2019年右京区南太秦に新築移転
公益社団法人京都保健会は、京都市内などで病院や診療所など37の事業所を運営。府内14の地域に「健康友の会」があり、約1万人の会員がいる。
同保健会の中で、411床と最大規模の京都民医連中央病院は、1987(昭和62)年に京都市中京区に誕生した。
2019年秋には右京区南太秦に移転を計画。吉中丈志院長に新病院について聞いた。
◎病院の歴史
1987年に現在地(中京区西ノ京春日町)で205床の病院として開設されたのが始まりです。民医連として医療の質の向上や医師の確保のためにはどうすべきかを考え、病院建設に踏み切りました。建設には、多額の資金調達の必要があり、5年間の長期計画を立て、医師をはじめ職員や患者さんが一緒になって取り組みました。これも、民医連ならではの活動だと思います。
かつては、病院独自の医師研修システムでしたが、1990年代の臨床研修必修化の論議を受け、1998年には臨床研修指定病院の認可を受けました。
当時の規定では、認可のためには300床以上の病床規模が必要でした。当時の当院は205床でしたので、法人内の他病院の病床を当院に移すことで基準を満たしました。
2004年には臨床研修が必修化されました。私たちは、地域医療を重視したプログラムを作成し、多くの研修医を育成してきました。
しかし、2009年、厚生労働省が医師の偏在を是正するとして、人口比で都道府県別の研修医募集定員上限を設定。京都府の定員枠も大幅に削減されました。その影響で、当院の募集定員が8人から5人となったことは大変残念なことです。
2011年には、法人内の別の病院の病床を当院に移設。現在は、一般病床359床(うち回復期リハビリテーション病床54床、緩和ケア病床14床)、地域包括ケア病床52床の構成で合計全411床となっています 。
◎リニューアルへ向けて
病院開設から30年。施設の老朽化が問題となってきました。2005年に救急の受け入れを始めるなど医療提供体制は高度化、細分化。それらハード面での対応も課題になっています。
そこで、2019年秋の開設を目指して、病院を新築移転することにしました。現在、基本設計が進行中で、2018年初めまでには着工します。
すでに現在地から2kmほど離れた右京区南太秦に約7千坪の土地を取得しました。右京区は府内でも多い約20万人の人口を擁しながら総合病院がありません。当院の開設を歓迎する声も多く聞かれます。
新病院では、地域の開業医の先生との連携を大切にしていく方針です。当院が緊急時や紹介の患者さんを診て、その後は開業医の先生方にお返しする「2人の主治医」という考え方を打ち出し、地域医療支援病院を目指します。情報の共有が要ですね。
世界保健機関(WHO)は、HPH(健康増進活動)という考え方を掲げています。今の医療体系では、世界の医療費は増加する一方です。これを防ぐためにも一人ひとりが病気の予防につながる活動をするため、それを病院でサポートしようというものです。
新病院では病院の周囲に緑地帯を設けて、ウオーキングや、軽い運動などができるようにしたいです。院内のレストランでは、減塩食を提供するなど、食育ができる工夫もほしいですね。
京都は最近、外国人旅行客が急激に増加しています。旅行中の病気や事故で受診する外国の方も少なくありません。このため、医療通訳を配置し「外国人患者受け入れ医療機関 」の認定を目指します。
◎教育病院を目指す
2004年、研修のプログラムを考える参考にしようと、アメリカのマサチューセッツ総合病院などの医学教育システムを視察しました。アメリカでは、総合病院が医師養成の中心"ティーチングホスピタル"となります。
当院が目指す病院像は、それに近いかもしれません。2014年には教育研修センターを設置。医師などの教育に特に力を入れています。
私が当院の医師に病院の成り立ちやスピリッツを話す「院長塾」も定期的に開き、若い医師と 職員のコミュニケーションにも力を入れています。
◎注目される診療
大学病院のような最先端の医療も大事ですが、患者さんのQOLを大事にする医療も大事だと考えています。
このため、リハビリには特に力を入れており、80人強のセラピストが、筋骨格、脳卒中、心臓、がん 、呼吸器などのリハに取り組んでいます。
腎 ・循環器センターでは、血液透析だけでなく、在宅での腹膜透析にも力を入れ、慢性心不全に対するチーム医療をすすめています。
2012年に開設された大腸肛門病センターは、肛門伸展張力計(松田式)を開発された松田直樹先生を中心に、診療しています。患者さんの評価も高く、よくマスコミにも取り上げられています。
婦人科 、外科、泌尿器科が協力して女性に多い子宮脱などの臓器脱の治療にも力を入れています。なかなか相談できる施設がなく当院に来られる患者さんもいます。
今後は、がん診療推進病院として、がん診療に貢献し、開業医の先生をサポートできる体制を作りたいですね。
ただ、病院のアイデンティティーを高度医療にだけ求めるのではなく、地域医療、家庭医療も大切にしたい。病院としてさまざまな医師をサポートしたいと考えています。
診療面では、チーム医療の推進力となる看護師の教育も大切に考えています。認定看護師の取得を推進してきました。京都でも先陣を切ることができたと思っています。幅広い分野の認定看護師が生まれ、チームのまとめ役を担うと同時に、診療レベルの向上に寄与してくれています。
◎社会問題を見据えて
当院は、民医連の病院です。地域の方が、医療費が払えず医療を受けられないということはあってはなりません。
そのためにも、差額室料は頂かないという方針を引き続き維持します。
最近では、若い世代の貧困や高齢者の老後破産の問題がクローズアップされています。そういう点でも、病院として、社会にどう働きかけができるかを念頭に置いて運営していきます。このような病院もあるのだということを、多くの方に知っていただくことも、大事なことかもしれません。
公益社団法人 京都保健会 京都民医連中央病院
京都市中京区西ノ京春日町16-1
TEL:075-822-2777
http://kyoto-min-iren-c-hp.jp/index.html