循環器疾患を中心に幅広い医療を提供
1981年、自治体立では国内初の循環器専門病院として開設された姫路循環器病センター。心臓血管、脳血管の疾患を軸に、認知症や糖尿病の診療、救命救急にも力を注ぐ。
◎成人循環器疾患のあらゆる分野を
循環器内科と心臓血管外科では、虚血性心疾患、弁膜症、不整脈、心不全、成人先天性心疾患、および大動脈瘤(りゅう)など成人循環器疾患のあらゆる分野をカバーしています。2014年にはハイブリッド手術室が本格稼働し、大動脈弁狭窄(きょうさく)症に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の症例数も大きく伸びています。
脳梗塞に対する血栓溶解剤(t-PA)の静脈投与の治療適応が、発症3時間以内から4・5時間以内へと拡大されました。しかしt-PA製剤を投与しても血栓が十分に除去できない場合もあります。
その場合、当センターではカテーテルを用いた血栓回収や溶解療法を積極的に施行しています。この血管内治療は脳神経外科が担当し、診断およびt-PA治療を実施する神経内科と密な連携をとっています。
◎その人らしさを尊重
2002年、同じ敷地内にあった「高齢者脳機能研究センター」を統合したのをきっかけに、認知症の診療を開始しました。
2011年からは中播磨認知症疾患医療センターとして、地域包括支援センターへの訪問調査、認知症サロンや医師会の認知症連携パスなどに参加しています。また地域住民への啓発のための研修会や市民公開講座も開催しています。
認知症ケアにおいては、その人らしさを尊重することを重視しなければなりません。認知症行動・心理症状を「問題行動」だと捉えるのではなく、例えば「その人の心の表現や脳の変化に基づいているのだ」というように、必ず「理由がある行動」だと解釈することが求められる。そのためには、治療だけでなく、社会の理解が重要だと考えています。
◎Ⅰ型糖尿病にも対応
循環器に関わる合併症を起こすリスクが高い病気に「糖尿病」があります。そこで2014年、糖尿病センターをオープン。現在専門医3人、研修医2人の5人体制です。
糖尿病には、Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病があります。Ⅰ型は、膵臓にあるβ細胞が破壊されることでインスリンがほとんど出なくなることが多く、患者数は糖尿病全体の約5%。Ⅱ型は遺伝や生活習慣などの影響でインスリンが出にくくなったり効きにくくなったりします。
原因も治療法も異なる二つの糖尿病の患者の比率は大きく異なります。Ⅱ型は治療できる施設が比較的多いのですが、Ⅰ型糖尿病を治療できる施設は中・西播磨地区で当センターが唯一です。
◎地域の救急を担う
中・西播磨地区の三次救急を担っている病院は、現在、当センターと製鉄記念広畑病院。製鉄記念広畑病院に救命救急センターができる2013年までは、主に循環器疾患と脳卒中を当院が担当し、それ以外の重篤な患者さんは近隣医療圏で受け入れてもらっていました。
今は、循環器が強い当センターと、ER型救命救急センターがある製鉄記念広畑病院が相互に連携し、お互いの強みを生かして地域の救急を支えています。
◎循環器疾患患者の最期をみる
循環器内科では心不全の緩和ケアを地域と連携して提供しています。全国的に、少しずつ始めるところが出ていますが、まだ珍しい取り組みだと言えるでしょう。
心不全は心筋梗塞や心筋症など、あらゆる循環器疾患の末期像とも言われます。診療は急性増悪時の入院加療が主体だと思われがちですが、慢性時、在宅での日常的な経過観察も必要です。
心不全の緩和ケアでは、地域の医療者と連携を図り、患者さんの症状を安定・維持させることに注力。在宅患者さんの回診や看取りなどをしています。
◎新病院で再スタートを
2022年のゴールデンウイーク明けを目安に製鉄記念広畑病院と統合。新病院を新たな場所に開設する予定です。
新たな病院はJR姫路駅から700mほど東の場所、敷地面積は約3ヘクタールを予定。免震構造の建物で736床。屋上にはヘリポートも設置する計画です。
国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」によると、中・西播磨医療圏は今後、患者数が増加する見込みで、特に循環器疾患、呼吸器疾患の患者は大幅に増えると予想されています。
がん診療を得意とする製鉄記念広畑病院との統合は、医療需要に応じた体制強化とも言えます。両方の強みを生かした病院になることができるのです。
中・西播磨医療圏の医師数は10万人当たり175.85人。全国平均(10万人当たり233.6人)、県の平均(同232.1人)を下回っています。
統合を機に、教育・研修機能を強化し、若手医師が定着するような魅力ある病院づくりをしていきたいと思っています。
新病院はJR姫路駅前にできます。そのアクセスの良さも医師定着を後押ししてくれるのではないかと期待しています。
◎未来の医療者に
兵庫県は、県下の中学生に職場体験、福祉体験、勤労生産活動など、さまざまな体験活動を通じて、働くことの意義や楽しさを実感してもらう取り組み「トライやる・ウィーク」を続けています。
当センターにも今年、地元の中学生が職業体験に来ました。病院の概要説明を受けた後、白衣に着替えて各部署の業務を見学、看護体験などをしました。
職業体験をした生徒が医療に興味を持ち、将来、当センターで働いてくれるようになればと思っています。
◎情報を伝える
私が日々感じている事柄を職員に伝えたいとの思いで月に2度、「明日に向かって」という院内報を発行しています。今は、全医師、看護部幹部、師長、その他幹部職員にメール配信していますが、今後は全職員対象に配信していくことを考えています。
病院の今後のあり方といったテーマから、先日行った上海の様子をまとめたレポート、最近読んだ本のことなどテーマはさまざまです。
それを読んだ職員が私の考えに共鳴し、それがより良い病院づくりにつながっていったらうれしいですね。
1月に地域の開業医の先生方に向けた冊子「未来に向かって」を制作しました。A4サイズ、180ページ。各診療科医師による診療内容の紹介などが書かれ、絵が得意な看護師がイラストを描くなど、印刷以外はすべて職員が担当しました。温かい当院の雰囲気が伝わる冊子になったと感じています。
兵庫県立姫路循環器病センター
兵庫県姫路市西庄甲520
TEL:079-293-3131(代表)
http://www.hbhc.jp/