きめ細かなケアでさまざまな透析患者に対応
1989年久留米大学医学部卒業、同年第3内科入局。2001年から現職。
慢性期医療に特化する粕屋南病院。近年、増加傾向にある慢性腎臓病のケアを強みとする。病院の現状とその取り組みについて、玉井収院長に聞いた。
―透析治療の現状を聞かせてください。
腎疾患に対する画期的な治療法はまだまだ開発途上で、透析治療が必要になる患者さんもたくさんいます。そうした状況を踏まえ、当院ではさまざまな状況の透析患者さんに対応できるようにしています。
入院の患者さんの多くは高齢で通院できなくなった方やリハビリが必要な方、複数の合併症がある方です。腎障害を合併しやすいと言われているHIVの患者さんの受け入れ経験もあり、体制も整っています。
また、循環器医が在籍しており、心臓リハビリも得意とするのが強みです。
心不全の患者さんが増えていますし、透析を受けている方の死因で最も多いのも心不全です。心臓の機能を評価した上で、血圧や脈拍をしっかりと管理して体を動かす。心不全の患者さんが増えてきているという社会事情もあり、患者さんが良い状態を維持できるよう、積極的にリハビリを実施しています。
透析室は40床準備しており、血液透析、腹膜透析のどちらにも対応可能です。シャントトラブルについても、可能な限り院内で対処しています。また、透析後の止血の際も、患者さん任せにするのではなく、スタッフが最後まで責任を持って管理しています。地元の糟屋郡からだけでなく、福岡市内から来院する患者さんも多いですね。
―透析治療に関しては、どんな取り組みを。
当院には、複数の透析専門医と透析技術認定士、透析看護認定看護師がいます。それぞれ学会に参加して発表したり、他施設の方と情報交換したりして、スキルを磨いています。
最近、特に力を入れて取り組んでいるのはフットケアです。透析治療を受ける患者さんは動脈硬化が起きやすいため、末梢動脈疾患がある方が多い。末梢動脈疾患が進むと、最悪の場合、下肢を切断しなければならなくなります。
ですから、切断に至ることがないよう特殊な機器を用いて丁寧に診察し、早期に病状を把握、治療するように努めています。同時に、感染症を予防するため、常に足を清潔にしておくことにも細心の注意を払っています。状態が悪い患者さんの場合には、血行再建のため別の病院に紹介し、カテーテル治療やバイパス手術をしてもらうこともあります。
身体合併症がある方や認知症の患者さんも多いですが、担当医の適切な管理により、安全に治療することができています。毎日の食事の指導や管理、生活指導なども実施し、全身の管理にも注意を払っています。
透析治療に関するガイドライン更新の際は、改訂内容をいち早く取り入れ、それに従って診療してきました。当院自体が日本透析医学会の教育関連施設として機能していますから、スタッフみんなが熱心に勉強していると思います。
―他の医療機関とはどのように連携を。
急性期医療を専門とする近隣の病院との連携は必須です。急性期の治療は終えたものの、リハビリをしなければ自宅に帰ることのできない患者さんの受け入れ先も必要ですし、ターミナルケアを必要とする患者さんもいるからです。
当院は慢性期医療を主体とする病院ですので、そのような患者さんの受け入れやケアに関する相談がよく寄せられます。
粕屋地区CKD(慢性腎臓病)対策連携システムにも参加。この組織は、近隣病院と粕屋医師会、粕屋保健所が協力し、慢性腎臓病の早期発見、重症化予防などを進めています。この連携を通し、腎臓病治療にとどまらず、予防にも貢献していけたらと考えています。
医療法人みなみ粕屋南病院
福岡県糟屋郡宇美町神武原6-2-7
TEL:092-933-7171(代表)
http://www.kasuya-minami.or.jp/