みんなで考え、変えてゆく これからの医療の在り方
1981年岡山大学医学部卒業。香川医科大学(現:香川大学医学部)、国立がん研究センター中央病院、高知医療センター副院長などを経て、2018年から現職。
医学の進歩と共にどんどん高額になっていく社会保障費。限られた資源で、どう県内の医療レベルを維持していくのか。「これからは医療者だけでなく患者側の意識改革も必要」だと島田安博病院長は話す。
―病院長就任から間もなく1年です。
当院の新しい取り組みとしては、入院患者のサポートをする「患者支援センター」の開設や、紹介先の調整など後方連携を担当する「まごころ窓口」の稼働などがあります。
「患者支援センター」では看護師や薬剤師、歯科衛生士、ソーシャルワーカーなどがチームとなり、入院前の患者さんの病歴や薬の服用歴などの問診、また必要があれば口腔ケアもしています。
事前にケアをすることで、手術後の合併症のリスクを低減でき、結果、一人ひとりの患者の入院期間が短くなることで、病院としては効率的に患者を受け入れることができます。稼働からまだ日が浅いので、実際のコストメリットが出ているかどうかの検証は今後といったところですが、事前に患者さんの不安を軽減できるという点はメリットとして大きいのではないでしょうか。
病院長になったらやりたいと思っていたことの一つが、病院長室のドアを常に開けておくことです。室内には大きなテーブルを一つ設置。何か案件が発生すれば、すぐに関係者を集めて意見を聞くようにしています。
初めは職員の中にも戸惑いがあったようで、なかなか来てくれなかったのですが、今では何か問題があればすぐに報告に来るようになりました。
以前よりも各部門の情報が「現場の言葉」で届くようになりましたし、各部門の責任者が、報告前に自分で考えをまとめてきますので、各自でマネジメントをするという意識が付いてきたことは良かったなと思っています。
―高知県内の医療の現状とこれからについて。
今の県内の医療はいろいろな問題を抱えています。まず、全国でも言われている人口減の問題。都会ではまだ感じられないでしょうが、高知県の人口減少率は全国で5本の指に入る高さです。近年ますます加速する人口減に伴い、患者の数が減り、病院経営が厳しくなるということが実際起こっているのです。
そんな中で、当院は県立病院として政策医療、つまり不採算医療を担っていかないといけない立場にあり、この先の経営をしっかりと考えなければ、このまま病院を維持していくことはできません。
どうすれば医療費とのバランスを取りながら、当院のスローガン「医療の主人公は患者さん」を実行できるでしょうか。
それは、もはや病院側だけの問題にとどまりません。患者さん、また健康な住民のみなさんに、医療利用の正しい知識を付けていただくことが必要です。
日本は国民皆保険制度の下、実際にかかっている費用よりも低い個人負担額で、医療が受けられます。実際には自分が支払っている金額の何倍もの費用が使われていること、そして個人負担分以外の部分を補っている医療財源には限りがあることを知っていただくことで、受診の仕方も変わってくるのではないかと思います。
同時に、人材にも限りがあります。不要な「はしご受診」「コンビニ受診」をなくしていただくことが、この国の医療の維持につながると思います。
また、生活習慣病の発症を減らすための啓発運動をもっとしていかないといけないと思っています。
たばこをやめることで、がんの発症が減ることが分かっていますし、循環器系の病気、脳血管障害なども減るでしょう。これからの医療機関は病気の治療だけでなく、病気になる前の健康維持促進に、もっと力を入れていくべきなのではないでしょうか。
高知県・高知市病院企業団立高知医療センター
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