社会医療法人 神鋼記念会 神鋼記念病院 山神 和彦 乳腺科部長兼乳腺センター長

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最新、最良、そして斬新な乳がん治療を

【やまがみ・かずひこ】 大阪府立大手前高校卒業1989 福井大学医学部卒業 京都大学医学部附属病院外科 1999 同大学院卒業 2000 ドイツミュンヘン大学実験外科学 2004 神鋼病院(現:神鋼記念病院)外科医長 2005 同乳腺科科長 2017 同乳腺科部長兼乳腺センター長京都大学乳腺外科学非常勤講師

 乳がん手術件数が兵庫県内トップの神鋼記念病院。その背景にある診療の方針とは。

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―強みなどを。

 2005年に乳腺科を開設しました。当時、常勤医師は私1人で、乳がん領域で著名な小西豊先生(現:神戸アーバン乳腺クリニック院長)と橋本隆先生(現:橋本クリニック院長)、2人の非常勤医師に支えられていました。

 そこから、次々に乳がんの診断、治療のエキスパートが集結しました。手術症例数も増加し、昨年までの12年間で、乳がん手術件数は計2687例で、昨年の新規乳がん患者は341人となりました。

 乳腺センターでは、乳がんを切除する乳腺外科医、乳房再建に携わる形成外科医、画像診断を行う放射線診断科医が重要な役割を担います。

 乳腺外科には優秀な医師が在籍。併せて放射線科には、「日本医学放射線学会画像診断ガイドライン」の編集委員を務め、わが国の乳がん画像診断の指導的立場の医師2人も在籍しています。

 形成外科医長の奥村興医師は、乳房再建の第一人者です。乳がんの根治と乳房の整容性の両立に取り組む「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会」では、私と奥村医師が、昨年に引き続きシンポジウム、教育講演の演者として依頼を受けています。

 当院形成外科での再建手術は、手術難易度の高い本人の自家組織を使ったものが多く、自家組織による再建は、インプラントよりも患者さんの満足度が高いことが、米国形成外科学会で報告されています。

 当院の経験豊富な形成外科医の手術は、比較的容易なインプラントにおいても整容性が明らかに良好です。また、形成外科との緊密な連携ができているかどうかも、手術治療に関する病院選択のポイントになると思います。

 そして4月から、当院の乳がん病理診断をリードする病理診断医も乳腺センターに加わりました。

 メディカルスタッフのスキルも重要です。乳腺センター内には、乳腺に特化した乳腺エコー室を創設。スタッフはハイレベルな診断能力を発揮してくれています。乳がん看護認定看護師、リンパ浮腫指導技能士も患者さんをサポートしています。

 さらに、患者さん自らが中心となり、患者会「神鋼リボンの会」を運営し、年2回の親睦会、講演会を開催しています。

 このようなチーム医療が成り立つのも、風通しの良い組織だからだと思います。

 チームのみんながそれぞれのスキルを上げ、役割をしっかり果たす。それが好循環となり、患者さんの満足にもつながっていくと考えています。

―新たな治療にも力を入れているようですね。

 以前は腋窩リンパ節を郭清する(根こそぎ切除する)手術が標準治療でした。本来であれば必要のない手術によって、リンパ浮腫や知覚障害などの合併症が多々ありました。

 現在では、最初に転移するリンパ節(センチネルリンパ節)を手術中に見つけ、転移がない場合は郭清を省略する方法(センチネルリンパ節生検)が実施されています。これによって、多くの患者さんが、腕のリンパ浮腫、知覚障害を回避できるようになりました。

 センチネルリンパ節を見つける方法は、色素法やラジオアイソトープ(RI)法がありました。一方、われわれは、浜松ホトニクス社が開発したインドシアニングリーン(ICG)蛍光法によるセンチネルリンパ節生検の臨床応用に取り組みました。

 浜松ホトニクス社は、スーパーカミオカンデの光電子増倍管を開発し、ノーベル物理学賞受賞に貢献した企業としても知られています。

 乳輪から注入したICGはリンパ管を通り、腋窩のリンパ節に集積します。近赤外光で照射するとセンチネルリンパ節で蛍光を発しますので、初心者でも容易に確認できます。われわれは、早い段階で、この研究に取り組み臨床応用のデータを集めました。

 2008年には、ICG蛍光法の有効性を世界各国のがん専門医が参加する米国の学会ASCO(American Society ofClinical Oncology) に、症例集積として、はじめて発表することができました。

 反響は大きく、その後、京都大学でも臨床応用へ向けた臨床試験が実施されました。その結果、2015年には日本乳がん学会「乳癌診療ガイドライン治療編」に、推奨グレードBで掲載されました。

 日本発信の技術であるICG蛍光法を、世界的な標準手技に育てる努力をすると同時に、蛍光法をより進化させる研究にも取り組んでいます。

 現在、さらに、富士フイルム、神戸大学理学部とも連携し、新規の乳がん画像診断法の開発に取り組んでいます。

―地域との連携については。

 術後肺炎などの合併症や薬物療法時の口内炎の低減に口腔内ケアの有効性が注目されています。当院の病床数は333床。中規模病院の多くは、院内に口腔外科が併設されていません。

 そこで、当院は神戸市歯科医師会との連携を進めてきました。歯科医師会側もがん治療における口腔ケアの重要性を認識され、市内の歯科の多くの先生方が勉強会に参加されるようになりました。

 今後の医療は病院完結型から地域完結型に変化していくと思われます。当センターも地域のクリニックや病院とともに、地域貢献にも積極的に参加していきたいと考えています。

―今後の乳がん治療は。

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 個別化医療がますます進むと考えています。背景には、検査技術の進化があります。

 例えば、ある薬剤の効果が消失した腫瘍や、遠隔転移した腫瘍は、原発巣と遺伝子変異が異なる事が知られています。腫瘍組織の再度の生検が推奨されますが、場所によっては、採取が困難な場合も多々あります。

 そこで注目されているのが血中の腫瘍DNA(ctDNA)を検出する新たな方法です。

 医学と異なる分野のテクノロジーの進化に伴い、血液内の無尽蔵な情報が解析可能となったのです。これによって、数年前には考えられなかった腫瘍の遺伝子解析が可能になり、近い将来、簡便になりそうです。

 また、今後は、AI(人工知能)も加わり、これまで医学だけでは実現困難だったことも容易になるかもしれません。

 われわれも、最新、最善の治療が提供できるよう尽力し、斬新な医療を継続したいと思います。

社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院
神戸市中央区脇浜町1-4-47
TEL:078-261-6711
http://www.shinkohp.or.jp/


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