国保水俣市立総合医療センター 丸山英樹 院長

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県境の病院はどうやって生き残るのか
第2回県境病院サミット(不知火サミット)を開催。県を超えた情報共有を提言

白陵高校卒業 1980 熊本大学医学部卒業 1981 熊本大学医学部附属病院 体質医学研究所成人体質学研究部(体研成人科) 1982 水俣市立病院(現・国保水俣市立総合医療センター)循環器科 2008国保水俣市立総合医療センター副院長 2015 同センター院長

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◎県境の病院の未来

 水俣地方は熊本県と鹿児島県の県境にあり、文化圏としては熊本よりも鹿児島文化圏に入ります。住民のみなさんは日本酒より芋焼酎を好みますし、言葉も鹿児島の方言に近いようです。

 「県境」にある水俣市は、県内にある11の2次医療圏の中で最小の、芦北医療圏に属します。人口は水俣市が約2万7千人、全体でも約4万人の小さな医療圏です。

 当センターの病床は401床ですが、現在の人口を基準にすると多すぎるかもしれません。ただ、ここは県境という、ある意味では特殊な地域です。たとえば、当センターは県境を接する出水市や伊佐市も含めた地域の医療の中心になるのです。

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DMAT 隊を3チーム置く。県内で初めて、交通災害や自然災害発生時の病院搬送困難事例に対し、消防署の要請で災害時現場救急医療出動車を出動させる協定を県と結んだ

 両市の中核病院がさまざまな事情で十分に機能を発揮できなかったという事情もありますが、現在でも2割から3割程度が鹿児島県の患者さんです。そういう事情を勘案すれば、現状の病床数は妥当ではないかと考えています。

 地域医療構想においては必要病床数を届け出ることになっていますが、その際に基準となるのは2次医療圏の人口です。

当然、他県の患者さんをカウントすることはできませんので、その基準に沿うなら当センターの病床数は半分程度まで減らされてしまうでしょう。

 そうなると、この地域の救急医療体制が崩れてしまいます。そこで、前院長が「県境病院については事情をくんでほしい」と厚労省に対応をはたらきかけました。

◎県境病院サミット

 医療と介護など多施設連携を進めるために、県が「くまもとメディカルネットワーク」を構築しました。まだ患者さんの登録が進んでいませんが、県内の登録者600人のうち500人が当センターで登録しました。登録者をもっと増やして、少なくとも地域のネットワークを作り、それを土台にして県全体に広げていきたいですね。

 今後も総合病院としてのスタンスは崩したくありませんし、急性期病院として生き残るためになにが必要か、試行錯誤しているところです。

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今年2月9日、同センターで開かれた「第2回県境病院サミット」。県内外9機関の医師や看護師約30 人が集まり、意見交換した/参加機関=橋本市民病院(和歌山県)、荒尾市民病院(熊本県)、小国公立病院(同)、上天草総合病院(同)、公立多良木病院(同)、国保水俣市立総合医療センター(同)、水俣保健所(同)、小林市立病院(宮崎県)、出水総合医療センター(鹿児島県)

 たとえば、10年後のこの医療圏の姿について、すでに試算がされています。厚労省の試算によれば、この地域は高度救急も合わせて200床程度で十分ということになっています。

 その数字を前にして、どう生き残るのか。今年から外部評価も導入し、日本経営などの経営コンサルタント会社が内部のヒアリングを始めているところです。

 県境病院というカテゴリーでくくれば、全国には同じような問題に直面している病院がいくつかあります。たまたま、前院長が全国自治体病院会で県境病院の話をした際に、大阪府と奈良県に接している和歌山県の橋本市民病院が「うちもそうだ」と手をあげてくれました。それがきっかけで院長と事務長が当センターを見学した際、「県境の病院だけで話し合いをしてみないか」という構想が出ました。

 2014年に橋本市民病院で開催された話し合いは「高野山サミット」と名付けられ、熊本県から6病院、和歌山と奈良から3病院が集まりました。第2回は今年2月に当センターで開催され、不知火海にちなんで「不知火サミット」と呼んでいます。3回目は荒尾で「有明サミット」でもや

 県境にある病院はどこも似たような課題を抱えていて、要するに県を越えると事務手続きを含めて多くの面で複雑になるという点で一致しています。県をまたいだ病院同士のつながりをどう構築するのか、今後はサミットでの議論をもとに国に改善を要求していくことになるでしょう。

◎協力関係の構築

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 救急車の年間搬送数は1200~1400台で、年間約8000人の救急患者さんを受け入れています。民間病院と輪番制をとってはいますが、95%を当センターが担当しています。

 かつては出水市の救急車で運ばれた患者さんを県境で水俣市の救急車に移し替えるなどの非合理なことが行われていました。現在は出水市や伊佐市の消防隊に協力していただき、スムーズにこちらに搬送されています。

 協力体制が実現したのは、年に1度開かれる地域連携懇話会の存在が大きいと思います。懇話会には、医師会、歯科医師会、薬剤師会、各病院のメディカルスタッフと消防隊など約250人が集まり、顔の見える関係を作り上げました。鹿児島県の消防隊も含め、行政の方も参加します。

 こういったことが評価されたのか、2014年に自治体立優良病院として全国自治体病院協議会から表彰され、15年には優良病院として総務大臣表彰を受けました。

 日本では受診したい病院を患者さんが自分で決めることができます。受診先を医療圏で限定し、県をまたげないなどの囲いをするのはそもそもおかしいと思います。

 県境のラインをひくことで生命の重さが変わるようなことがあってはなりません。県境の病院だから見えてくることを訴えていくしかないんだろうと思います。

国保水俣市立総合医療センター
熊本県水俣市天神町1 丁目2番1号
TEL:0966-63-2101(代表)
http://minamata-hp.jp

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