多様な法人の機能をより強固に連携させたい
名古屋市南部で高度急性期病院「大同病院」やクリニック、介護老人保健施設などを運営する社会医療法人宏潤会。4月に着任した宇野雄祐理事長は「地域のために、法人が有する各機能の一層の底上げを目指したい」と語る。
―宏潤会の中心を担う「大同病院」の特徴は。
大同病院の設立は1939年。およそ80年の歴史を重ねてきた中で、この地域の急性期医療を担い、発展してきました。
現在のような高度急性期病院へと方向性を定めたのは2003年ごろ。多くの医療機関が、時代に即した医療を提供するための取り組みに力を入れ始めた時期です。当院としても明確な方針を打ち出すべく、機能強化を図りました。
2004年に就任した吉川公章前理事長は「急性期医療は医療の根源」という信念を持ち、設備投資などを積極的に進めました。新棟開設、ICUの増設、最新のCT機器の導入、放射線治療機器の設置などによって、特色ある病院づくりに努めました。
また、この10年間で医師を大幅に増員し、外科の全身麻酔手術数は、がんに対する手術を中心に年々実績を伸ばしています。「地域に高度急性期医療を提供し続ける」。それを第一のミッションとしたのです。
―次の展開として考えていることは。
地域包括ケアシステムの構築を、法人全体で支えていくことです。1989年開設の介護老人保健施設をはじめ、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所など、段階的に事業を拡大することで、その下地を整えてきました。
昨年、「だいどうクリニック」の在宅診療部による訪問診療もスタートしました。大同病院では小児科医による重症心身障害児の在宅医療に長く取り組んできましたので、そのノウハウを生かし、サポートの幅を成人に広げたのです。
人工呼吸器を装着した患者さんなど、医療依存度の高い方を主な対象としています。今後はがん、非がんを含め終末期の患者さんの訪問診療を強化します。
宏潤会の多様な機能をつなぎ、これからの地域に必要な医療サービスを切れ目なく提供していきたいと考えています。
―地域連携は。
患者さんが地域で安心して暮らすためには、地域内での情報共有が最も重要ではないでしょうか。
診療情報を共有するために、当法人が活用していたクラウド型の情報共有システム「IDリンク」を他の医療機関との連携にうまく取り込めないかと発想しました。
例えば、休日や夜間の当直医がいても、専門診療科の医師が患者さんをすぐに診察できない時があります。IDリンクのシステムを使えば、医師はその場にいなくともタブレット端末を通じて画像データなどを迅速に確認し、対応を指示することができるのです。
また、ここ名古屋市南区、緑区、東海市の医療・介護施設が集まりさまざまな課題を解決しようと「医療連携協力事業」を設立しました。現在、13法人、24施設が診療情報の共有化と診療機能の協力を進めています。
この事業では看護、事務といった分科会の活動も活発です。自分たちだけでは解決できない課題であっても、定期的に多職種が顔を合わせて話すことで解決策が見つかることもあります。
―その他の取り組みは。
昨秋、当法人では電子カルテシステムを更新し、今年3月には、リスクを未然に防ぐための新たな機能も加えました。
例えば放射線科医による「がんの疑いあり」といった記載を主治医が見逃さないように知らせ、未読の場合は他の職員の端末にもアラートが表示されます。
今後もITシステムの活用などさまざまな仕組みを取り入れ、医療の質を向上させたいと考えています。
社会医療法人宏潤会 大同病院
名古屋市南区白水町9
TEL:052-611-6261(代表)
http://www.daidohp.or.jp/