改革を進めた10年 現状に甘んじずその先へ!
院長として「もっと良い病院づくり」に奔走した期間を「改革の10年だった」と振り返る浅利正二氏。今年8月からは名誉院長となり、新たな視点で病院の発展を支えていく。
―2009年以降の10年間で進めてきた主な改革は。
人口減少、超高齢社会の到来、医療費の高騰。日本が直面している状況が医療機関に与えるインパクトは大きく、私は「どのような変化にも耐えうる新たな体制を構築しなければ」と考えました。
当院が、地域包括ケアシステムの中核病院へと成長していくためには何が必要だろうか。大きくは療養環境と職場環境のさらなる向上。患者さんと職員の双方にとって「もっと良い病院」を目指すことが重要だと思いました。
そこでスタートさせたのが大胆な発想の転換による「もっともっと改革」。第1の改革は費用対効果に基づいた組織再編による「安定した経営基盤の構築」です。外来診療は内科や脳外科などを廃止し、「リハビリテーション科」のみにしました。当院が有する人、その勤務時間、空間など資源のすべてを病棟業務に注ぎ込むことにしたのです。
職員の役割分担が進み一人一人の負担が軽減。業務に対する集中力やモチベーションが増し、回復期リハビリテーション病棟の質向上につながりました。
第2の改革は「PFMS」。入院患者さんの情報を事前に把握、共有しスムーズな退院を目指す「PFM(Patient Flow Management )」の、いわば「倉リハ」版。「S」は「システム」です。
入院前、入院中、そして退院後までの一連の支援体制を明確に整理。職種別に、それぞれがどんな役割を担うのか、誰もが把握できるようフロー図として可視化しました。患者さんの紹介から受け入れまでの期間が平均1週間以内に短縮化されるなど、病棟運用の効率化が促進されました。
―三つめは。
第3の改革は、より「上質なチーム医療」を目指したチーム制の導入です。職種ごとの「タテ」の体制から、患者さんの状態に合わせて最適なリハビリテーションを提供する「ヨコ」のチーム制としました。部門ごとの専門性は従来と同様に生かしつつ、多職種のかかわりが増えることで、新たな刺激や視点を得てもらいたいというのがねらいです。
職員が一丸となって力を尽くせるよう、常に短期目標を定め、同時に中・長期目標を意識することを心がけました。一つの成果が、日本医療機能評価機構による病院機能評価だと思います。1999年に開院して以降、受審は計7回。昨年の7回目の受審では、評価項目のうち「95.3%」がSまたはA評価でした。
私が考える医療の3本柱とは「実績」「安全・感染症対策」「接遇」です。医療の選択肢が広がり、患者さんの要望も多岐にわたっている今、特に「接遇」はますます重要な要素となっているように思います。
どのようなときも患者さんやご家族の思いをくみ取った医療、行動を忘れないようにしたいと思っています。それこそ身だしなみやあいさつ、傾聴といったごく基本的なことの徹底が大切だと感じています。
―今後は。
リハビリテーションとケアにおける第一線の病院として、良質な医療の提供を維持していきます。現状で満足してしまうのではなく、医療者は絶え間ない向上心をもつ「学究の徒」でもあるべきではないかと思います。自己研さんのために大学院に通う、資格の取得を目指すなど、自分を高める意欲にあふれた職員は、病院としてのサポートも惜しみません。
これまで継続してきたさまざまな取り組みが、新院長の塚本芳久先生らによりさらに発展していくことを期待しています。私はサポート役として、当院の機能を最大限に引き出し、地域に還元していく方法を探りたいと思っています。
社会医療法人水和会 倉敷リハビリテーション病院
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