臨床での看護の実際をみれば、特にがんの看護は、困難も迷いも多いことであろう。しかし、その大変さの中に看護師はまた喜びを感じてもいる。看護という仕事が楽でないことは自明であろう。ならば、看護師をやめる理由を殊更(ことさら)探す必要もあるまい。そうではなくて、大変さの中でなお看護師であり続けたいと思わせる看護の魅力、仕事の喜びをこそ声にする必要がある、と思うのである。(まえがきより)
私たちはなぜがん看護を続けているのか、その魅力は何なのか...。
福島の「がん看護研究会」メンバーそれぞれが、自らの経験、看護してきた患者、そして家族とのことを振り返り、思いをつづっている。
患者が自殺することを恐れ、がんという診断名を告知してこなかった時代と今とを比較した看護師は、「人は強い。(中略)何度も堂々巡りしながら、いつかはその淵から抜け出していかれる強さを、私はたくさん見てきた」と書いた。
ターミナルケアの魅力を、辛い体験をする患者や家族と、それに寄り添いたい看護師とがパートナーとなり、影響し合いながら、「癒し、癒される体験」をすること、と表現した看護師もいた。
看護の中で感じた疑問や、未熟さ、悩みや辛さに真摯に向き合い、より良い看護をしたいと努力を重ねてきた看護師たち。巻末では座談会をし、会の今後の展望にも思いをはせている。
「がん看護研究会」は1998(平成10)年、福島県で発足。2カ月に1度、事例報告会などを開いている。
A5判、151ページ。がん看護研究会著、編者は荒川唱子(福島県立医科大学名誉教授)。1800円+税。すぴか書房。