医療生協かわち野生活協同組合 東大阪生協病院 橘田 亜由美 院長

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医療者と組合員が協働で進めるまちづくり

【きつだ・あゆみ】 1992 秋田大学医学部卒業 西淀病院 1993 耳原総合病院 1999 東大阪生協病院 2016 同院長

 「気軽に利用できる診療所を」との地域の要望を受け1971年、組合員数357世帯で設立した医療生協かわち野生活協同組合。現在、組合員は7万1757世帯(2017年10月現在)となり、1病院5診療所が生活に根ざした医療・介護サービスを展開している。その中核を担うのが東大阪生協病院だ。

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◎助け合いで地域を守る

 当院は、1982年4月、105床の病院として開院。医療生協かわち野生活協同組合の誕生を後押しした地域住民の熱意を受け継ぎ、「いつでも、どこでも、だれでも安心して診てもらえる病院」を志してスタートしました。

 今年4月、医療生協かわち野は、大東四條畷保健生活協同組合と合併しました。事業を展開する地域は、当院が立地する東大阪市と八尾市、柏原市に加えて大東市、四條畷市、門真市、大阪市にも広がりました。

 これら7市に及ぶ「定款地域」は、病院圏、楠根圏、加納圏、はなぞの圏、八尾圏、大東四條畷圏の6エリアに分かれています。

 1病院(東大阪生協病院)と5診療所(楠根診療所、生協加納診療所、はなぞの生協診療所、医療生協八尾クリニック、協立診療所)が各エリアの中心となって訪問看護ステーションや通所リハビリテーション、グループホーム、ケアプランセンターなどを運営。「医療と介護の複合体」として活動しています。

 「たまり場」と呼ばれるコミュニティーを拠点にして、組合員たちが積極的に健康維持に取り組んでいることも医療生協の特徴です。互いに学び合い、楽しみながら進めています。たまり場がはぐくむ「助け合いの心」は地域包括ケアの構築を後押しする一つの力にもなっていると思います。

 医療難民や介護難民を出さない。そんな思いで各医療機関と組合員が力を合わせています。

◎心身の回復を支える

 2011年に着手した病院の建て替え工事は2013年に1期棟が完成し、2期棟の竣工をもって2015年に完了。一般病棟41床、地域包括ケア病床10床、回復期リハビリテーション病棟48床の計99床、12診療科の病院として新たな一歩を踏み出しました。

 リニューアルに伴ってリハビリテーション機能を大幅に強化しました。まず、ワンルームマンションを想定したシミュレーション室を新設。

 上がりかまちや、トイレ、キッチン、浴室、寝室などを備え、在宅復帰を見据えたADL(日常生活動作)向上を目指した訓練を実施できる環境を整えています。「外泊したいが看護や介護が不安」という患者さんやそのご家族を対象に、シミュレーション室での1泊訓練も可能です。

 早期の起立、歩行訓練を重視し、電気刺激機器による機能回復訓練なども活用。屋上には、スムーズに屋外訓練へと移行していくための「リハビリ庭園」があります。

 階段、スロープをはじめ、歩道の傾斜、段差、側溝、さらには実物の線路を敷くなど、標準的な屋外環境を再現。365日、切れ目のないリハビリテーションによって、在宅復帰率は93%(2016年5月現在)ほどを維持しています。

 私たちが提供しているリハビリテーションは、単に「手足が動くようになる」ことが目的ではありません。

 機能回復とともに再びその人らしく、生きがいをもって暮らしていけるよう、サポートしたい。ですから、心の回復の面でもしっかりと支えていきたいと考えています。

◎認知症になっても安心して暮らしてほしい

 現在、当院では約260件、医療生協かわち野全体では約450件、在宅医療サービスを受けている患者さんがいます。通院困難や寝たきりの方のほか、ALS(筋萎縮性側索硬化症)やがんなどの患者さんが対象です。

 訪問医療や訪問介護において認知症の問題を避けて通ることはできません。高齢者の認知症患者は、2025年におよそ5人に1人にあたる700万人に達すると推計されています。その症状も多岐にわたるため、私たち医療者も、より柔軟な姿勢での診療や予防への取り組み、家族のサポートなどが求められます。

 医療生協かわち野は、今年10月に「いのち・くらしまるごとケア」を方針として認知症施策推進プロジェクト「レインボープラン」を策定。

 認知症の方も受けやすい医療・介護サービスを提供し、安心して暮らせるまちづくりを進めています。

 東大阪市が今年7月に始動させた認知症初期集中支援チーム「東大阪オレンジチーム」とも連携。地域における認知症かかりつけ医としての役割を果たしていきます。

 レインボープランの具体的な支援内容として、「7本の柱」と「7本の帯」を定めています。

 7本の柱は「予防・早期発見」「早期診断・治療・適切な医療の提供」「ケア・適切な介護の提供」「若年・軽度の認知症者の社会参加」「家族ケア」「認知症者の人権擁護」「認知症を理解しサポートできる人づくり、認知症になっても安心して住み続けられるまちづくり」です。

 7本の柱を実践していくチームを構成しているのが、7本の帯。「医療事業」「介護・福祉事業」「共同組織・組合員活動」「普及・研究・教育」「連携医療機関」「医療生協・民医連」「行政」です。

 多様な社会資源を活用して、患者さん本人もご家族も、1人で背負わない、1人で背負わせないための支援を届けます。

 脳ドックの充実など、医療生協かわち野の全医療機関の認知症診断能力を向上し、「認知症診断の手順」を整備。また、МCI(軽度認知障害)や初期の認知症については認知症カフェ「オレンジカフェ」への参加を促進し、他者との交流や不安の解消を図ります。

 組合員による健康活動のためのグループ・班会の認知症予防効果を検証するなど、私たちらしい予防プロジェクトも計画しています。

◎貧困が妨げになってはいけない

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 認知症対策を進めていくと同時に、「子どもの貧困」にも積極的にアプローチしていきたいと思っています。

 7人に1人の子どもが貧困状態にある(2017年国民生活基礎調査)と言われる中、ここ大阪府も生活保護率が全国平均を上回るなど、問題が深刻化しています。

 貧困と格差の連鎖を断ち切ることを主な目的として、医療生協かわち野を主体とした「子どもサポートチーム」が結成されました。子どもたちの学習を支援したり、子ども食堂を開いたりして、家庭環境や学校での問題なども含め、子どもたちが直面しているさまざまな社会問題の解決を目指しています。

 私たちの医療は、理念として掲げているように「いのちの平等をつらぬく人権尊重の医療」であり、「患者・組合員が主人公の医療」です。

 2012年、医療生協かわち野の医療機関は、社会福祉事業法にもとづき「無料低額診療事業」を導入しました。医療費の支払いが困難な場合、医療費を減額または免除するものです。

 経済的な理由で、必要な医療サービスが制限されることがあってはなりません。その信念を忘れることなく、安心・安全に暮らせる地域に貢献したいですね。

医療生協かわち野生活協同組合 東大阪生協病院
大阪府東大阪市長瀬町1-7-7
TEL:06-6727-3131(代表)
https://www.iseikyoukawachino.jp/higasiosaka/


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