政令指定都市の中の"旧郡部"中核病院として
1976年北里大学卒業。国立長崎中央病院での研修後、長崎県離島医療圏組合病院勤務を経て、1986年北里大学外科に入局。1998年学位取得(医学博士)。北里大学メディカルセンター病院外科部長、同病院長などを経て、2013年津久井赤十字病院(現:相模原赤十字病院)院長。
救急病院としての使命を負う、相模原赤十字病院。旧津久井郡の数少ない病院の一つとして、急性期医療の維持、災害救護派遣、医療従事者の育成など、さまざまな役割を持つ。この地域で奮闘する八十川要平院長に話を聞いた。
―病院の特色について。
当院は132床と小規模ではありますが、神奈川県相模原市緑区では唯一の急性期病院です。当院は、診療・災害救護・健康増進・教育の四つの活動を基本方針としています。
まずは診療についてですが、当院は小規模の割に、診療体制は非常に充実しています。看護体制は7対1をとっていますし、医療機器及び医療技術も最新鋭のものを取り入れています。
また赤十字の一員として、災害救護にも積極的に取り組んでいます。最近では西日本豪雨で被害を受けた広島県呉市にも救護班を派遣しました。災害時派遣医療チームDMATを設けているのは、この規模の病院としては珍しいのではないかと思います。県内でも数少ない災害拠点病院ということもあって、地下には備蓄倉庫を擁すなど、緊急時の避難所となるような設計がされているのも特徴です。
健康増進の面では、まずはもちろん人間ドックや健康相談を積極的に行っていますが、それ以外には訪問看護を大きな軸としています。およそ650人の患者さんを4人のスタッフで年間約3000回訪問しており、移動距離があるこの地域にしてはまずまずの数字ではないでしょうか。
スタッフの教育にも力を入れています。各種学会の専門医を取れるような施設認定も取っていますし、スタッフにはプライマリ・ケアの認定試験も積極的に受けさせています。私自身も色々と資格を取りました。それぞれが個々の技術を高めて、組織のレベルアップに努めています。
―相模原医療圏における貴院の役割は。
当院は、相模原市緑区・中央区・南区の三つの区を担っています。当院の位置する緑区は川崎市と同じくらいの広さでありながらも、人口はそのおよそ20分の1で、開業医も非常に少ない地域です。当院から5km圏内には病院が1軒もありません。政令指定都市にありながら僻地である、とでも言いましょうか。だからこそ病院間で連携を取ることが重要です。
地域医療の調整をどうすべきかの話し合いも進めながら、例えば近隣の病院では扱わない急性期の患者さんや複雑な手術は当院が重点的に受け持つ、といった機能分担をしています。この地域で起こった救急は私たちのところで食い止めようではないか、という気持ちです。
―院長就任から5年です。今後の展望は。
当院もまさにそうですが、首都圏で東京のサテライトになるような関東地域は医師不足に非常に悩まされています。そうした背景もあって、当院は地域医療の担い手となる医療従事者の育成に、かなり力を入れています。医師の数が少ない分、個々の能力を上げていくしかないのです。
また、私はここに来る以前は離島での医療に10年ほど従事したこともありますので、そうした経験を若い人に伝えていきたいとも思っています。
看護師についても「丸腰のナースになるな」というスローガンを掲げ、認定看護師や管理者研修など、さらに上の段階を目指すよう指導しています。看護師の確保も同様に難しい地域なのですが、もともと福利厚生がしっかりしていて年休取得率が高かったところに、さらにキャリアアップ支援を積極的に実施したことで、就任当時は13%だった離職率が現在は7%ほどで推移しています。
スタッフ確保は非常に難しい問題ではありますが、7対1の看護体制を維持しながら、より質の高い急性期医療の提供に努めたいと考えています。
相模原赤十字病院
神奈川県相模原市緑区中野256
TEL:042-784-1101(代表)
http://www.sagamihara.jrc.or.jp/