地方再生をけん引する連携の軸になりたい
9月、高松市民病院と香川診療所が統合。「高松市立みんなの病院」として新たなスタートを切った。「高松市新病院基本構想」(2009年)で目指した2014年の開院はならなかったが、そのぶん時間をかけて、「地域の軸」として根付いていくための方向性を練り上げた。
―オープン後、どのような感触を得ていますか。
旧病院が立地していた宮脇町から南へおよそ8kmの場所、仏生山町に移りました。高松市南部の患者さんも多く来院されるようになったことで、外来、入院ともに増加傾向にあります。
ここ仏生山地区では、国が選定した「地方再生コンパクトシティ」のモデル都市の一つである高松市が掲げる、「多核連携コンパクト・エコシティ」の整備が進められています。
当院と連携した「災害に強い町づくり」を計画の中心に据え、住民の生活の質向上、地域活性化を目指しています。
その象徴とも言えるのが1階、正面玄関の脇に設けた「みんなのホール」。200人を収容することができ、地域の開業医向けセミナーやカンファレンス、市民公開講座などを開き、情報共有・発信の拠点として活用していきます。
地域を守っていくためには、それぞれの医療機関が機能に応じた役割を果たし協力体制を築いていくことが不可欠です。
新病院では48床の地域包括ケア病棟を整備しました。また、入退院支援、在宅復帰や福祉関係の相談など、地域包括ケアの支援機能を「地域医療・患者支援センター」が一元的に管理しています。
―診療機能の強化のポイントは。
急性期医療を引き続き担いつつ、がん医療と救急医療を新たな柱としました。
PET-CTやリニアックなど最新鋭の医療機器を導入し、精度の高い診断と治療が可能になりました。また、4床の緩和ケア病床は家族の方も寝泊まりできる空間を確保。貴重な時間を充実したものにできるよう努めています。
救急部門には、新たに15床の「救急病棟」を設置しました。病室のドアに厚みを持たせるなど、身体合併症のある精神科疾患の患者さんにも対応しています。
救急病棟のスムーズな運用にも配慮しました。夜間に救急科を受診し、容体が安定しない患者さんについては一時的に入院していただきます。翌朝の状況によって各診療科の病棟、あるいはHCUで受け入れます。
―災害への備えは。
高松空港は、四国に4カ所ある空港の中で唯一高台に位置しています。南海トラフ地震の発生など、津波の被害が広域に及ぶことが想定される有事には、重要な役割を担うことが期待されています。
当院は、高松空港から最も近い総合病院です。屋上にヘリポートを設置し、もしもの事態を想定して定期的に発着訓練や患者搬送訓練に取り組んでいます。
昨年5月、DMATを1チーム編成しました。新病院が開院したタイミングで、災害拠点病院の指定を受けることができました。
院内の構造も災害時の混乱を最小限にとどめられる設計です。エントランスの空間や廊下の幅を広くしているほか、地震が発生した際には「みんなのホール」へと患者さんを安全に誘導できる動線としました。今後、地域規模での災害対策訓練なども計画できればと考えています。
―地域の期待も大きい。
開院式及び内覧会には2400人もの方々が集まってくださいました。当院に求められているものの大きさを感じています。
基本方針の一つとしても示しているとおり、当院が重視しているのは「ファインチームワーク」。これは院内だけのキーワードではありません。患者さんや地域の方と一緒に歩んでいける病院を築く。その実現に力を注いでいきます。
高松市立みんなの病院
高松市仏生山町甲847-1
TEL:087-813-7171(代表)
http://www.takamatsu-municipal-hospital.jp/