高知大学医学部整形外科教室 池内 昌彦 教授

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一人一人に合ったテーラーメード医療を

【いけうち・まさひこ】
1995年高知医科大学医学部(現:高知大学医学部)卒業、同整形外科入局。仁生会細木病院、東京逓信病院、高知赤十字病院、米アイオワ大学留学などを経て、2014年から現職。

 膝の国民病とも言われる変形性膝関節症。その患者は、高齢者層のみならず壮年期層でも増えているという。ニーズが高まっている今、いまだ解明されていない痛みの研究を続ける池内昌彦教授を訪ねた。

なぜ症状が出る人、出ない人がいるのか

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―変形性膝関節症の痛みに注目した理由は。

 変形性膝関節症というのは軟骨がすり減る病気です。東京大学のROADスタディによると、エックス線で変形性膝関節症と診断される患者数は全国で2400万人〜2500万人。実はその中で痛みを訴える人の数は約800万人、全体の3分の1程度なのです。残りの3分の2は痛みがないことになります。一体なぜ、こんなに差が出るのでしょうか。

 例えば、ここ高知県は平地が少なく、山間部で一人暮らしをしているご高齢の方がたくさんいらっしゃいます。その方たちの中には、足腰の変形が強いにもかかわらず、痛みがなく、元気に仕事をされている方が一定数いるのです。症状を訴えて病院に来る人たちとの違いは一体何なのだろう、と興味を持ちました。

 患者さんから、「ちょっとぐらい膝が曲がっていてもいいから、痛みをどうにかしてほしい」と言われることがありますが、これがなかなか難しい。実は軟骨のすり減り自体は痛みの原因ではありません。なぜ軟骨がすり減るのかや、なぜO脚が進むのかということはわかってきましたが、なぜ痛みが出るのか、ということはまだわかっていません。原因がわかっていない状況で治療するのは難しいですよね。だから研究しよう、というのがそもそもの出発点でした。

変形性膝関節症になりやすい人とは

―これまでの研究内容、そして見えてきたことは。

 通常、変形性膝関節症の診断のための検査としてエックス線撮影を行います。ただ、エックス線画像による異常所見―つまり変形の度合いや骨棘、関節の隙間が狭いなどといったことは、症状とはそれほど関連がないということがわかってきました。

 一方で、MRIや超音波の検査で見える異常所見は、症状と密接に関係しています。急激に骨や軟骨がつぶれたりすると、症状が強く出ることが多いのですが、そういった状況をMRIや超音波検査で捉えることができる。ここでわかった異常に対する治療を施すことで、変形性膝関節症の進行も止められる可能性が高いということもわかってきました。

 また、「KOKOA(Kochi Knee OA)スタディ」と言って、変形性膝関節症になりやすい人の危険因子を体組成の面から検討する研究も進めています。骨や筋肉、脂肪のつき方で症状の出やすい人、出にくい人の差があるのでは、という視点から、今は特に筋肉と脂肪の付き方に注目しています。

 脂肪は、実はいろいろなものを産生していることが分かっており、その物質が何らかの病態に影響を及ぼしている可能性があるのです。原因が解明されれば、これまで画一的だった治療も、個々に応じた治療法に変化させることが可能になります。今は新しい薬の開発も進んでいますので、今後、治療が大きく変わっていくかもしれません。

真の意味での健康を目指して

―今後の展望を。

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 高知の65歳以上の高齢者の割合は全国2位。"日本の最先端"です。

 多くの高齢者は、複数の疾患があり、また、その症状はさまざまです。これからは一人一人に合ったテーラーメードの医療を提供していくことが非常に大事だと思っています。

 特に一人暮らしをされている方の場合、膝や腰の疾患を治すだけでは、その人にとって健康であるとは言えません。社会的、精神的な問題も含めてのヘルスケアシステムの構築が求められています。整形外科医は運動機能全般、また肉体的な健康以外のものも含めて、その中核を担っていかなければならないと感じています。

高知大学医学部整形外科教室
高知県南国市岡豊町小蓮185-1
TEL:088-866-5811(代表)
http://www.kochi-ms.ac.jp/~fm_ortop/


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