兵庫県立がんセンターは、財団法人兵庫県がんセンターの附属病院として1962年に発足。県内がん医療の中枢に位置づけられ、2007年に都道府県がん診療連携拠点病院に指定された。
稼働病床数は397床。がん登録数は西日本で首位、全国でもトップクラスの水準を維持している。
※がん診療連携拠点病院=全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、都道府県型の49病院を含め、全国にがん診療連携拠点病院を399箇所(2016年4月1日現在)指定し、専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、がん患者に対する相談支援及び情報提供等を行っている。
全県統一型の「がん地域連携パス」を実現
当センターは兵庫県におけるがん医療の中核的病院です。都道府県型のがん診療連携拠点病院(※)として、高水準のがん医療の提供に重点を置き、加えて医療者の育成、適切ながん医療の情報発信などに取り組んでいます。
東播磨圏域の地域がん診療連携拠点病院にも指定されていますので、他圏域13の地域拠点病院や県立こども病院、一般病院、診療所などの地域の医療機関と連携して、県内のがん診療に偏りがなく、すべての県民が質の高いがん医療を受けられる体制を構築しています。
院内での取り組みとしてはチーム医療がわれわれのモットーですが、さらに進めて地域でのチーム医療体制を整える必要があります。これについては、全県統一型のがん地域連携パス(治療計画書)を作りました。術後、経過の良い方を対象にがん医療の全体像を見られるよう、取り組んでいるところです。
専門病院として高度で質の高い医療を提供するのはもちろんですが、治療した後はやはり紹介元や地域で診ていただく地域完結型医療が必須であると考えています。地域の先生方に中心となっていただいて、治療後の経過観察や急変時の協力をお願いしています。
地域の状況に応じた医療の提供という形になるので、やはり医師会との連携は非常に重要で、かかりつけの先生が主導的立場で関わっていただかないと連携や在宅医療の推進は進展しません。
緊密な関係を保ったうえで話を進めさせていただいているので、現場レベルでの顔の見える関係をつくることができたのではないでしょうか。
放射線、抗がん剤、手術の集学的治療から先進医療へ
ほぼすべての患者さんに対してカンファレンスを行って治療方針を決定し、標準治療から最先端の治療まで行います。
標準治療をベースに置いた、低侵襲で患者さんに優しい治療が主流ですが、外科ではダヴィンチなどのロボット支援手術や鏡視下手術の導入、内科的なものでは分子標的治療 や免疫チェックポイント阻害剤など、放射線に関してはIMRT(強度変調放射線治療)なども導入しています。
また、臨床研究の新たな分野として世界的に遺伝子診断や個別化医療が推進されています。今後は遺伝子診断などのオーダーメード治療が重要になりますので、バイオバンク事業をスタートさせます。環境を整備して、カルテからオーダーして臨床情報とリンクさせた遺伝子情報を把握し、診断から治療までつなげたいですね。患者さんのためでもあるし、将来的には新薬開発や治療法まで発展させたいということで、バイオバンクは今年8月から本格稼働させたいと考えています。
近年、がん医療における緩和ケアの重要性への認識が深まっています。当センターでは緩和ケアセンターを設置しており、初診時から緩和ケアに取り組んでいます。
どのような治療を受ける場合でも、適切な説明に加え、患者さんとご家族が納得されることが重要です。
がん患者の会(ピアサポート)
センターでは、各部位別がん患者会の紹介を行っている(写真は、喉頭がん術後の患者会「神鈴会」)。毎月2回センター内で開催される患者サロン「明石話そう会」では、ピアサポート研修を受けた会員が、患者の幅広い悩みに耳を傾ける。
すべての患者さんをスクリーニングしたうえで、必要であれば専門チームへつないで患者さんの思いを受けとめていきます。
がん治療においては、科学に基づく最良の医療の提供とともに、医療者が患者さんとご家族の立場に立った視線を持つことが基本です。
ちまたには非科学的な民間療法の情報があふれていますが、医療者と患者さんが正しい情報をもとに信頼感で結ばれることで、本当にその方に合った最適な治療を提供できることをぜひ知ってほしいですね。
兵庫県立がんセンター
兵庫県明石市北王子町 13 番地70
☎078・929・1151(代表)
http://hyogo-cc.jp/