医療法人 笠寺病院 春日井 貴雄 理事長・院長

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「つなぐ」医療で地域貢献

【かすがい・たかお】 1982 名古屋市立大学医学部卒業 同麻酔科入局 1985 同第2外科研究員 1988 名古屋市立大学医学部助手1996 国民健康保険上矢作病院副院長 2010笠寺病院外科部長 2017 同理事長・院長

 「高度急性期病院と在宅医をつなぎ、この地域に必要とされることが大事」と語る春日井貴雄理事長・院長。地域医療構想のもとで医療機関同士を「つなぐ」役割に特化したシステムを作り、実践する中で見えてきた課題と展望、地域における在り方とは。

◎病院の概要と三つの方針について

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 院長に就任した2016年5月、「地域包括ケア病棟の活用」「在宅医療の推進の支援」「消化器疾患を中心とした専門医療」という三つの方針を打ち出しました。

 2012年に病院を建て替えた当時は一般病床128床で稼働していました。その翌年、地域医療構想のもと一般病棟43床、地域包括ケア病棟42床、療養病棟43床に病床を変換することで院内の機能を分化。2016年12月には療養病床43床と地域包括ケア病床85床にして一般病床をなくしました。

 2016年の地域医療構想策定前にいち早く地域包括ケア病棟をつくった背景には、大学病院をはじめとする高度急性期病院が、救急外来に搬送された軽症患者や急性期を脱して長期入院を要する患者の受け入れ先として「ポストアキュート」の機能を求めていること、地域の開業医が在宅や施設で診ている患者の急性増悪に、入院させて対応できる「サブアキュート」の機能を必要としていることがありました。

 当院は2010年に在宅療養支援病院の認可を受け、現在は常勤医による在宅診療をしていますが、今後は地域の在宅医に在宅診療の役割を移していけたらと考えています。訪問看護ステーション・介護支援事業所での患者のサポートは継続しますので引き続き地域で活用してもらいながら、在宅診療については「ポストアキュート」として「在宅復帰支援」に特化していく方針です。

 2012年に病院を新築した際「消化器内視鏡センター」を造ったことで検査システムが充実。名古屋市立大学病院から多くの医師の派遣を受けることで、高度で専門的な医療も提供しています。 それにより複数の疾患があり、いつどのような症状が出るかもわからない高齢患者の急変時の検査や治療にも当院の「地域包括ケア病棟」で対応できるのです。

◎2025年問題に向けての展望

 2016年に策定された地域医療構想では、2025年までに療養病床を含む「慢性期」を今ある35.2万床から24.2〜28.5万床程度に縮小し、地域包括ケア病床を含む「回復期」を今の11.0万床から37.5万床程度まで増床することを予定しています。それにより、介護施設や高齢者住宅入居者を含めた在宅医療を受ける29.7〜33.7万人程度の患者に切れ目のない医療や介護を提供することを計画しています。

 「病院完結型」から「地域完結型」へ移行するためには、病院同士を「つなぐ」機能が必要。

 当院は大学病院をはじめとする高度急性期病院と地域の在宅医、それぞれの医療機関を「つなぐ」役割を担うために地域包括ケア病棟をつくりました。他の病院と競合するのではなく、それぞれの役割を分担し、役割に応じて連携していく方向にかじを切ったのです。

 当院ではポストアキュート・サブアキュートでさらに検査体制を充実させたものとして「スーパーポストアキュート+サブ」という概念を考えました。高齢の患者は複数の疾患を持っていることが多く、心筋梗塞の疑いがある方が翌日脳梗塞を起こすこともあります。そのような場合に備えて当院では24時間365日、夜中でもオンコールで検査技師を呼んで検査をし、必要な場合は高度急性期病院に搬送します。疾患が認められるので急性期病院も包括医療費支払制度(DPC)上問題なく患者を受け入れることができる。このシステムを始めて3年経ちますが、「つなぐ機能でやっていける」という感触がありますね。

 今後、地域医療構想をもとに病院の在り方を再考したところとそうでないところで、「生き残り」も含めて明らかな差が出てくることでしょう。

 この「スーパーポストアキュート+サブ」という概念について現段階では全職員が理解しているとは言い難いですが、今後そのような病院間の差を見ることで当院の役割と地域における在り方に気付く時が来ると思うのですが、それにはもう少し時間が必要です。

 今後は全床を地域包括ケア病棟にすることも考えています。

 30年も経てば地域包括ケアシステムはいらなくなり、医療界はまた新たな変革期を迎えることでしょう。しかし、今は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題に向き合い、取り組んでいくだけです。

◎地域の医療機関と顔の見える関係作りを

 他の医療機関を「つなぐ」役割を担うにしても、日頃から交流がないと患者さんをお願いしにくいものです。また「紹介すると患者を取られてしまい戻ってこないのではないか」といった誤解をなくすために、笠寺病院を知って信頼してもらうことが非常に重要です。

 名古屋市南区の医師会では所属する病院や医院、クリニックの医師や看護師などの医療スタッフと職員が会する懇親会「南和会」が年に一度開催され、「顔の見える関係」作りに積極的に取り組んでいます。22回目の開催となった今年は150〜160人が集まり、各医療機関・他職種同士で活発な交流が行われました。このように名古屋市南区は早くから地域連携に取り組んでいる地域でもあるのです。

◎笠寺病院の今後の展開

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 「患者さんの病気やけがを治して元気に帰すこと」がこれまでの病院の目的であり在り方でした。しかし、治すために徹底的にあらゆる治療を施すのではなく、ADLの低下を防ぎ、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)を保つことを優先して病院と在宅で患者を管理して病気と付き合っていく。それも高齢化が進んだ今、患者にとってベストな治療法を考える上で選択肢の一つとなるでしょう。

 「地域包括ケア病棟」への転換で病院の役割が変わりつつある現在も、受け入れた患者が回復して自宅や施設に帰ることが職員のモチベーションにつながることに変わりはありません。ポストアキュート+サブとして今後もより一層多くの患者を受け入れていきたいですね。

 今後は「つなぐ」機能をより強固なものとするために、高度急性期病院からの患者の電子カルテに、当院での情報を添えて地域の開業医にフィードバックするICTの導入を検討しています。

 当院では接遇研修を定期的に開き、職員のマナーアップに力を入れています。また医師や看護師、理学療法士などによる認知症サポートチーム(DST)があり、定期的に病棟の認知症患者をラウンド、また対応について検討会を開いています。相手を否定せず、寄り添うことを意識し接することで、認知症のある方の状態も穏やかになります。高齢の患者が多いので、こういった取り組みはずっと続けていきたいと思います。

 つなぐ機能としてだけでなく、地域の方からも「何かあれば笠寺病院に行こう」と言ってもらえるような存在になっていきたいですね。

医療法人 笠寺病院
名古屋市南区松池町3-19
TEL:052-811-1151(代表)
http://www.kasadera.or.jp/


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