大阪医科大学 麻酔科学教室 南 敏明 教授

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ジェネラリストとして 超急性期から在宅まで

【みなみ・としあき】 1987 大阪医科大学卒業 同麻酔科学教室 1993 同大学院修了 2002 同教授 2005 大阪医科大学附属病院中央手術部長 2006 関西医科大学客員教授 2012 大阪医科大学附属病院副院長 2016 同医療安全推進部部長

 日本で11番目の麻酔科学教室として1963年に開講。歴史に裏打ちされた教育と先端的な医療環境の中で、麻酔科医たちが躍動している。

―大阪医科大学が手術に力を入れる中、麻酔科の状況は。

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 2016年4月、私が建設プロジェクトの責任者を務めた、全20室からなる中央手術棟が開設しました。

 3階の中央手術室はCTハイブリッド手術室やTAVIなどを実施するアンギオハイブリッド手術室、「ダビンチ」を設置した手術室を含む16室で構成。私たち麻酔科は中央手術室での手術麻酔を中心に、集中治療やペインクリニック、緩和医療、救急医療などを幅広く担っています。

 私は医療安全推進部の部長も務めていますので中央手術棟は安全面や効率化の向上において随所に工夫を凝らしました。まず手術室の様子は、医局に設置したモニターを通してすべて把握することができます。

 本館とは渡り廊下でつながっており、各科が超緊急手術にも対応できるようスタンバイ。例えば帝王切開なら、最短のケースだと数分で手術を開始できます。

 形成外科や眼科などで使用する小さな縫合針を万が一落としてもすぐに発見できるよう、ベッド周辺の床だけ色を塗り分けています。いろいろな色を検討した結果「青」が最も見つけやすいことが分かりました。看護師の発案がきっかけで実現したものです。

 また、廊下や室内にさまざまな自然風景の写真パネルを設置するなど、患者さんの緊張をほぐす環境づくりにも努めています。一昼夜にも及ぶ長時間の手術の場合、メディカルスタッフは時間の感覚が分からなくなります。「外の様子を知りたい」という要望に応え、一部の手術室には窓をつくりました。

 麻薬などを保管した部屋には、麻酔科医と薬剤師だけが入室できます。指紋認証システムを採用し、部屋の四隅には監視カメラを置いて入室者を随時チェック。おそらく国内でも有数の厳しいセキュリティーシステムではないでしょうか。

 2階は日帰り手術室です。アナフィラキシーショック、反射性徐脈などが起こった際に備えて麻酔科の医局は手術室に隣接しています。内訳として多いのは眼科、歯科口腔外科、ブロックを行う麻酔科の順です。

 全身麻酔だと消化器外科が最多、それから泌尿器科、整形外科です。脳神経外科の血管内治療や小児科のカテーテル治療なども含めて、2016年度は全手術症例1万890例のうち麻酔科が管理したのは6745例でした。手術件数は、特にここ数年で大きく増加。「24時間断らない手術室」を方針としています。

 もしもインシデントが発生したら、手術運営委員会で徹底的に検証することになります。麻酔科はもちろん各診療科の医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、物流スタッフ、事務スタッフなどあらゆる職種を交えて意見を交換。再発防止の策を講じ、院内での周知を図ります。

 中央手術棟への引っ越しは非常にスムーズで、そのさなかに緊急手術の受け入れにも対応しました。これも部門の壁を越えた協力体制があるからでしょう。

―強みはどのような点でしょうか。

 1966年、兵頭正義初代教授がペインクリニックを開設。東京大学に次いで日本では2番目の歴史があります。

 麻酔科医は循環器、呼吸器、栄養、疼痛(とうつう)など多様な身体管理や診断、治療が可能なジェネラリストです。例えば、若いころは手術麻酔や救急、専門性を高めていくなら集中治療やペインクリニック、じっくりと患者さんと向き合っていきたいと思えば在宅や緩和医療。医局でのキャリアを終えた後は老人医学と、当教室では年齢に応じて何ができるのかを提示しています。入局から引退後に至る「ゆりかごから墓場まで」の視点でOBとも協力し、幅広い力を身につけることを目指しています。

 当教室が掲げているのは、まずは麻酔科専門医の取得。次のステップとしてペインクリニック専門医、集中治療専門医、救急科専門医の麻酔科専門領域のうち二つ以上を取得することです。

 手術麻酔の領域に特化したいという者は心臓血管麻酔専門医や小児麻酔認定医などの取得が目標です。泌尿器科領域や小児科領域の専門医など、他科から麻酔科へ移ってくる人がコンスタントにいることも当教室の特徴の一つです。

 特色としては「在宅」もカバーしていることです。当院の関連施設の一つに、在宅医療に力を入れている「千舟町クリニック」(愛媛県松山市)があります。医局員が2人勤務しており、クリニックのメディカルスタッフ全員がタブレット端末で情報を共有して診療にあたるなど、実に約900人もの在宅患者を診療している医療機関です。

 学生教育の一環として千舟町クリニックでの実習を選択できるようにしています。ハンディータイプのエコーを用いたブロックにより、在宅でも安全に痛みをコントロールすることができるようになりました。国が超急性期医療と在宅医療に重きを置く中、麻酔科医の選択肢に在宅があることを知ってほしいと思っています。

 現在、当教室にはレジデントを含めて41人が在籍しています。症例の勉強会のほかに、学会発表などを見すえた「パワーポイントによる効果的なプレゼン」などの講座も開いています。

 外部の講師をまねいてスライドのバックの色合いやタイトルの配置、アニメーションを用いる割合などのポイントを学びます。いきなり「学会発表をしなさい」と言うのではなく、基礎からしっかりと教育していくことに力を入れています。

―教育についての考えを教えてください。

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 もともと救急医療に関心があり麻酔科を選びました。入局後のペインクリニックの体験が、私にとって大きかったのかなと思います。

 「なんだか気性の激しい人やな」という印象だった人が痛みを取り除くことでおだやかさを取り戻す。

 反対に、おとなしかった人が、痛みの苦しさによって攻撃的になる―。

 痛みのコントロールの重要性を知り、吹田市にあった「大阪バイオサイエンス研究所」(2015年解散)で研究に打ち込みました。麻酔科医としての考え方や姿勢などを変えた転機で、現在でも研究は私のライフワークです。

 当教室は比較的若い層が中心です。20代と30代が多く、活気にあふれています。国立循環器病研究センター、兵庫県立こども病院、大阪府三島救命救急センターなど、希望に合わせた医療機関で1年間、研さんを積んでもらっています。

 麻酔科医に最も大事なのは危機管理能力だと思います。現在の麻酔薬はコントロールしやすく、一定のトレーニングを積めば問題なく使えます。エコーなど多様なデバイスが充実していることで、かつては不可欠だった「職人技」もあまり必要とされません。

 とはいえ「いつもと違う」「何かが起きるのではないか」と察知する能力、危機に対してすぐに動くことのできる能力は昔も今も変わらず、経験を重ねて体で覚えるべきもの。専門医に合格することだけが目的ではありません。しっかりと手技を身につけた、判断力のある専門医であることが不可欠です。

 もう一つ重要なのはコミュニケーション能力だと思います。現代はチーム医療。1人ですべてを背負い込むのはリスクになりかねません。円滑なチームワークを築ける人材を育成していきたいと思います。

大阪医科大学 麻酔科学教室
大阪府高槻市大学町2-7
TEL:072-683-1221(代表)
http://www.osaka-med.ac.jp/~ane000/


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