地域への医療貢献と国際協力が2つの柱

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聖マリア病院 島弘志院長に聞く。
生活環境が急速に様変わりしつつある現在、それを見据えて地域医療のあるべき姿、ネット社会との関わり方、九州と海外との位置づけ、東日本大震災への医療支援の様子などについて、インタビュー

マリア病院の2つの特徴

聖マリア病院 島弘志院長

「職員は財産ですね」と話す島弘志院長

当院は1953年、創設者の井手一郎先生により、小学校の宿舎を病棟にして、当時国民の間で問題になっていた結核の治療を原点にスタートしました。カトリックの病院であるため、創設者の長男井手道雄先生(故人)の定めた基本理念を受け継ぎつつ、私の作った「職員の四つの心得」を幹部職員の朝礼で唱和しています。

当病院の特徴として、24時間365日医療を受けられる体制と、小児周産期医療があり、この2つが地域医療に大きく貢献してきたと自負しており、職員の心の支えと誇りにもなっています。

時代の移り行く中で、自分の病院だけで医療を終わらせようとする自己完結型から、患者さんを社会復帰させるために地域全体で連携する地域完結型医療に変わりつつあり、我々もその中核機関としての機能を維持するために整備をすすめているところです。

IDリンクで医療の効率化と医療費抑制を

それと同時に、連携を図るために、この8月からIDリンクと呼ばれる情報交換が筑後地域で始まります。大きな病院が開業医から紹介されて患者さんを治療する際、治療の内容は、最終的には退院された患者の「退院時要約」を紹介医に送りますが、実際の検査や投薬、手術の中身などはそれぞれの医療機関にIDとして残り、それと開業医が持っているIDとは違うわけですが、患者さんの了承があればそれを一つのものとして連結する、それがIDリンクと呼ばれるシステムです。今これを佐賀県と長崎県が取り入れており、これから我々もその方向に進み、それに参加すれば当院の情報を他の医療機関がパソコン上で閲覧できるようになります。

治療する際のいろんな無駄が無くなり、それが医療費の抑制にもつながり、リアルな情報を受け取ることが出来るなどの利点があり、筑後地域の医療連携が進んでいくのではと期待して取り組んでいるところです。

医療で海外とつながる

病院自体としては、九州という土地が東南アジアに向けて開かれているため、今後外国から日本に治療を求めてやってくる人たちがあり得るかもしれないということは想定しています。言葉の問題やニーズにどこまで対応できるかという問題もありますが、県や久留米市の意向も受けてJCIという国際規格の認証を取得するための準備を進めています。

日本の医療システムを学ぶために諸外国から訪れる人たちの受け入れやJAICAの医療協力を長年やってきた経験もありますので、海外に対する違和感は、うちの職員には少ないです。

地域に信頼されてこそ

医療はいわば地場産業のようなもので、地域に信頼されてこそ初めて医療という形態が成り立つと私自身は考えており、職員の専門分野教育とか患者さんに対する接遇とかにはかなり心血を注いでいます。なかでも接遇には昨年から専門の方に来てもらい、全職員を対象に教育をしてもらっています。医療の現場は、初めての人に接する場合が多いわけですから、コミュニケーションがうまくいかなければ先に進めないし、言葉づかい一つで受け取る側の印象も変わります。専門分野のレベルを高めることについては学会発表や論文作成に力を入れています。プロとしての自覚を持ち、誇れるような職員や医師のいる職場環境にしたいですね。

自分の成長を社会貢献に

今まで医療機関というのはほとんど国家資格を持ったプロの集団で形成されていましたが、それぞれの持ち場を一生懸命やることだけでは済まなくなってきています。

何のために仕事をするのかを自覚し、その中で自分たちは何をやり、どんな工夫をすればいいのか、そのような現場の知恵が活かされる職場にしなければいい方向には行かないでしょう。病院長になる前から、自分の成長が社会貢献につながる という姿勢で仕事をしてきたので、その気持ちを職員にも持ってもらいたい。もちろんすぐに変えられることと時間のかかることがありますから、優先順位をつけて改革を進めているところです。

改革に7年かかりそう

病院の南側に新しく、地下1階地上19階の「国際医療センター(仮称)」が建設されますが、どんな構造にするかはなるべく職員の意見を取り入れたい。職員のレベルと職場の状態がきちんとしていなければ患者さんによろこんでもらえません。「ここで働いてよかった」と思えるような職場にすることが私の願いです。

与えられた10年の在任期間で方向性をつけておけば、もっといい組織になるはずです。来年10月末に「国際医療センター」が完成したあと、既存の病棟を取り壊して大きな講堂を建てたり、地域の方たちにも利用できるような図書館を作ったり、あるいは改造や改築のために、最終的には7年くらいかかるでしょう。

