今年4月運営主体が地方独立行政法人 神戸市民病院機構に移行/患者さんに愛される病院に
神戸市西地域の中核病院として、1994年8月に開院した神戸市地域医療振興財団西神戸医療センター。半年後に発生した阪神・淡路大震災直後には被災者のための医療活動にあたった。2017年4月からは、運営主体が地方独立行政法人 神戸市民病院機構になる。2016年4月に着任した田中修理事長・院長に課題などを聞いた。
―概要、特徴を。
開院時は、病床規制のため市立病院が開院できなかったことから、神戸市と神戸市医師会の出資をいただき、神戸市地域医療振興財団という第三セクターで運営をスタートしました。
市の西地域の急性期と高度医療を担う病院としての役割を果たしています。財団内には、設立当初から「地域連携室」を設け、開業医の先生方との連携に力を入れてきました。今では当たり前となった「地域連携室」ですが、当地域では、20年前から、地域の医療機関との連携に取り組んでいました。
2015年度の外来患者数は1日平均1615人。病床数は475床、うち神戸市内で唯一の結核病床が50床です。
24時間救急体制で、なかでも周産期医療には力を入れています。産科、小児科、麻酔科、放射線科などが連携し、緊急時には、緊急帝王切開術が30 分以内に実施できる体制が整備されています。
救急車も積極的に受け入れており、2015年度は年間3082件。2016年度はこのままいけば、3500件近くになりそうです。
昨年4月には、国のがん診療連携拠点病院にも指定されるなど、がんの治療にも力を入れています。最近では、化学療法センター、緩和ケア、がん相談支援センターなどがん関連の部署を外来に集約し、より充実を図るようにしました。昨年春からは、緩和ケア内科と形成外科に医師が常勤し、がんリハビリテーションにも力を入れています。
当院は、総合入院体制加算2を届け出ています。この加算は、総合的、専門的な急性期医療を24時間提供する体制を評価するものです。2016年度の加算2の病院は全国で32病院しかありませんので、認定を受けた時はうれしかったですよ。
―4月からは、運営主体が地方独立行政法人 神戸市民病院機構です。背景は。
3月に神戸市地域医療振興財団が解散し、病院機能はすべて、地方独立行政法人神戸市民病院機構に引き継がれます。
もともと当院は、神戸市の西地域の人口増にともなう医療の必要性の高まりや、旧神戸市立玉津病院の結核医療を引き継ぐという目的で開設され、公的病院としての役割を担っています。それにも関わらず、市立病院ではないので、国からの公的支援を受けられないという問題がありました。
2014年4月に地方税法の改正があり、税制面が変更されたことから、当院が新たに神戸市民病院機構に移行しても問題はなくなりました。これまでも、独立採算で安定して運営してきましたが、地方独立行政法人になると、公的病院として経営基盤もより安定することになります。
新たな医療機器の導入、いずれはくる病院の建て替えなど、大型の投資などに対応しやすくなると思います。
神戸市民病院機構は、神戸市立医療センター中央市民病院(中央区)、神戸市立医療センター西市民病院(長田区)に当院が加わり、将来的には神戸アイセンター (中央区・2017年竣工予定)とあわせて4病院となります。
今後、両院とは医師や看護師、事務方も含めた人材交流を通じた診療機能の強化やスタッフの能力向上が期待されます。
特に中央市民病院は、3次救急を担っており、救急患者の受け入れは日本でもトップクラスです。設備や症例数だけでなく、指導医が多いという特徴を生かして、中央市民病院を基幹病院として新専門医制度に向けた研修プログラムを作成しています。
病院単独では難しかった医師確保も、さまざまな機能を持つグループとなれば、研修医も魅力を感じてくれると思います。
運営主体が変わっても当院の診療内容は変わりません。西地域の最後の砦(とりで)として、できるだけ高度な医療、安心してこの地で暮らしていける医療を提供し続けたいと思います。
地域のみなさんから愛される病院をめざしたいですね。
―医療従事者に必要な課題は。
神戸市も4年ほど前から人口が減っています。西区は若い世代が増えているとはいうものの、患者さんも高齢化し、急性期のニーズも多様化していると思います。
今後は、多病そして多様な高齢患者を、幅広いケアの場で診ていく必要があります。さらに、患者側の価値観に配慮しつつ、多職種協働で医療を提供するという高いスキルが一人ひとりに求められると思います。
多病に対しては、どんな症状にも対応する総合医的な意識、ジェネラルなマインドがより必要です。
高齢社会では、健康、体力、医学の知識、経済状況など、さまざまな背景を持つ患者さんに対応しなければなりません。そのために医療者は患者さんを支援する情熱が必要です。まずは、患者さんや家族の思いに共感し、支援できる人間力を身に付けてほしいと思っています。