九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

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今月の1冊-93.医療4.0 第4次産業革命時代の医療 〜未来を描く医師30人による2030年への展望〜

 「ドイツではインダストリー4.0が推進されている」。つまり「第4次産業革命」が起こりつつあるという話を当欄担当者が初めて聞いたのは、10年ほど前のことだ。 これからのものづくりは、大量生産・画一的ではなく消費者の個別のニーズに応じた少量・超多品種生産が主流になっていくだろうとか、モノ同士がつながって「会話」する「IoT(Internet of Things=モノのインターネット化)」によって工場の自動化、最適化が進むとか。そんな時代に向かっていることを知り、自分が購入するモノや受けるサービスはどう変わっていくのだろうかと、ぼんやりとながら感じたのだった。 こうした世界の状況を踏まえて、デジタル技術を生かしたものづくり戦略「コネクテッドインダストリーズ」(2017年)を打ち出すなど、日本でも「革命」に向けた取り組みが進められている。変化が起こるのは産業界だけではない。第4次産業革命に関連する技術は、医療現場での活用も期待されている。「医療4.0」である。  第3章に、医師でデジタルハリウッド大学大学院客員教授の著者・加藤浩晃氏によるドクターへのインタビュー「未来を描く医師30人による展望」が掲載されている。最新のテクノロジーによって何が変わるのか? 変わらないものは何か? 人工知能に代替されない医師の価値とは? さまざまな切り口から医療の未来が語られており興味深い。そしてその出発点は、いずれも「医療はまだまだ良くすることができる」との熱い思い。そう感じた。                                         (瀬川) 医療4.0  第4次産業革命時代の医療 〜未来を描く医師30人による2030年への展望〜 加藤 浩晃  著日経BP 268頁 2530円(税込)

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今月の1冊-92.小説 ブラック・ジャック

   「この手術代はすべてひっくるめておまえさんに請求するから、そのつもりでいろよ。そうだな、ラーメンを一杯おごってもらう」 (第1話「B・J vs AI」より)   他人を「おまえさん」などと呼び、こんな粋なセリフを残して立ち去る医師といえば、あの人しかない。高額な報酬と引き換えに神業とも評される医療技術を駆使するブラック・ジャック(B・J)。物語の舞台を現代に移したこの小説版では、最先端の医療と天才外科医が対峙(たいじ)する様子が描かれている。 作者は、現代科学やホラーを題材とした作品を得意とする瀬名秀明氏。東北大学大学院を修了した薬学博士でもある。 「AIを搭載した自律的な手術が可能な医療ロボット」「iPS細胞」「終末期医療」などを切り口に、全5話を収録。「先生(ちぇんちぇい)のおくたん」であるピノコ、「死神の化身」と呼ばれるドクター・キリコなど、おなじみの登場人物(に加えて、さまざまな手塚作品のキャラクターたちも!)らが、医学界に一石を投じるヒューマンドラマを演じる。 新しい技術や考え方が社会に提示されたとき、必ず議論が起こる。医療のことならなおのこと。倫理的に問題はないのか。危険ではないのか。もしものときは誰が責任をとるのか─。小説B・Jでも、さまざまな意見がぶつかり合う。 ネタバレのため詳細は書けないが、例えばB・JとAIの関係は、いい感じに予想を裏切られた。世の中をいい方向に進めていくために、人間は医療とどう付き合うべきか。B・Jの言葉には、常に真実が宿っている気がする。 (瀬川) 小説 ブラック・ジャック瀬名秀明 著  手塚治虫 原作誠文堂新光社 296頁 1500円+税

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今月の1冊-91.FACTFULNESS(ファクトフルネス)

