地域を支える医療と高度な専門性を両輪に
2014年に運営母体が独立行政法人地域医療機能推進機構に移行し、病院名を京都鞍馬口医療センターに改称。昨年就任した島崎千尋院長は、地域医療を支える病院であると同時に、専門性の高い医療を提供することで病院運営の柱にしたいと考えている。
―地域での役割など。
京都市北区唯一の救急病院として、地域の中核病院の役割を担っています。
「断らない病院」という姿勢を大切にして救急の充実を図っています。増加する循環器疾患に対応するため、循環器内科では24時間PCI(経皮的冠動脈インターベンション)治療が可能な体制を整えています。
急性期医療が中心ですが地域の医療ニーズに合わせて、2016年に地域包括ケア病棟を開設。急性期後の患者さんが在宅へ戻るための、スムーズな流れを構築しています。
北区の場合、高齢化率は28.5%。京都市全体の高齢化率(27.5%)を若干ですが上回っています。
当院は1996年から訪問看護に取り組んでおり、近年、そのニーズがますます増加。2016年10月に「訪問看護ステーションくらまぐち」を設置しました。在宅の暮らしも支えることで、地域でのシームレスな連携を確立しています。
―力を入れていることは。
急性期医療の中でも、他の病院にはない強みを持つことが重要だと考えます。
当院の特徴は血液内科、整形外科です。現在、血液内科には私も含めて6人の常勤医師がいます。私は2009年に着任し、以来、造血器腫瘍の治療に力を入れてきました。
2011年以降は移植認定施設として、年間20例以上の造血幹細胞移植(非血縁者間骨髄移植・末梢血移植・さい帯血移植)を実施しています。京都府においては京都大学医学部附属病院に次いで、2番目の移植症例数です。
また、多発性骨髄腫やその類縁疾患であるアミロイドーシスの治療、研究に関しては全国的にも高い知名度があります。アミロイドーシスはアミロイドタンパクが全身の臓器に沈着する特定疾患(難病)です。血液内科ではこれらの疾患の臨床試験にも多数参加しています。
新薬の治験においても、医療の進歩に貢献するべく、第2相試験や第3相国際共同試験に参加しています。
整形外科は、スポーツ整形を中心に力を入れています。2017年度の手術件数は623例でした。
手術の内容は内視鏡手術が中心で膝、肩、肘関節など多岐に渡ります。中でも、靭帯(じんたい)再建・形成術の割合は高く、168例を実施。単独の施設の年間手術件数としては、全国的にも上位の実績です。
こうした症例を積み重ねてきた結果、プロのスポーツ選手などトップアスリートを含めて、全国各地から患者さんがお越しになっています。
2010年のバンクーバーオリンピックでは、当院で膝靭帯再建術を受けた選手がメダリストになるという快挙もありました。これは手術だけでなく、理学療法士による質の高いリハビリテーションも大きく貢献していると思います。
リハビリの質が上がることは整形外科領域だけでなく、他の分野にも好影響を及ぼしています。がんリハビリでは、造血幹細胞移植後、無菌室でのリハビリにも取り組んでいます。
―今後の課題は。
高齢化が進行し、地域の医療の課題が増していると感じています。高齢者の場合、急性期を終えても身体機能が低下し在宅へ戻ることが難しいケースも少なくありません。また、在宅を推進する中で、地域の在宅医療を担う人材がまだ十分ではないと感じます。
さまざまな地域の課題を解決するためにも、開業医の先生方や医師会、行政などとの話し合いを進めながら、連携して取り組んでいきたいと考えています。
独立行政法人地域医療機能推進機構 京都鞍馬口医療センター
京都市北区小山下総町27
TEL:075-441-6101(代表)
https://kyoto.jcho.go.jp/