け施設からはバックアップの依頼が来ています。今後、院外のさまざまな職種、分野の人との連携を一層強くしていこうと思っています。
内部連携という意味では、同じ法人で急性期と回復期を担っている「西陣病院」(京都市上京区)との連携もさらに強めていきたいと考えています。距離的には少し離れていますが、今後は、循環器疾患や脳外科疾患で緊急性が高い患者さんは、当院に送っていただくことなどをお願いしたいと思います。
◎トップダウン+ボトムアップで
来年の行動方針からは、トップダウンに加えてボトムアップの部分も増やそうと考えています。
バランススコアカードを利用し、4〜5個の視点を持ちながら、職員みんなに課題を考えてもらうつもりで、2月には幹部を集め来年度に向けて病院課題に対するワークショップを開催しました。今年11月ごろ、このような機会を設け、来年の行動方針には職員みんなで考えたことを反映したいと思います。
◎小児がん患者、白血病患者の治療にやりがい
未来を担う若い人を診たい、と小児科医になりました。白血病が非常によく治る疾患となってきた時期とも重なって、やりがいを感じ、大学院でも血液腫瘍を専攻。本院でも造血幹細胞移植も含め白血病児の治療に取り組んできました。充実した日々でしたね。