   「ファクトフルネス」がどのような本であるかを伝えるための定番クイズを、本欄でもいくつか。 ①世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?  (A)50歳 (B)60歳 (C)70歳 ②世界中の1歳児の中でなんらかの病気に対して予防接種を受けている子どもはどのくらいいるでしょう?  (A)20% (B)50% (C)80% 正解はいずれも「C」である。自分の中のイメージとギャップがある、という人は少なくないと思うのだが、いかがだろうか。クイズ②の正解率は国によって差があるものの平均で13%。日本はドイツ、フランスと並んで最下位の6%だ。「8割が予防接種を受けている」という事実は、ほとんど知られていないのだ。 著者の1人である医師で研究者のハンス・ロスリングは考えた。知識のアップデート不足? 本質はそこではない。高学歴の人々でさえ陥る「罠」なのだから。事実に基づいてありのままに世界を捉えられないのは、人間の脳が「ドラマチックすぎる世界の見方」を求めるからだとロスリング氏は言う。 世界では戦争や暴力が絶えず、貧困層は拡大し、天然資源はまもなく枯渇する─。課題は山積しているけれども、「不安の根拠」を知っているだろうか。世界がどんどん悪くなっていると思い込む「ネガティブ本能」、目の前のたった一つの数字が最も重要だと信じる「過大視本能」…。こうした10の誤解を乗り越えるための習慣が「ファクトフルネス」。楽しい驚きに出会える一冊だった。(瀬川) FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド日経BP社 400頁 1800円+税

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今月の1冊-90.平和を考えるための100冊+α

   本書は、総勢75人が平和について考察するための書籍を紹介する書評集だ。  そもそも平和な社会とは何だろうか。  本書では「平和学において平和の概念は単に、戦争のない状態ではなく、暴力の克服として動態的に捉えられるようになっている」と提示する。  取り上げられた書籍は「暴力の根源を考える」「植民地と戦争」「情報メディアと文化的暴力」「日米安保と沖縄」といった14のテーマに分かれる。ナチスの研究者として知られるハンナ・アーレントの「暴力について」をはじめ、石牟礼道子「苦海浄土(新装版)」、上野千鶴子「ケアの社会学」まで幅広い。  単なるブックガイドに終わることなく、〝平和な世界〟実現へ向けた熱のこもった平和指南書になっているように感じた。 同学会会長を務めた最上敏樹の著書「人道的介入―正義の武力行使はあるか」の解説では、「戦争を肯定するかのような武力介入の根拠をなくすために本当に必要なのはつまるところ『かれら』ではなく『私たち』への介入なのだろう―」と読者自身が考えることの大切さを訴える。「人種主義、成長至上主義といった形をとって顕現する構造を変容しなければ、社会全体が和解することは難しいのだ」とも。 「医療」や「健康」と「平和」は、それがおびやかされて初めて大切さが真に理解されるという意味で並べて語られることも多い。 まもなく8月。夏休みの宿題として、100冊のうちのいくつかでも読み進めたいと考えている。 平和を考えるための100冊+α 日本平和学会編 法律文化社 285頁 2000円+税

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今月の1冊-89.世界最高の学級経営 成果を上げる教師になるために

   タイトルを見た時、「自分向きの本ではない」と思った。「学級経営」は経験がないし、する予定も(させてもらえる予定も)ないからだ。 でも、友人は、「人材育成に携わるなら、読んでおいて損はない」「『子ども』という単語を育成する対象に、『教師』を自分の役割に、『学級』をチームや組織に…と置き換えて読めばいいのだ」と勧める。組織に所属していれば、人材育成は避けて通れない。「ならば」と手に取った。 この本では、教師とその指導が、「子どもの学び」という成果をもたらすとする。カリキュラムやプログラム、学校の構造改革や法的手段ではなく、「人」なのだと。 さらに、成果を上げる教師の特徴として、①前向きな期待を持ち続ける、②学級経営が抜群にうまい、③子どもの学びを確かなものにするための授業デザインの方法を知っている、を挙げる。例えば、①では子どもたちがもともとの能力ではなく、「前向きな期待」をかけられることによって著しく伸びること、③では、常に子ども(学ぶ側)に意識を向けていることの重要性が書かれている。 今、取材先でも、同世代での飲み会の席でも「人材育成の難しさ」がたびたび話題に上る。「見て覚えろ」「何度も繰り返せ」と言われて育ったわれわれ世代は、今、伝家の宝刀「見て覚えろ」が通用しなくなり、働き方改革で、「何度も繰り返す」ための時間の制約も厳しくなって、「教育ってどうしたら…」と途方に暮れている、というのが実際なのではないだろうか。 相手にだけでなく、自分にも「期待」を持つ。そのことこそ、この本が教えてくれたことなのではないかと思っている。 世界最高の学級経営 成果を上げる教師になるために ハリー・ウォン/ローズマリー・ウォン 著 稲垣みどり 訳東洋館出版社 274頁 448頁 2300円+税

