社団法人天草郡市医師会立 天草地域医療センター 原田 和則 院長
2014年4月20日号で原田和則院長に、天草地域医療センターの成り立ちと高齢化が進む天草の現状について話してもらった。今回は「あまくさメディカルネット」についてと、職員に何を求めるかを聞いた。
今年7月1日の全体朝礼の様子。マイクを握るのが原田和則院長。右の囲み:前列向かって右から吉仲一郎副院長、境野成次副院長、2列目: 泉良喜事務長、樋口友子看護部長、川上泰代看護師長、岩崎幾子看護師長、3列目: 山本直美看護主任、岡部真紀看護師長、荒木優子看護師長 。(写真提供=天草地域医療センター:加工も)
―本格稼働しておよそ1年がたつ「あまくさメディカルネット」の状況と今後は。
天草医療圏には約12万人が暮らし、大小120の島からなっていることが大きな特徴です。医療機関は当センターを含めて18病院、77診療所がありますが、非常に広大な範囲に点在していることから、小規模病院や診療所は、救急も含めて専門外の疾病も診療しなければならず、医療情報の連携が欠かせません。
特に救急を要するような訴えの患者さんに対し、当センターに緊急搬送する必要があるかどうかの判断には医用画像連携が不可欠です。そのためにも画像の質を重視した連携ネットワークシステム「あまくさメディカルネット」を構築したのです。
天草郡市医師会を中心に天草医療圏の医療機関を結び、画像データや患者情報を共有するシステムで、大きく分けて2つの機能があります。
1つは、当センターを中心に、天草中央総合病院、苓北医師会病院、上天草総合病院、牛深市民病院、河浦病院の6病院のサーバー間での画像連携です。CTやMRIなどの画像を相互参照でき、画像転送による救急患者の初期診療、救急搬送の是非の判断などに力を発揮します。
2つ目は当センターおよび併設の健診センターにおけるすべての詳細な画像データと検査データに加えて、投薬・注射などの一般診療データ、治療内容や経過に関するカルテサマリーなどの診療情報が、患者さんの紹介元や紹介先施設で個別に参照できる機能です。
現在54施設が加入し、複数の施設が加入を準備しています。当センターの医療部門と関連の少ない耳鼻科や眼科などを除けば、ほとんどの診療所が参加できると思います。患者の同意に関して断られることはほとんどなく、同意患者数は3000名近くに達しています。
今後については、歯科や薬局、訪問看護・介護などの医療関連、さらには介護施設などともシステムの連携ができればと思います。そうすればこれからの在宅医療の推進や地域包括ケアの構築にとっても大きなツールになると期待しています。
―これからの天草の課題は。
熊本市など都市部ではこれから、高齢者人口が増えて働き手世代は少し減ります。でもすでに高齢化している天草ではこれから15年間、高齢者人口は変わりませんが、働き手世代が大きく減っていきます。
つまり、都市部の問題は、医療と介護費の増加、天草の問題は医療と介護の担い手が不足するということです。医師確保の問題はともかくとして、看護師や介護士はこの地域の出身者がほとんどです。かといって、今後熊本市や福岡出身の人が天草にやってきて看護や介護をやろうなんてことはまずないでしょう。だから天草の働き手が減ることが問題なんです。ぜひ天草に残っていただくこと、いったん都会に出たとしても、天草に帰って頑張ってくれたらいいですね。
―職員に求めるものは。
私は遠くに目標を置いて、それに向かってまっしぐら、という初志貫徹型ではなく、柔軟性があるという意味での朝令暮改タイプです。
大学を卒業して水俣の病院に1年いたほかは、天草に来るまでずっと大学にいました。そこで消化器や乳がん、甲状腺、肺がん、膵臓、肝臓など、いろんな手術をするようになり、それが結果として天草で役立ちました。ほとんどの外科の患者さんは当院で治療できるようになりましたからね。手術では十分な知識に基づいた上での、柔軟さや臨機応変な対応が重要です。
だから職員には、知識だけを詰め込んだ単なるマニュアル型よりも、患者さんの立場に立つという軸がぶれなければ、昨日よりも今日、今日より明日というふうに、常により良く変化していく努力をしてほしいと話しています。
これは人生にもいえることで、知識やマニュアルだけに頼っていたのでは、物事の本質は見極められないことが多いと思います。