トヨタ記念病院 岩瀬 三紀 病院長

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「カイゼン」精神で先を見据えて突き進む

【いわせ・みつのり】 1983 名古屋大学医学部卒業トヨタ記念病院研修医 1991 名古屋大学医学部非常勤医員 1993 米ハーバード大学霊長類研究所心臓血管部門留学 1998 名古屋大学医学部助教授 2004 同臨床教授 2009 トヨタ記念病院副院長 2013 同病院長

 トヨタ自動車の「カイゼン」精神が救急医療現場にも脈々と流れるトヨタ記念病院。地域における中核病院の役割を担う。岩瀬病院長の考える救急医療のあり方とは―。

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◎進化する「ERトヨタ」

 当院は1938年にトヨタ自動車工場内に開設された診療所に端を発します。1987年には、トヨタ自動車創立50周年事業の一環として現在の平和町に新築移転。513床に増床し、名称を現在のトヨタ記念病院としました。当院は企業立病院ですが、トヨタの健保組合の患者は今では約2割となっており、地域の方々に幅広く利用していただいています。

 西三河医療圏において、当院は急性期医療を専門的に行う第三次救急施設です。豊田厚生病院と連携し、24時間救急医療にあたっています。小児患者の救急搬送を両院で輪番制とし、「救急車を断らない」という伝統をともに守り続けています。

 救急者の受け入れ台数は年間約8000台で、ここ15年で倍増。また、年間の救急搬送患者数は約3万5000人です。当院は救命救急センターであり、救急外来の名称を「ERトヨタ」としています。北米型ERシステムを採用。すべての科の診断および初期治療を行い、必要があれば各科にコンサルトする体制です。軽症患者から重症患者まですべての患者を受け入れています。

 集中治療室にはICU、HCU、救急一時室を設置し、患者の容態に合わせて対応します。

 この「ERトヨタ」にも、トヨタウェイと呼ばれる方式を取り入れています。トヨタウェイというのは、「知恵と改善」、「人間性尊重」の二つを柱としています。常に現状に満足することなく、より高い付加価値を求めて知恵を絞り続けること。あらゆるステークホルダーを尊重し、従業員の成長を会社の成果に結びつけることを意味します。それを救急医療現場にも生かしています。

 電子カルテ上に当直日誌をERのドクターのみならず研修医や多職種にも書いてもらい、私や副院長が迅速にレスポンスします。まずは問題提起してもらうことが大切だと考えています。

 私たち経営陣の返答に対して、ERチームでのディスカッションでカイゼンしてもらいます。すぐに答えが出ない場合はER改善会議、救急委員会でさらに検討します。

 また、私は毎週木曜日に総看護長とERを実際に自分の目で見て状況を把握するよう努めています。現地現物で空気や人を感じた上で問題点を明確化し、改善に向けて努力する。これはトヨタの「カイゼン」の精神にもつながります。

 当院の研修医教育はERを軸としています。2年間の研修期間のうちの4カ月、救急医療やトリアージについてはもちろんですが、小児医療も含めた全身の疾患とその治療について、実践レベルの教育を受けます。

 2004年の開設以来、フルマッチングを続けています。現在、研修医は1年目、2年目ともに16人在籍しています。毎年フレッシュな顔ぶれが来てくれることは、病院全体の活力にもつながっています。

◎災害を想定して

 当院は2007年に災害拠点病院としての指定を受け、南海トラフ地震などが起こることを想定した訓練、体制作りに取り組んでいます。有事の際は、3日間医療機能を維持できます。

 愛知県でも、この地域は海に面していない場所にあり、津波などによる被害は少ないと考えられます。そこで、災害が起こった際は、当院は被害のあった地域の病院をバックアップしなければなりません。豊田厚生病院などと連携を図り、しっかり対応したいと思います。

 DMATは2隊編成しています。東日本大震災、熊本地震の際にも派遣し、支援活動にあたりました。現在3隊目を編成中で新しいメンバーが講習会に行く予定となっています。当院の隊員はもうすぐ世代交代の時期。後進の育成に力を入れなければなりません。

 また、当院は3年後の建て替えを計画しており新病院は免震構造を採用する予定です。

◎地域連携を推進

 救急医療を充実させるためにも、地域における医療連携は必須です。当院は2017年に地域医療支援病院として承認されました。従来の「病院完結型」による医療から、「地域完結型」の医療体制の構築を目指しています。

 当院は地域完結型医療の中心的役割を担うべく、診療所、クリニックでは対応が困難な専門的な治療や、高度な検査、手術を実施しています。

 2015年に集中的に放射線を腫瘍に照射する定位放射線治療専用装置「サイバーナイフM6」を日本で初めて導入。今年2月に精度の高い放射線治療が可能な高精度放射線治療装置「TrueBeam」も導入しました。

 化学療法に関してもさらに充実させ、4月には、化学療法を専門とするドクターが赴任します。がん診療の最新機器を当地域の多くの住民に利用していただき、地域医療に貢献し続けたいと思います。

 地域の方に円滑な医療を提供するために、かかりつけ医や地域の医療福祉施設、近隣の病院との連携、絶え間ないカイゼンを図ります。効率的な役割分担を進めるためにも、医療従事者同士がもっと情報交換をする場をつくりたいと考えています。

◎「カイゼン」の精神

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 当院の母体であるトヨタ自動車は社会貢献を使命としています。患者さんの笑顔を第一に考え、これからも「トヨタらしさ」を病院に取り入れていきます。そして、その根底にある「人間力」を鍛えることが最も大切なことだと思っています。

 トヨタウェイを実践する上で、「人」にスポットをあてた病院を創るために、基盤となる「人間力」をどのように引き出していくかは私の大切な仕事の一つです。鍛える側も鍛えられる側も、お互いを尊重し、興味を持ち合う職場環境作りに努めたいと思います。スタッフが持続的に成長すること。それが「トヨタらしさ」にもつながります。

 リーダーとなる人たちの方向性を明確にすることも重要だと考えています。リーダー研修では、職場のアンケート調査を基に、病院の将来についてディスカッションしています。リーダーを鍛えることは、後進の育成にもつながります。

 メディカルスタッフの教育にも力を入れています。医療のTQM推進協議会が毎年行っている「医療の改善活動」全国大会で、2017年は当院のスタッフが発表した3演題が優秀賞に選ばれました。多職種のスタッフが医療の質の向上だけでなく、経営的課題に対しても組織的に取り組むことが大切だと考えています。

 救急医療に関しては、今後もさらなる体制強化に励みたいと考えています。超高齢社会である現在、搬送されてくる救急患者は多種の病気を併存し、その割合は確実に高くなりつつあります。今まで以上に救急と各科の連携が重要です。

 その橋渡し役となる総合内科の充実がますます大切になってきます。お互いが尊重し合えるチーム医療を目指すことが、救急医療の発展につながると考えています。

 また、手術治療のカイゼンに必須である麻酔科医の増員に取り組んでいます。より高度な急性期医療を提供するためには、麻酔科医の充実は欠かせません。

 現状に満足することなく、常に一歩先を見据えて行動していく。それが、患者さんに笑顔を提供する医療の「カイゼン」につながる原動力と考えています。

トヨタ記念病院
愛知県豊田市平和町1-1
TEL:0565-28-0100(代表)
https://www.toyota-mh.jp/


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