地域の患者は地域で診る
大阪市南西部地域の救急医療を支える友愛会病院。昨年就任した寺本佳史副院長は、脳神経外科医として脳血管内治療に取り組みながら、術後リハビリテーションにも力を注ぐ。同院を「地域の中核病院にしたい」と奔走する寺本副院長の思いとは...。
◎脳神経外科医と整形外科医が常駐
当院の強みの一つは、脳神経外科医が常駐していることです。昼夜を問わず、検査、開頭手術、脳血管内手術などに対応。超急性期の治療を得意としています。
昨年度、脳神経外科領域の手術は366件、うち脳血管内治療が104件です。低侵襲の脳血管内治療は、開頭手術に耐えられない高齢者にもできる場合が多いので、今後、一層増えていくと思います。
整形外科も特徴です。整形外科医は5人体制で、2016年度に実施した手術は603件。うち人工骨頭や骨折観血的手術が半数以上を占めています。
◎救急隊との取り組み
昨年度の救急車による搬入件数は年間約3650件。こちらは年々増加傾向です。
脳外科疾患、特に脳卒中や外傷の場合は、早期搬送、早期治療開始が欠かせません。そこで当院では、2014年から、連携強化を目的に、地元の救急隊との意見交換会を年に3~4回のペースで開くようになりました。
現状の報告や今後の課題を話し合うことで、強固な関係を構築してきました。また、2015年度からは、症例報告検討会の開催や救急同乗実習を開始するなど、救急隊員と医師、看護師間の連携強化にも努めています。
救急隊の方から出た「救急車の受け入れ台数が少ない」「病院からの質問項目が多く、時間がかかりすぎる」といった課題を一つずつ解決することで、スムーズに受け入れられる体制を築きつつあると実感しています。
最近では、脳卒中を発症した患者さんを搬送する際、救急隊に「友愛会病院に運んでほしい」と希望する人が増えてきたとも聞き、うれしく思っています。
◎内から外への転換
当院に赴任したとき、この病院が、地域の中で孤立しているような印象を持ちました。医師会の先生方との交流が少なく、紹介率も低かったからです。
そこで私は、周辺の医療機関に着任のあいさつに行くことにしました。「救急、脳神経外科、整形外科の患者さんは、当院で受け入れます。それ以外の患者さんは、よろしくお願いします」と、"広報"して回ったのです。
今の時代、待っているだけでは患者さんは来てくれません。当院の診療の特徴、力を入れていることなどを知っていただかないと、患者さんに選ばれず、開業医の先生方から紹介もしてもらえないのです。
2014年からは、開業医の先生方向けに脳神経外科疾患の研究会を年に2度開催しています。また、来月には地域の婦人会を対象に「脳梗塞」をテーマにした健康講座を開きます。
わざわざ遠くの医療機関を受診しなくても、当院に来ていただければ質の高い医療を提供できるということを、地域の医療機関、住民の皆さんにアピールしていきたいと考えています。
◎地域で、最後まで
救急で運ばれてきた脳卒中や骨折の患者さんには、術後すぐの段階から急性期リハビリを開始。必要に応じて回復期リハビリテーション病棟(42床)に移っていただき、在宅復帰を目指します。
医師、看護師、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)、医療ソーシャルワーカーなどが連携して治療に当たっています。重症の患者さんも多い中、在宅復帰率は90%強です。
私は、医師になったばかりのころ、退院後の患者さんがどうなっているかまで思いが至らず、脳卒中の患者さんなどのリハビリの重要性にも、目が向いていませんでした。
しかし、ある時、急性期病院の脳外科医は、脳卒中治療の一部を担っているだけということに気づいたのです。
手術や血管内治療をすれば、患者さんが元の生活に戻れるわけではありません。リハビリのスタッフがいかに患者さんに関わり、患者さん自身がどれだけリハビリを頑張られるかによって、回復の度合いが変わるのです。
「患者さんを最後まで診たい」という気持ちが強くなった私は4年前、リハビリ科専門医の資格を取りました。
私が大事にしたいと思っているのは「地域の患者さんは地域で診る」ということ。そのための体制を整えていく時期にきています。
国の方針で在宅移行が進んでいます。今後は、訪問看護の充実や法人内に老人保健施設を設置するなど、患者さんを最後の瞬間まで診ることができる仕組みを作りたいと考えています。
医療法人讃和会 友愛会病院
大阪市住之江区浜口西3-5-10
TEL:06-6672-3121(代表)
http://www.sanwakai.jp/