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今月の1冊-88.依存症からの脱出 つながりを取り戻す

 2016年を境にテレビCМから姿を消したものがある。アルコール飲料の「ゴクゴク」という効果音や喉元のアップだ。2014年施行の「アルコール健康障害対策基本法」に基づく各メーカーの対応である。  お酒、ギャンブル、薬物、近年ではインターネット依存の深刻化も指摘されている。ニュースなどで見聞きする機会は増えているが、なかなかリアルな問題としては捉えづらい。自分の理性のブレーキは正しく作動しており、今後も壊れないと信じているからだ。  「依存症からの脱出」を読み終え、少し、自分自身の見方が変わった。同書でも改めて言及されているが、依存症は「意志が弱い」「だらしない」から陥るのではない。再発と寛解をくり返す「慢性疾患」である。 「なりやすい」人の傾向として他人に相談することが苦手で、自分の心の傷や疲れに鈍感であるタイプが多いという。もやもやの蓄積に気づかず、珍しいものを試したいという好奇心も強い。そこに「たまたま」アルコールやギャンブルがあり、快楽の記憶から逃れられなくなる。 仕事帰りの1杯。休日のパチンコ。誰もがさまざまな依存対象と接しながら、ある人は適度な距離で付き合い、ある人はのめり込んで社会生活に支障をきたす。 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の松本俊彦部長は「本質は快楽ではなく苦痛の緩和だろう」と言う。「これさえあれば苦境を乗り越えられる」と。 強く感じたのは、理由なき依存症はないということだ。背景にはきっかけがあり、孤独を訴える人間らしい心がある。依存症について学ぶことは、自分自身と向きあうことに似ている。(瀬川) 依存症からの脱出 つながりを取り戻す 信濃毎日新聞取材班 海鳴社 274頁 1800円+税

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今月の1冊-87.今夜、笑いの数を数えましょう

 誰しも、これまでの人生で「腹がよじれる」経験をしたことがあると思う。私にも、何度思い返しても涙を流して笑ってしまう鉄板のエピソードがいくつかある。 その面白さを誰かと共有したいと思い、懸命に身ぶり手ぶりを交えて再現を試みるのだがウケたためしがない。こちらが熱くなればなるほど相手の表情は「無」に近づく。なぜ! 面白い話を面白く伝え、面白いと感じてもらうのは簡単ではないのだ。 作家・クリエイターのいとうせいこうは言う。笑いは論理的に語られたり、帰納的に体系化されていたりするわけではない。ステージでは自分がうまくやれば客は笑う。逆に、いけると思っていたネタがスベることもある。笑いに関する哲学的な思考の多くに納得がいかない。笑いはなかなか言葉や数式になりにくい。だからこそ言葉や数式にしてみたい─。  笑いの原則や理論、定義を導き出すことは可能なのか。本書のタイトルが表す「笑いの数」とは「笑いの種類」のことである。 倉本美津留(放送作家)、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(劇作家、演出家など)、バカリズム(お笑い芸人)、枡野浩一(歌人)、宮沢章夫(劇作家、演出家など)、きたろう(俳優)。 1年半をかけて行ったそれぞれとの「濃ゆすぎる」公開対談を通して、笑いのバリエーションを分析し、そのメカニズムに迫る様子が記録されている。 あのとき、なぜあんなにも笑ったのか。もしかしたら、この一冊の中にあなたの「思い出の笑い」の秘密が言語化されているかもしれない。別に自分の面白さはアップしないけれど。(瀬川) 今夜、笑いの数を数えましょう いとうせいこう 講談社 352頁 1500円+税

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