島根大学医学部 消化器・総合外科学講座 田島 義証 教授

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若手外科医の育成が急務

【たじま・よしつぐ】 福岡県立明善高校卒業 1983 長崎大学医学部卒業 同第二外科学(現 移植・消化器外科)入局 1994 同助教1999 同講師 2005 同准教授 2011 島根大学医学部消化器・総合外科教授

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―医局の特徴は。

 1977(昭和52)年、本学に外科学講座が開講された当初は、第一外科と第二外科に分かれていましたが、2005年、双方の教授が同時期に退官されるのを機に臓器別編成が行われ、消化器・総合外科と循環器・呼吸器外科に分かれました。消化器・総合外科の診療部門は消化器外科(上部・下部消化管)、肝胆膵外科、乳腺内分泌外科、小児外科の四つです。

 島根県の高齢化率は30%を超え、高齢者の悪性疾患を治療することが多いことから、侵襲や合併症の少ない治療を心がけています。2015年2月からは手術支援ロボット・ダビンチによる胃がん手術を導入しました。腹腔鏡手術についても、同年9月、3D内視鏡手術システムを導入し、より安全で精緻な手術が可能になりました。現在では60%以上の手術に腹腔鏡を用いています。

 悪性腫瘍には、消化器内科、腫瘍内科、放射線科、麻酔科、循環器内科、臨床病理部、薬剤部、リハビリ科、口腔外科など多職種が協同で集学的治療を実施し、特に食道・肝臓・膵臓の切除など侵襲が大きい手術の場合には、麻酔科医を中心とした周術期管理チームと連携した治療を行い、術後合併症の低減に努めています。同チームは手術を受ける患者さんに糖尿病などの合併症がある際や、呼吸器リハビリ、口腔ケアなどの必要がある時にも、関連する診療科と連携しながら、術前・術中・術後を通して管理できる体制を整えています。

 また、島根県で唯一、高度の小児外科手術が受けられる病院として、県内全域から手術を要する小児を受け入れています。小児外科でも内視鏡外科手術の占める割合が年々高くなってきました。最も多い疾患である鼠径ヘルニアも腹腔鏡で手術をしています。

―膵臓疾患特殊外来の開設は山陰地区初だそうですね。

 昨年10月のことです。膵臓疾患の病態は多様で画一的な治療では対応できません。たとえば膵臓を切除すると膵臓機能が低下して糖尿病になったり、消化吸収不良によって栄養状態が悪化したりしてしまう。そのため、膵がん治療の場合は、消化器内科、腫瘍内科、放射線科など多職種によるチーム医療が重要になります。島根県は膵がんの発症率が高い地域であるにもかかわらず、山陰地区には膵臓疾患に特化した専門外来がありませんでした。そこで、膵がん、膵のう胞性腫瘍、神経内分泌腫瘍、慢性膵炎に代表される種々の膵疾患を横断的に診療することを目的にこの外来を開設しました。

 膵がんは増加傾向にあるだけでなく、これまでは発見時の約60〜70%が切除不能進行膵がんで、切除可能であっても5年生存率は15%前後でした。しかし、近年では新規抗がん剤や分子標的薬が登場したことで、外科切除にこれらの化学療法や放射線治療を加えた集学的治療が可能になり、治療成績は徐々に向上しています。切除不能進行膵がんであっても、積極的に集学的治療を行うことで、切除可能になる症例も少しずつ見られるようになりました。

 早期発見が難しい膵がんですが、最近では、もともと軽い糖尿病がある方が急に血糖コントロールがうまくできなくなったり、糖尿病ではない方の血糖値が上がってきたりしたら、膵がんの疑いがあると言われています。血糖値が上がったらエコー検査を含めた精密検査の必要があることを広く知っていただきたいですね。

 膵のう胞性腫瘍は日本人の約2〜3%にみられるという報告もあるほどで、決してまれな疾患ではありません。80歳以上では約8~9%と高く、年齢とともに増加。この膵のう胞性腫瘍は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性のう胞腫瘍(MCN)、漿液(しょうえき)性のう胞腫瘍(SCN)などに分類されています。健診で偶然みつかるケースが多く、当院を受診される方の約70~80%が無症状です。