久留米が医療のモデル都市になれば

久留米というところは人口あたりの医師の数が日本でもトップグループに入るような町です。私が医者になって30年くらいになりますが、たまたま仕事でこの地の勤務になった人たちとか、あるいはここで生まれ育って余所の町に行った人たちから、久留米の医療が非常に充実しているということをよく聞きます。

大きな病院が市内にあり、24時間受け入れる救急医療もあって、特に小児に関しては、久留米市を中心とした近隣市町村の医師会にも参加いただいて、この病院の中に場所を設置し、小児科医が輪番で毎晩小児の外来を引き受けています。それらも含めて、患者の受け入れ医療機関が見つからずに救急車が動けないというような状態の発生はゼロに近いでしょう。それをもう少しアピールできれば、その方面のモデル都市にもなれるだろうし、九州全体にとっても財産になっていくだろうと思っています。

東日本大震災の医療支援に関わって

大勢の人たちが来院した臨時診療所の様子

大勢の被災者が来院した臨時診療所。写真提供=聖マリア病院

3月11日の東日本大震災では、翌12日の未明にDMATという医療チーム1隊を出しました。20日には岩手県医師会と話し合い、いちばん被害を受けた陸前高田市に医療チームを派遣して6月の末までずっと医療支援活動を行ってきました。JMTDRという日本国際救急医療チームも大勢養成しているという素地もあり、今回の災害で医療支援をしたいメンバーを職員に募ったら、100人以上が挙手をしてくれました。おそらくどこの医療機関もそうだったろうと思います。

とはいえ病院は閉められないので、医者や看護師、薬剤師などでチームを編成して、1週間交代で派遣しました。最初は4月いっぱいくらいでメドがつくだろうと思っていましたが、4月下旬に現地に行ってみると、あまりの惨状に人生観が変わる思いもしました。それで6月まで延ばそうと決めて、陸前高田市の竹駒と呼ばれる町の公民館に臨時の診療所を立ち上げ、そのあたりに避難した人と、元々住んでいる地域住民を対象に医療活動を始めました。発災から10日以上経っていたため、急性期の患者さんはほとんどおられなくて、普段から高血圧や糖尿病で薬を飲んでいる方や、災害とは関係なく具合が悪くなった人を診ることが多かったですね。

災害前に中心的医療機関だった県立高田病院は3階まで土砂に埋もれ、津波は4階まで押し寄せて、まったく機能していませんでしたが、高田病院の仮設診療所が7月に建つことになり、安心して引き上げてきました。

患者さんをいかに早く社会復帰させるかが使命

病院全体の方向性として、地域に対する医療全体をさらによくしていくこと、そして国際協力、この2つを対外的な大きな柱と考えて経営していますが、実際にそれをやろうと思うと、そこに携わってくれる人が必要です。常々、「職員は財産」だと思っていて、それを口にもしていますが、幸いに、私の思いを理解して仕事をしてくれる職員がここには大勢います。

人生の中で病気やケガの治療をせざるを得なくなった人たちが、いかに早く社会復帰できるか、それが使命だと思い、それに組織を上げて最大限の努力をするのだと常々言っています。

在院日数の短縮に地域で全力をあげて

医療の流れとして在院日数の短縮という命題があります。日本はおよそ2週間、欧米では4、5日の場合が多く、韓国にある同じカトリック系の病院や首都ソウルの大きな病院の平均在院日数は1週間くらいです。日本はそれの2倍ですから、もっと短縮していく必要性が出てくるだろうと思います。そのために、物理的にどうするかに関してはいろいろ論議されているところですが、医療技術を上げることは絶対条件で、それと同時に、医療に直接携わる医師や看護師がもっと増えなければリスクを伴いやすいです。さらに、医療のめどが立った時点で周辺の受け入れなどの構築がされていないと、諸外国のような短い在院日数にはたどり着かない。冒頭でも言いましたが、世の中は自己完結型から地域完結型に変わってきています。うちで治療を終えても、それから先に受け入れてくれるところがなければ、結局はうちに居ざるを得ない。その意味でも、地域全体に本気で取り組む姿勢が求められるでしょう。

内田康夫ファン

副院長の時代から休日は無いようなものです。でも身体を動かすことが好きなので、病院の職員といっしょに野球をやっています。昔は外野でしたが、今はファーストにいて、でも速い打球が横を転がると身体がぴくりとも動きません。監督兼プレイヤーなのに恥ずかしくて「今のは誰の球かなー」と聞いたら、若い連中が「今のは無理ですよー」とかばってくれますね。他の趣味といえば、妻も私も本を読むのが好きで、なかでも内田康夫のファンです。彼の推理小説は全部読んでいますよ。


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