「労働災害が減ったことは良いことです」
独立行政法人 労働者健康福祉機構 中国労災病院 院長 碓井 亞
屋上にある耐久重量22tのヘリポートで撮影。ヘリポートは平成15 年に完了した増改築工事の際に設けられた。病院は救急医療には特に力を入れており、ヘリの受け入れもその一環の一つ。呉は工業都市として発展した街で、病院周辺も臨海工業地帯の一部。屋上からは中国木材㈱や王子製紙㈱の工場が見える。人口15 万人以上の都市としては、国内で最も高齢化率が高い。院長は呉市出身で、開院当時は小学生だった。以前病院周辺は軍需工場の並ぶ地域だったそうで、当時は近辺に遊びに来なかったとのこと。
呉市は中国地方有数の工業都市で、中国労災病院の周囲にも工場が目立つ。当初は労災患者を診る病院であったが、今は通常の急性期型中核病院とほとんど変わりない。今も脊髄損傷など広島労災特別介護施設の入所者を専門に診ることもあるが、患者数はわずかであるという。しかし伝統的に産業医の割合は高いそうだ。現在は地域のために、心臓リハビリ指導士や心不全認定看護師を養成する拠点。また、県医師会が運用する、情報基盤整備事業に参加する4病院のうちの1つ。
当院は「救急医療」「周産期医療」「高度専門的医療」を3本柱の基本方針としており、物事の優先順位を決める時は、これに沿って人員をさき、予算を振り分けています。また今年10月、病院機能評価の新ver.1.0 を取得しました。
病床数は410床。職員数は10月1日現在ちょうど700人で、医師が103人。看護師は437人、医療職98人、事務62人の構成です。
当院では昭和42年から救急医療を始め、61年には救急棟をオープンし、以後3次救急にも対応しました。
呉市医師会の協力や時間外選定療養費の導入などで、ウォークイン患者数は減ってきていますが、逆に救急搬送件数は年々増えました。現在は、1日平均約10台の救急車と、40人位のウォークインという状況で、搬送患者の約半数が入院しています。救急医療に力を入れることは、地域への貢献になっていると思いますね。
昨年5月にICU施設基準を再取得しました。ICU8床に、34人の看護師と3人の救急医が専従でおり、それを麻酔科医がサポートして24時間体制を維持できています。
平成21年には25件、22年には28件の救急ヘリを受入れました。平成23・24年は救急医が不足したために減りましたが、今年は人員を補充し、受け入れ体制は万全です。5月から広島県は「広島県ドクターヘリ事業」を開始しましたが、当院は積極的に協力しており、9月末日までに16件のヘリを受入れています。これは3番目に多い件数です。
地域との連携は大きな課題で、昨年4月に地域医療連携室の人員を増やしました。連携副室長に看護副部長を置き、後方支援のための看護師も配置しています。現在、紹介率は75%程度、逆紹介率は70%位です。
また、当院の医師と開業の先生が連携して1人の患者さんを診る2人主治医制を推進しております。これは当院と地域の先生が2人で協力して、患者さんの一生の健康を管理していこうという制度です。現在、300人近い地域の先生方がこれに賛同し、登録いただいています。
産婦人科・小児科医の確保も地域には重要なことです。平成20年以降、当院と呉医療センターに地域周産期母子医療センターが集約されました。当初は、助産師の確保に苦労しましたが、現在は安定しています。昨年から隣接医療圏にある東広島医療センターに地域周産期母子医療センターの運用が開始され、当院の負担が減っています。なお、分娩件数は平成21年が最も多く835件、昨年は715件でした。
助産師だけでなく、看護師の確保も当院の課題です。看護部が頑張ってくれただけでなく、アメニティ向上のため、院内にコーヒーショップを開店したり、看護師宿舎を新設しました。ICUを再取得できたのも、看護師の増員に対応できたという背景があってのことでしょう。
初期臨床研修医は年に8人受入れ可能です。平成24年に4人まで減りましたが、来年はまたフルマッチとなりました。院内の環境や支援制度を整備したことも係わっていると思います。
昨年6月、人工関節センターを開設しました。人工関節置換術件数は県内で3番目に多く、人材や実績があって認知度が高まってきたことに対処するものです。整形外科は昭和30年の開院当初からあり、伝統があります。
当院の総手術件数はここ数年来、年に4千件前後で、毎日平均12件程度の手術をこなしていることになります。その中、手技料が1万点以上の手術が約7割を占めています。高度専門的医療には今後も力を入れ、地域に貢献していきたいと考えています。