 時間の経過とともに良性から悪性に変化していくIPMNは、治療可能な膵がんとして注目されています。悪性化する前に発見・治療ができるのですが、背部痛や腹痛などの症状が出たときは進行している場合が多い。

 同時に、IPMNがある患者さんは通常型の膵がんを発症する危険性が高いことも知られています。IPMNの手術適応についてはガイドラインで定められていますが、経過観察の間も膵がんや膵臓以外の臓器に腫瘍を合併する頻度が約30%と極めて高く、専門医による綿密な経過観察が重要なため、膵臓疾患特殊外来の役割は大きいと考えています。

―県内の外科医の現状については。

 長い間、島根県の外科医療は、鳥取大学、京都大学、岡山大学、広島大学、山口大学などからの医療派遣で支えられてきました。ところが、2004年度の新医師臨床研修制度の施行を契機に医局制度が崩壊し、若手医師は都会へ流出しました。併せて全国的な外科医志望者の激減により、ここ5年ほどは特に外科医派遣を受けることが困難になり、現在は非常に厳しい状況にあります。

 これは多くの地方大学、特に新設医大にとって共通の極めて大きな問題であると思います。さらに、これまで島根県の外科医療を担ってきた多くの外科医が、この先5年のうちに定年を迎えることも大きな問題になっています。問題解決のためには、若手外科医の育成が急務なのです。

―外科医育成の具体的な取り組みは。

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 赴任の翌年、2012年から中学生を対象としたブラックジャックセミナーを始めました。毎年10月、本学の手術室を開放し、出雲市内の中学生20~30人を招いて普段われわれ外科医が使っている最新の医療機器に触れる機会を提供しています。

 手を洗った後に手袋とガウンをつけて糸結びや縫合の練習をしたり、鶏肉の中に腫瘍に見立てた粘土を入れ、それを電気メスや超音波凝固切開装置を使って摘出したり。シミュレーターを用いた胆のう摘出術、スポンジで作った胃を切除し、自動縫合器を使って縫合・再建してらうこともあります。

 はじめは緊張した面持ちの生徒さんたちも一生懸命取り組んでくれて、セミナーの最後にはみんな笑顔を見せてくれますよ。10年ほどかかりますが、これを機に医療に興味を持った子どもたちが、将来、医療の世界に入ってくれることを目的としています。

 また、昨年から始めた取り組みに「PeTIT SummerCamp in Tachikue2016」というサマーキャンプがあります。対象は医学部の1年生から6年生。昨年7月、「島根で頑張る熱いおやじたちと話がしたいひと、この指とーまれ」をキャッチフレーズに、消化器・総合外科、腎臓内科、放射線治療科の有志が本学近くの立久恵峡に集まりました。

 「専門医」と「学位」、医師にとってはどちらも大事だということを伝えたくて、私自身の経験に基づいた講演をしたあと、「卒後のキャリアプラン」をキーワードにワークショップを開き、夜にはバーベキューをしながら一晩中語り明かしました。

 外科医を育てることが私の使命です。一人でも多くの外科医を確保するために、今後も継続していきたいと考えています。

 ポリクリに入ってくる5 年生に対しては、グループごとに写真を撮り、それぞれの名前を記載して教室の掲示板に貼っています。医局員たちに学生の名前を覚えてもらうためです。わずか2週間の研修期間であっても、名前で呼ぶことで学生との距離が縮まります。

 1年間の実習が終わるとすべての写真をカンファレンスルームに貼り出して、最も積極的だったグループに投票し、年間MVPの表彰もしています。

 外科医を育てるには多くの時間と労力、資金がかかります。そこで、島根大学医学部消化器・総合外科学講座と循環器・呼吸器外科学講座、同外科学講座同門会、県内の外科医に若手外科医の育成や勧誘の支援をお願いしたところ、NPO法人島根外科医療育成支援機構を立ち上げてくださいました。今後は、こうした総合的な支援を有効に活用しながら、若手外科医を育てていきたいと考えています。

島根大学医学部附属病院
島根県出雲市塩冶町89-1
TEL:0853-23-2111(代表)
http://www.med.shimane-u.ac.jp/hospital

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