さまざまな連携の形で医療課題に立ち向かう
岐阜県東南部、東濃・可児地域の基幹病院である岐阜県立多治見病院。今年4月に就任した近藤泰三理事長・病院長に、現在の思いを聞いた。
―就任から数カ月。現状についていかがですか。
当院は3次救急、周産期医療、政策医療などを担っており、地域の中核病院として高度急性期医療を支えています。私は2014年に当院に着任して以降、原田明生前理事長・病院長らと共に病院運営に関わってきました。
原田前理事長・病院長のリーダーシップのもと「健全な病院経営」を推進。電子カルテの更新、「新中央診療棟」の建設計画など、いくつかのプロジェクトの道筋をつけました。私はその路線を踏襲しつつ、またこれからの病院づくりに向けて力を注ぎます。
多治見市、土岐市、瑞浪市、恵那市、中津川市からなる東濃医療圏に可児市を加えた地域の人口は約45万人。人口減少と少子高齢化が進んでいます。医療需要は高齢人口の増加により今後10年ほどは伸びていく見通しです。
東濃医療圏を含む周辺一帯は、愛知県に集積する自動車関連産業に勤務する方々のベッドタウンとしてのニーズが高まっています。
10年ほど前に東海環状自動車道が開通し、愛知県との交通アクセスが格段に向上したことで、若い世代を中心とした移住も促進されています。JR多治見駅周辺の再開発事業も計画されており、町に新たなにぎわいも創出されるでしょう。
当院としては先進的な急性期医療を提供し、多様な世代が安心して暮らせる地域づくりに貢献したいと考えています。
―地域の強みについては。
医療機関の連携が非常に活発だと感じています。当医療圏も医師不足をはじめ、多様な医療課題を抱えています。それを乗り越えるには「協力して取り組まねばならない」という共通認識があります。大小さまざまな連携が生まれている要因でしょう。
その一つに「東濃・可児地域病病連携推進会議」があります。2014年、八つの病院により連携強化を目指して始まりました。
多治見市民病院、土岐市立総合病院、東濃厚生病院、市立恵那病院、総合病院中津川市民病院、国民健康保険坂下病院、可児とうのう病院、そして当院が2カ月に1回程度集まり、情報交換や病院運営上の課題などを話し合っています。
同年、当院は「多治見シャトル」をスタートさせました。当院を退院した患者さんを、かかりつけ医の先生と連携してフォローする仕組みです。
例えば、当院での検査や診療の時期が近づくと、かかりつけ医の先生に連絡します。かかりつけ医から患者さんに案内していただくことで「受診忘れ」を防ぎます。「2人の主治医に診てもらっている」という患者さんの安心感にもつながると思います。
―新中央診療棟はどのようなものに。
病院の南側、現在駐車場として利用している敷地に地上7階、地下1階建ての診療棟を新築します。東病棟にある救命救急センターや集中治療部門を新棟に移すなど、高度急性期、急性期医療の機能を集約。医療の効率性を高めるとともに、医療者が働きやすい環境の整備を目指します。
ハイブリッド手術室、手術支援ロボットに対応した手術室など、先端的な医療が可能な12の手術室を新設します。また、NICU、GCUの整備など周産期母子医療センターを拡充。化学療法センターの強化も計画しています。
分かりやすさを重視したデザインの外来や待合スペース、プライバシーへの配慮など、患者さんやご家族へのサービス、利便性の向上にも努めます。
スケジュールは2020年度の着工、2022年度の開設予定です。職員一丸となって整備事業に取り組みたいと思います。
地方独立行政法人岐阜県立多治見病院
岐阜県多治見市前畑町5-161
TEL:0572-22-5311(代表)
http://www.tajimi-hospital.jp/