「内科臨床 明日への道標」
第29回日本臨床内科医学会が「内科臨床 明日への道標」をメインテーマに、10月11日〜12日、熊本市中央区にあるホテル日航熊本内の7会場で開催された。
学会は河北誠学会長のあいさつで始まった。
さまざまな領域での特別講演、シンポジウム、教育講演、ワークショップ、セミナーなどがあり、熊本県内外から多くの来場者でにぎわった。
超高齢化社会へと向かう日本の現状をふまえ、演者はいずれも地域医療の第一線で活躍するスペシャリストとして、研究結果を発表。会場からは質問が相次ぎ、有意義な意見交換が行われた。
ランチョンセミナーは、6つの会場に分かれて、産婦人科の新しい診療領域、抗不安薬の処方の仕方、高齢者CKD(慢性腎臓病)など、多岐にわたる分野について、地元食材と郷土料理づくしの弁当を食べながら癒やしのあるセミナーとなった。
11日、特別講演では、京都大学iPS細胞研究所副所長の中畑龍俊教授、異色の経歴を持ち、くまモンの生みの親としても知られる蒲島郁夫熊本県知事が講演。翌12日には、かつて上田桃子、古閑美保など、数多くのトッププロを輩出した、「坂田ジュニアゴルフ塾」を主宰する坂田信弘プロが講演し、バラエティーに富んだ顔ぶれと内容に、一般来場者も興味深く聞き入った。
さらに、河北学会長自猿田亨男・日本臨床内科医会会長らも、「エリスロポエチン物語―純化の歩みと遺伝子クローニングへの道のり―」をテーマに講演。透析や腎性貧血の患者にとっては必需品となった、造血因子エリスロポエチンができるまでの、長く苦労に満ちた道のりについて、思い出話を交えながら語った。
講演後にはセレモニーも開かれ、河北学会長が、「必要な社会保障費が増大する一方で、限られた社会資源をどのように分配し、国民の健康福祉を維持していくのかが大きな課題である」とスピーチ。猿田亨男・日本臨床内科医会会長のあいさつに続き、来賓として、横倉義武・日本医師会会長の祝辞を鈴木邦彦・日本医師会常任理事が代読。次期学会長である、菅原正弘・医療法人社団弘健会会長は「参加者2千人を目指したい」と熱のこもったあいさつと、次期学会のプロモーションビデオ上映で締めくった。
第30回学会は、2016年10月9日(日)・10日(月・祝)、「真の健康長寿社会を目指して」をテーマに、東京都新宿区の京王プラザホテルで開催予定。
特別講演①
くまモン生みの親・蒲島郁夫熊本県知事の講演に会場沸く
農協職員から農業研修生として渡米後、ネブラスカ大学を卒業、ハーバード大学大学院政治経済学博士課程を修了後、東大法学部教授を経て県知事に。そんな異色の経歴を持つ蒲島郁夫熊本県知事が、「人生と夢」をテーマに特別講演を行った。
自身のこれまでの歩みを振り返りながら、「熊本県民の幸福量の最大化」を目標に、水俣病、川辺ダム、財政再建など、さまざまな問題解決に取り組んできた道のりについて熱く語った。
「皿を割るのを恐れて1枚も洗おうとしない人とは仕事をしたくない。県庁職員には、どんどん皿を割れと言っています」の言葉に、蒲島県政のチャレンジ精神が垣間見えた。
シンポジウム②
待ったなしの認知症医療! ―かかりつけ医の果たす役割の重要性―
シンポジウムの一つでは、地域医療の現場で認知症治療に取り組む、かかりつけ医の重要性について、さまざまな角度から意見交換が行われた。
座長は、かつて厚生労働省の研究班長として、認知症患者の自動車運転に関する研究などに取り組み、現在は「かかりつけ医のための認知症の鑑別診断と疾患別治療に関する研究」の研究班長としても活動中である、池田学熊本大学教授と、熊本市北区の医療法人医誠会みつぐまち診療所で地域医療にあたる津野田尚子院長の2人。
シンポジストは、茨城県常陸大宮市内各地に、リハビリやデイサービスを提供するサテライトを作り、24時間体制の訪問看護・介護サービスの提供体制を整えてきた、鈴木邦彦・日本医師会常任理事と、福岡県粕屋郡久山町における疫学調査(久山町研究)で、慢性腎臓病・認知症・高血圧・脳卒中・虚血性心疾患などの発症率、危険因子に関する研究に携わる、二宮利治九州大学教授。さらには、熊本県有明圏域に設置された、認知症疾患医療センターで、専門外来を担当している、石川智久熊本大学助教、認知症と自動車運転の問題などについて、データ分析と研究を行う、上村直人高知大学講師の4人だった。
来るべき超高齢化社会に向けて必要となる、地域医療ネットワークの現在と将来について考えさせられるシンポジウムとなった。