岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体機能再生・再建学講座(整形外科学) 尾﨑 敏文 教授
今年度は手術件数をさらに増やします
― 今年の6月で、教授就任から10年。
教授になったばかりのころは43歳で、若さを売りに指導していました。若い人の気持ちを大事にしようと、ずっと考えています。今も同じ気持ちですが、最近では多くの仕事を部下に任せられるようになっています。面倒見のいい陽気な教室員が多いので、入局者は多い方です。
私は4代目の教授です。2代目の田邊剛造先生の頃に入局しました。
田邊先生は私が所属していたスキー部の顧問で、スキー部の学生に貸すために4輪駆動車を買うような、親分肌の、遊び心がある先生でした。田邊先生の人柄に魅せられて入局しましたから、若い人にとって私も魅力的でありたいと、常々考えています。
もっとも、人柄だけで教室に人は集まりません。臨床と研究の成果があって、教育もちゃんとする。特に、整形外科手術の7割ほどを占める骨折・外傷治療を重視しています。
岡山大学の整形外科と言えば、まず外傷治療なんですよ。日本骨折治療学会には全演題数の10%以上を同門から出しています。このように、私の教室では外傷が一番人気です。
現在は大学病院の教育担当副院長を拝命しています。本気で教育をやろ多いのが、岡山大学病院の特長です。
大学病院で卒後研修をしながら大学院に通える制度があり、本年は毎年17人くらいがその制度を利用します。私の教室にはその中から毎年、2人から3人ほどが入局してくれます。
―教室の特徴は。
朝のカンファレンスは英語で行ないます。私は合わせて5年間、ドイツのミュンスター大学の整形外科に留学しており、海外経験から得たものが大きかったことから、留学は推奨しています。
当科で行なわれている手術を見たいという人が来ますが、そうやって来てくれるのは嬉しいですね。研究をおろそかにするわけではありませんが、整形「外科」医ですから、手術には特別の思い入れがあります。
指導方針としても臨床活動に力を入れています。大学病院は、まず臨床的に信頼ができなければなりません。外科系の医師にとって信頼されるとは、まず手術を含め臨床活動がきちんとできることでしょう。
教室は、大学病院で毎年1千件以上の手術を受け持っています。合併症の少ない簡単な手術は関連病院で行なうようにしていますので比較的難しい手術が多いですが、10年間、大きなトラブルはありません。
昨年、大学病院は手術室を13室から20室に増やし、病院全体で200件ほど手術件数が増えています。整形外科でも160件ほど手術が増えました。
教室員たちはまだまだやる気で、2015年度はさらに10%件数を増やす目標でいます。以前より減りましたが、私も腫瘍関係の手術は精力的にやっています。
教室はスポーツ活動が盛んで、日本整形外科学会の野球とサッカーの大会では、ほぼ毎回本戦に出場しています。スポーツ好きが集まる整形外科医の大会ですから、全体のレベルは本当に高いです。研究グループの垣根がなく仲が良いので、スポーツ活動でのチームワークも良いのでしょう。
希望者は、Jリーグ・ファジアーノ岡山のチームドクターにもなれるので、それを目指して入局する人もいます。現在10人体制でのサポートで、同門から8人、教室からは6人出していて、内4人はアウェイの試合にも帯同しています。私自身は今月から、岡山県体育協会の理事になりました。
若い人の研究をサポートしやすいように、私はなるべく多くの学会に所属しています。教室には、中国・四国整形外科学会と日本運動器移植・再生医学研究会の事務局が置かれています。私自身は整形外科医、小児科医、放射線科医を中心とした日本ユーイング肉腫研究グループの代表もしています。
教室は、運動器医療材料開発講座と、運動器知能化システム開発講座の2つの寄附講座が併設されていることも特徴です。
― 岡山大学は、関連病院が多いことも強みです。
整形外科には100院近い関連病院があり、東は兵庫から西は岩国までの地域に医師を派遣しています。また関東にも関連病院はあります。若い人が腕を上げるには良い環境です。
医局人事は私の独断ではなく、アンケートを実施し、可能な限り要望を叶えるようにしています。私と医局長は大変ですが、みんなの意欲が高い状態を保てるので、とても良い方法です。
一人ひとりにあった場所を推薦することは大事です。勤務先が変わったことによって頭角を現す人がいるとわかり、人事の問題は重要視しています。どんな性格であっても、その人に合った力を発揮できる職場があると実感しています。
また、専門医と博士号を持っている人は、関連病院でなくても、好きなところで働いて良いと言っています。私自身が、そういう働き方をしたかったので始めました。そこで学んだ知識を持って帰ってくる人がいるから、教室が活性化しています。
同門の先生では川崎医科大学の整形外科で2人が教授をされており、同大とは非常に良好な関係を築いています。県内の大学ですし、関係が良好なのはいろいろと都合が良いですね。
ほかに東京医科歯科大学や吉備国際大学などに、同門の教授がいます。広島大学で教授をされた津下健哉先生は、同門の偉大な先輩です。
― 昨年からサルコーマセンター長です。
サルコーマ(肉腫)は希少ながんなので、大学病院内でセンター化すべきだと私が提案しました。
サルコーマ治療がセンター化されたのは、西日本では始めてです。センター化は各科の連携がとりやすいというだけでなく、患者さんや地域の先生に対するアピールにもなります。センター化して、中四国以外から来院される患者さんも増えました。難しい病気ですし、患者さんがどこで受診すべきか迷うことがこれまでは多くありました。それが減ったということでしょうから、嬉しいですね。