人の輪、地の利、時代の要請、時の運「私はそれを調整しただけ」

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佐賀国際重粒子線がん治療財団理事長 十時忠秀

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佐賀県立病院好生館理事長
佐賀県医療顧問 佐賀大学名誉教授
1968 九州大学医学部卒
1980 医学博士(九州大学)
1982 佐賀医科大学麻酔科教授
2003 佐賀大学医学部付属病院 病院長
2005 佐賀大学副学長、医学部附属病院院長兼任などを経て現在に至る。

来年5月に治療を開始 重粒子線がん治療 サガハイマットへの期待

2007年に古川康佐賀県知事が、最先端がん治療施設の誘致にチャレンジしたいとマニフェストで表明し、佐賀大学附属病院院長として協力を求められ、医学部長・病院長会議で提案したのがサガハイマットの始まり。

当時、重粒子線治療は、千葉の重粒子医科学センター病院と兵庫県立粒子線医療センターの2施設だけで、九州にも1つあるべきだというのが結論だった。

患者の紹介やメディカルスタッフの確保と育成を九州と山口の大学連合で行ない、センター長には工藤祥前佐賀大学医学部放射線科教授を迎えた。

装置の全長は90㍍にも及ぶため、建物を建てながら組み立てている=写真。今年10月15日に落成するが、治療装置の試験や厚労省の許可に時間がかかり、治療開始は来年の5月を予定している。

福島の原発事故の影響が多少あり、寄付が集まりにくいのは否めないが、もともと産官学の信頼関係で始まったプロジェクト。福岡の七社会(=福岡の有力企業七社が集う任意団体)を中心とした大手企業のバックアップがあるから、多少の遅れがあっても目標金額は必ず集まると考えている。今後も粛々とやっていく。

小川洋福岡県知事は、久留米大や福大、九大などとサガハイマットの協力関係を踏まえ、医療に県境はないとして補助金を交付してくれた。この時代に県境をこえて補助金を出してくれるのは極めて稀で、いかに多くの方々が期待しているかの表れだろう。

がんは苦しんで亡くなる不治の病だったから、告知しない時代が長くあり、胃がんは胃潰瘍、肺がんは肺結核と患者に伝えていた。

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写真上=順調に建設が進む施設の内部(シンクロトロン室)
写真下=サガハイマットの外観。(2枚とも佐賀国際重粒子線がん治療財団提供)

告知するようになったのは、もう不治の病ではなく、痛みもコントロールできるようになったため。最近はさらに、患者にやさしい治療が求められている。入院で生活環境が変わり、認知症が始まる老人もいるから、生活は変えないほうがいい。

痛みもなく、外来でがん治療が出来る重粒子線治療は、まさに患者のための医療だと言える。

従来、顔面に骨肉腫ができると、顔の半分が失われるうえ、5年生存率がわずか30㌫。外科手術による顔面変形のため自殺した方もいた。また、若い人の骨肉腫や悪性黒色腫は、化学療法も放射線も有効でなく外科手術による切断しかなかった。

重粒子線はがんのある部位に狙いを定めてピンポイントで照射するため、従来の放射線治療に比べて格段に副作用は軽く、機能不全や痛みも少なく、四肢切断や顔の崩れもない、まさに人間の尊厳も守る治療で、およそ300万円の治療費を高額と思うかもしれないが、最新の化学療法で1千万円かかることを考えると、決して割高ではない。

佐賀大の病院長時代、古川知事から要請を受けて文科省にハイマットの話をしたところ、佐賀大学と佐賀県だけでは予算も人も足りないから到底無理だと言われたが、文科省の課長から、産官学の連携が取れれば成功するかもしれないとの言葉があった。

「官」は佐賀県、「学」は九州の大学連合との協力がある。「産」については偶然にも九州の企業、とりわけ福岡の七社会に高等学校の同級生が多くおり、それなら私が産官学の調整役として人の輪をつなぐ役割を果たそうと思った。

その当時、移転新築する佐賀県立病院好生館の理事長就任も決まっており、ゼロから出発するハイマットの理事長も兼任するのは無理だと思った。いろんな人に相談したが、8割が無理だと言い、妻にも「頼まれたら断りきれないのね」と言われた。

いま振り返ると、産官学の連携という人の輪、交通の要衝である鳥栖という地の利、がんをなくそうとする時代の要請と時の運、患者にやさしい治療が求められる時代、サガハイマットはこれら全てが結実したものだ。

―佐賀大学附属病院の宮﨑院長が当紙の取材で、「十時先生は先輩ですから逆らえません」と言われていたそうですが―

私のほうこそ宮崎先生にはいつも言い負かされています(笑)。九大の先輩後輩の間柄で、サガハイマットはもちろん、好生館と佐賀大学のツインタワーで佐賀県の医療を守ろうと協力しています。


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