鹿児島大学 整形外科学教室

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鹿児島大学大学院 整形外科学 小宮節郎 主任教授

日本整形外科学会最高賞「学術賞」を受賞
独自開発のウイルス医薬による
癌への「First-in-Human」の医師主導治験

こみや・せつろう/福岡教育大学附属久留米中学校、久留米大学附設高等学校を卒業。1978 年、鹿児島大学医学部卒業。ハーバード大学付属マサチューセッツ総合病院整形外科、久留米大学医学部整形外科助教授などを経て2000 年より鹿児島大学医学部整形外科学教授。2006 年より、医療関節材料開発講座特任教授。2011 年より、近未来運動器医療創生学講座特任教授。日本軟骨代謝学会理事 日本股関節学会理事日本関節病学会理事 日本リウマチ学会評議員
■専門医療:関節外科、関節リウマチ、腫瘍

 鹿児島大学整形外科学教室は最近ふたつの大きなイベントを経験した。日本整形外科学会学術賞の受賞と、ウイルス医薬による医師主導治験の開始を間近に控えてその概要が全国マスコミで報じられたことである。そこで今回は講座主任の小宮節郎教授に教室紹介とその内容について語っていただいた。

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日本整形外科学会学術賞の賞状を手にほほ笑む小宮教授。医局の自室で。背後には学術賞副賞のバカラ社製花瓶が。

 鹿児島大学整形外科学教室は1945年6月に開講し、70年の歴史があります。その間、初代の宮崎淳弘、2代目の酒匂崇に続いて、2000年1月より私が教室を主宰しています。在任期間が長くなっていますが、惰性に流されないように常に新しいことへチャレンジすることを心がけています。

 鹿児島は本土最南端に位置し、近隣に競合する大学がないためか、のんびりとした雰囲気が流れています。穏やかで優しい方が多く、地道な努力を継続する資質をもっており、まとまりのよい集団ですね。

 現在の同門会員は約300名、教室員は100名ほどで、人間関係は良好です。大学には30名ほどが勤務しています。

 鹿児島県は離島まで含めると南北に約600kmにもおよぶため、へき地医療への重責を担っています。一方、アカデミズムも意識し、地方国立大学として少しでも医学の発展に寄与できればと考えています。

 今回の「学術賞」受賞は、その学術的な取り組みが評価されました。

 「学術賞」は学問・サイエンスにおける世界レベルの傑出した研究業績で整形外科医療に多大な貢献をもたらした方に贈られます。5年前、日本整形外科学会が公益社団法人化されるにあたって、社会への還元と学術性の高さで評価される学究的な賞として創設されたものです。創設後2人目の受賞者となりましたが、研究成果は多くの優秀な教室員の手によるも

 私たちの主な研究内容は以下の通りです。

 ①骨肉腫、がん患者に対する新しい遺伝子治療の開拓とその実施、②新規細胞内シグナル伝達物質の発見とがんや関節リウマチへの応用、③脊髄損傷への神経幹細胞を用いた脊髄再生医療の開拓、④軟骨の分化機序、骨形成の分子メカニズム解明による骨格形成・成長・加齢変性のコントロール。

 現在、独自に開発したウイルス医薬の薬事承認を目指した医師主導治験を2016年1月から実施すべく準備を進めています。このウイルス医薬は、鹿児島大学整形外科と遺伝子治療・再生医学分野の共同研究の賜物です。日本で主体的に医薬品として実用化されるために、海外で開発された技術の輸入・応用ではなく、基盤のベクター技術から既存技術より優れたものをすべて独自開発する(特許が必須)という方針で研究を続けてきました。この長年の研究成果と知財基盤が評価され、本治験に対する研究費が交付されたと思われます。

 日本医療研究開発機構(AMED)は、健康医療戦略推進本部のもと医療分野研究開発推進計画を基盤に、省庁の壁を越えた医療分野の研究開発の司令塔として本年 4月に発足しました。基礎から実用化まで切れ目のない研究支援を一体的に行う「日本再興戦略」の目玉のひとつです。

 今回、革新的がん医療実用化研究事業に採択された本研究課題では、従来の治療法では効果がなかった特定のがんに対し医師主導治験(医師が自ら治験を立案し、実施するもの)を行うことを目的としています。一方、日本での遺伝子治療臨床試験は、ほとんどが薬事法に基づかない臨床研究です。日本で独自技術の開発を行い、国内・国際特許を取得して国際標準(ICH‐GCPレベル)の治験を行うことを計画しています。

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 がん遺伝子治療においては、初期に多用された非増殖型ウイルスベクターは、「すべてのがん細胞に遺伝子を導入できない」という大きな弱点がありました。そこで、より多くの腫瘍細胞に遺伝子を導入できる次世代のウイルスベクターとして登場したのが、がん細胞で優位にウイルス増殖してがんを殺傷する「腫瘍溶解性ウイルス」です。

 私たちは、従来の「癌特異的増殖制御型アデノウイルス」(CRA)の性能を越える、次世代の「多因子で精密に癌特異標的治療するCRA(m‐CRA)」を簡便かつスピーディに構築する作製法の独自開発に成功しました(日米欧特許取得)。この作製法を用いて、がん特異的遺伝子サバイビン(Survivin)に反応性のm‐CRA(Surv.m-CRA)を世界に先駆けて開発しました。

 サバイビンは、種々のがんに強く発現し、正常細胞には発現がほとんど見られないアポトーシス抑制分子です。Surv.m-CRA はがん細胞ではウイルスが旺盛に増殖して細胞死を誘導する一方、正常細胞ではウイルス増殖が抑えられ、細胞傷害(副作用)が抑えられました。前臨床試験としてのマウス骨肉腫モデルにおいても少ない量の単回腫瘍内投与により有意な増殖抑制が得られました。

 さらに「がん幹細胞」への強い治療効果など、Surv.m-CRA に関する前臨床研究を重ね、臨床応用への準備を続けて来ました。

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小宮教授(前列中央)を中心に、強い結束力を誇る鹿児島大学整形外科学教室のメンバー

 2016年初頭には、アカデミア発・オリジナルの医薬を世界で初めて患 者 さ ん に 投 与 す る「First-in-Human」の治験を開始できるよう準備を進めています。これは、私たちが非臨床試験で研究を重ねてきた、稀少がんで有効な治療法のオプションが少ない骨軟部腫瘍(治療困難な進行性、原発性・転移性を含む)を対象とします。

 近年、iPS細胞など再生医療研究の発展をうけ、日本でも早期の臨床応用を進める目的で薬事法が改正されました。

 これは、医薬品や医療機器とは別の「再生医療等製品」を新たに定義し(再生医療・細胞製品に遺伝子治療製品を含む)、早期の治験で有効性が推定され、さらに安全性が確認されれば、条件および期限付きで早期に販売承認が受けられる仕組みです。

 骨軟部腫瘍に限らず、さまざまながん患者さんに、一刻も早くこのウイルス医薬をお届けすることができるよう、今後も治験を進めていきたいと思います。


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