総合病院三原赤十字病院 院長 渡邉 誠
山陽新幹線の上りで三原駅を通過してすぐ、左側に三原赤十字病院入院診療棟の堂々とした姿を見ることができる。事務部の村崎茂一会計課課長補佐兼総務課企画調整係長によると、新幹線からの外観を考慮して設計がなされた。平成22年2月にオープンした建物で、就任前の渡邉院長も、学会出張の際新幹線から見て立派だと感じていたらしい。医療を行なうのは人で、建築物ではない。だが、良質な医療には建築物も欠かせない因子であるだろう。
渡邉院長の声は、俳優のように低くていい声だと感じた。その上にユーモアもある。「我々臨床をやる医師には、親しみやすさも大切なんですよ」とのこと。「ぜひ院長に」と強く求めた病院側の気持ちがよく分かった。(平増)
今年の4月から院長です。3月までは、福山大学の教授でした。管理栄養士の養成を目的とした、生命工学部生命栄養科学科の開設に関わり、6年間勤めています。医療における栄養士の重要性を、学生を育てて改めて認識しました。
当院は226床で、管理栄養士は3人います。どちらかといえば少ないので、この分野は今後増強したいと考えています。
病気の根本は食生活であることも多いので、人員を増やすことには意味があると思います。地域住民の食生活に対する意識を改善できたらいいなと思います。
以前は当院の副院長だったこともあります。9年離れていましたが、離職率が高くないので、帰ってきた時は「はじめまして」というあいさつよりも「お帰りなさい」と言う人の方が多かったですね。ここは良く知った病院ですし、また私は他院で院長を経験しています。それを活かして、当院に合った病院運営を心掛けようと考えています。
副院長になる前は、島根医科大学で助教授でした。30から50歳ぐらいを出雲市で過ごしています。
山陽と山陰の一番の違いは、冬の空だと思います。和歌では出雲の枕詞として「八雲立つ」と用いますが、本当に何層にも重なった雲を見ることができます。冬場は季節風が吹くし、雪がちらつきます。しかし日較差は少なく、さほど寒くはありません。ウインタースポーツには良い環境で、若いころは楽しむことができましたが、暗い感じの土地です。私は海が好きなのですが、日本海側よりも瀬戸内海側の方が今は好きですね。特に三原は備後ですから、育った岡山市の環境に似ています。筆影山から見下ろす海が好きだし、海産物も美味しい。三原に帰ってくることができて、私もうれしいんですよ。
今は「良い医療を提供すれば病院の経営は大丈夫」という時代ではなくなりました。病院経営は厳しく、簡単ではありません。ですが「私にできることがあれば、職員や地域住民のためにやりましょう」という気持ちで院長を引き受けました。
病院を西側から撮影。右側の建物が入院診療棟。一階には救急車の搬入口がある。外来は左側の建物で診ている。
病院を南側から撮影。新幹線から見えるのもこちら側になる。近隣の建物の奥に、入院診療棟を見ることができる。
昨年、利用率が低かった亜急性期病床を廃止し、病床は急性期に特化した編成になりました。ここは救急車の搬入に適した設計ですし、高機能な医療を提供するための増改築が行なわれています。設備や環境が整っていますから、急性期の病院として運営することが望ましいと私も考えています。そのために、人員をもっと増強したいと考えています。
以前と違い、今当院に研修医はいません。卒後臨床研修の受け入れの枠はありますが、厳しいようです。医師不足の解消は私の一番重要な仕事でしょう。しかし急に補強できるわけではないので、少ない人数でどう回すのかということの方が、当面は重要です。
今年、広島赤十字・原爆病院から小児内分泌が専門の西美和先生に来ていただきました。日赤グループで医師の融通がもっとできれば良いのですが、医師は医局人事が基本ですからむつかしい面もあります。
当院の一番の特徴は、日赤の病院であるということだと考えています。ブランド力がありますし、補助金もありますから、他の同規模の地方病院よりは運営がしやすい面があります。利点を最大限に活かして経営したいですね。
しかしブランド力を利用できるということは逆に、その価値を落とせない責任もあります。日赤の看板に傷をつけて、他の日赤病院の足を引っぱることはしたくありません。職員一人一人に、日赤で働いているという誇りを持って欲しいと思います。当院の評価でブランド力をより高めることが理想です。
また当院は昭和24年にできた市立病院が、3年後日赤に全面移管されたという経緯がある、歴史ある病院です。戦後の混乱期以後、市民生活を長く支えてきました。当院の職員はその歴史を意識して、先輩たちが築いてきた信頼を大切にして欲しいと思います。
多趣味な性格で、音楽も聴けば歌舞伎も観る。ゴルフもするし、旅行も行くし、カメラも好きです。読書ももちろんします。限られた時間でできることをたくさん持っていると、生活に潤いがでます。
肝臓を専門にしていると、自分の肝臓を悪くするわけにはいきません。しかし大丈夫な量を知っていますから、よく飲みます。不摂生が原因で、自分の専門領域の病気になるのは恥ずかしいことです。肝臓を診る医師は、自分の酒量を理解できなければいけません。