熊本大学大学院 生命科学研究部神経精神医学分野 橋本 衛 准教授

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認知症との「共存」よりよい暮らしを求めて

【はしもと・まもる】 1991 大阪大学医学部卒業 1992~1996 同大学院医学研究科博士課程 1993 千葉大学医学部神経内科 1996 兵庫県立高齢者脳機能研究センター臨床研究員 2004 医療法人北斗会さわ病院医員 2007 熊本大学医学部附属病院神経精神科助教 2015 同准教授

 長年、認知症患者と向き合ってきた橋本衛准教授。認知症と「共存」するためのサポートに注力し、患者さんの生活の背景に思いをめぐらせ治療にあたる。

◎教室の取り組み

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 超高齢社会を迎えた今、社会問題化している認知症は、精神医療の分野でもニーズが増しています。

 認知症高齢者は年々増加しており、2025年には全国で推定700万人に達すると言われています。65歳の5人に1人が発症する計算で、熊本県では、約11万人の方が認知症になると予測されています。誰もが当事者として、もしくは家族として関わる可能性が高い病気です。

 当教室では認知症の臨床研究を中心にさまざまな取り組みを進めています。行政と連携し、熊本発の認知症医療モデルを目指して、当大学を含めた県内12カ所の医療機関を「熊本県認知症疾患医療センター」に指定。私は連携推進の責任者です。

 同事業では医療・介護・地域支援を3本の柱とし、認知症に関わる多様な専門スタッフの育成、適切な治療の提供と包括的な支援に努めています。「認知症になっても地域で安心して暮らしていくこと」を活動の目標としています。

 各センターには、専門医と相談員を配置。受診前の相談、医療機関の紹介、認知症の原因疾患を特定する鑑別診断のほか診断に基づいた治療や初期対応などを実施しています。年6回、各センターのスタッフが集い、研修会や事例検討会を開いて情報共有や課題の抽出に努めています。センター全体の役割としては、熊本地震で被災された認知症患者さんの支援にも取り組んでいます。

 地域連携が進む中、後期研修や大学院での研究を通じて、新たな精神医学の課題に立ち向かう研究マインドを持ち、地域医療を担うことのできる指導医を育成しています。

◎治療の現状

 認知症は薬で進行を遅らせたり、部分的に症状を改善したりすることは可能ですが、現段階では根治が難しい疾患です。

 主な認知症として、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型があります。認知症患者さんの半数以上をアルツハイマー型が占めていると言われており、認知症の種類によって、脳内で起きている変化や症状も変わります。それぞれに合わせた適切なケアが重要です。

 現在、国内では認知症の薬として4種類の薬が認可されています。現段階では、アルツハイマー型とレビー小体型の認知症に対してのみの適用です。 認知症薬の開発は世界的に取り組まれています。現在発売されている薬は発症後の薬ですが、発症前の予防をターゲットとするものにシフトしつつあります。

 早期発見・早期治療に関しての研究は各国で進められていますが、まだ大きな成果が出ていないのが現状です。ただ、早期発見は必ずしもプラスに働かない側面もあります。いずれ発症する確率が高いとわかっても、有効な治療法が確立されていなければ、人によっては、ずっと不安を感じながら生きていくことになるかもしれません。

◎うまく「共存」していく

 私たち精神科医の役割の一つは、認知症との「共存」をサポートすることです。認知症外来を受診される患者さんの多くは、家族や周囲の方に促されて受診されます。一見症状の自覚がないように見えますが、決してそんなことはありません。多くの認知症患者さんは生活がしにくくなっていること、将来のことについて悩んでいます。

 根本的な治療法がない現状では、「認知症とどう共存するか」が大切です。認知症との共存の方法は年齢によっても、進行度によっても異なります。それぞれのライフスタイルによって多様なのです。

 例えば、定年後の方の中には、加齢とともに、「自然と認知症と付き合っている」という場合もあるでしょう。

 一方、現役で仕事をしている方であれば、業務に支障をきたしたり、家族との関係性にも影響したりする可能性があります。社会とどうつながっているかによって、患者さんが困っていることも変わり、私たちのサポートやアプローチ法も異なってきます。

 多くの方は、「認知症が発症したら人生が終わってしまう」と考えるかもしれません。しかし、認知症とうまく付き合っていくことは決して不可能なことではなく、「その人にとっての幸せな人生」を目指すことはできると私は考えています。

 私たちは患者さんやご家族が「どんな生活を望んでいるのか」を見極めてアドバイスをします。自分たちで抱え込んでしまっている問題を解決するために、一つずつ一緒に考えていきます。

◎背景にある気持ちに目を向ける

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 患者さんと向き合う上で大切なことは、本人と家族の背景にあるものをケアすることです。ご家族の方が感じている不安や、負担に思っていることをしっかりと聞き、何が必要かを整理します。できるだけ「困らない」環境を、少しずつつくるのです。

 認知症イコール「周囲に迷惑をかけてしまう」「何もできなくなる」ではありません。また、認知症に付随して出てくる、うつ、妄想などに対しては治療で改善することができます。

 認知症の方もそうでない人と同じように、感情があります。プライドが傷ついたり、喜んだり、何かがうまくできなければ落ち込んだりします。「今どんな気持ちでいるのだろう?」と、患者さんの気持ちをいかにイメージしながら診療できるかが大切なことではないかと思います。

 認知症患者さんがもっと暮らしやすく、地域で受け入れられていくためには、病気に対しての正しい理解を広めていく必要があると思います。情報発信などにも、いっそう努めていきたいと考えています。

熊本大学大学院 生命科学研究部神経精神医学分野
熊本市中央区本荘1-1-1
TEL:096-344-2111(代表)
http://www.kumamoto-neuropsy.jp/


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