周囲の支えがあってのこと

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国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 院長 一宮 仁

1976 九州大学医学部を卒業し同第一外科入局 国立小倉病院、中津国立病院勤務 1987 スウェーデンカロリンスカ研究所留学 1994 国家公務員共済組合連合会浜の町病院外科医長 1995 同外科部長 2005 九州大学医学部臨床教授 2008 国家公務員共済組合連合会浜の町病院診療部長 2009 同副院長 2014 同院長
■日本外科学会指導医・専門医 日本消化器外科学会指導医・専門医 日本内視鏡外科学会評議員・技術認定医 日本肝胆膵外科学会評議員・高度技能指導医 九州外科学会評議員
■福岡市勤務医会会長 福岡市医師会理事 福岡市救急病院協会理事 福岡県病院協会理事 九州大学医学部臨床教授 九州大学医学部同窓会常任理事

―病院が新しくなりました。今後の方向と見通しは。

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国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 院長 一宮 仁

 急性期型の病院に変わりはありません。時代を反映して高齢者の心臓疾患や呼吸器疾患が増えてくるのはごく当たり前のことで、扱う疾患の比率や年齢構成はこれから変わるでしょうが、新病院はこれまでの急性期医療をより充実させ、より安全に提供できることを目指して建てられたわけですから、急性期病院としての治療形態を継続します。

―「家に帰す」と声高に言われ始めました。時代が求めているのでしょうか。

 医療資源的には必要に迫られているでしょうが、患者さんや家族は必ずしも求めていないと思います。「患者は家で亡くなりたい」という話を聞かないわけではありませんが、家族が大変だと思います。私たちが子供のころの家族構成や地域のコミュニティーではないですからね。福岡市の都心では老夫婦だけあるいは独居老人は増えていても、大家族なんてありえないです。ここで診た高齢の方を後方病院に紹介する時、中央区にはほとんどないですから、患者さんやご家族にとっては少し離れて不便な地域の施設に転院することになります。慣れ親しんだ家や地域で穏やかに過ごすことは容易ではありません。

―医療で解決できないことが増えそうですね。

 ジレンマはみんな感じているでしょう。でも急性期病院が機能を発揮し続けるためにはそうせざるを得ないこともあります。仁術が通用しない社会になりました。うちは急性期病院で、職員もそのモチベーションで働いていますから、そこに別の機能を持ってきても、病院が動かなくなります。急性期医療をやりたくてみんな集まっているわけです。それは貫かなければいけないし、そのために後方支援病院やかかりつけ医との連携の見直し、再構築に取り組んでいます。

 地域包括と言っても地域のコミュニティは昔と比べると希薄ですし、医師だけに負担させても解決できない問題でしょう。行政、医師会が中心となりマスコミをはじめいろいろな組織の協力のもとに体制を整備する必要があると思います。

―医師として今をどう見ていますか。

 長寿は素晴らしいことですが、長寿が当たり前になってしまい、老いる・衰えるということ、生命には限りがあることの受け入れが乏しくなっているように感じます。高齢者になれば健康に感謝し、良い人生だったなと思えればいいですよね。医療については、かつてマスコミや司法が「患者の権利と医師の責任」を強調しすぎた結果、逆に患者さんのためにならない不信感や医療サイドには萎縮、防衛が生まれました。セカンドオピニオンで病院を回るのは構いませんが、標準的な説明に納得できず不老長寿、絶対治癒、絶対安全の説明を期待して何施設をも受診することはどうかと思います。僕らが医師になったころの方が患者・医師関係が築きやすかったように思います。

 新病院は2025年に向けて、今まで以上の医療機器を導入しましたし、スタッフも増員しました。高齢者の急性期医療に関してはきちんとできる方向に行くつもりです。でもそれから先、急性期を乗り切った後のケアはやりたくてもやれない仕組みになっています。国民の皆さんがそんな時代であることを受け入れ、そして行政と医師会などと協力してハード面の整備を急ぐ必要があります。時間はあまり残っていないですからね。システムができていないままだと、医療従事者も患者さんもアンハッピーです。

―なぜ、きつい急性期を。

 医師を志す動機はいろいろあると思います。幼少の頃から高校生くらいまでに、何か医療や生命に関する出来事を経験してそれをきっかけに強い思いで医師になった人が急性期病院に多いように思います。急性期病院が好きな人は、年齢や職域を超えたチームワークに支えられ、肉体的、精神的にきつくても充実した毎日になっています。

 でもやはり、患者さんや家族から感謝の言葉があるからがんばれるんですよ。その関係を壊すような情報が今はいっぱい入ってきて、互いに疑心暗鬼になっているような状況ではないでしょうか。

―若い医師に助言があれば。

 医師を目指したきっかけ、志を持ち続けてほしい。本来は崇高だったものが研修医の時に現実を見ることで向きを変えてしまうことがよくあります。医療崩壊と言われますが医師の数がそんなに減っているわけではない。穏やかな仕事を選べば穏やかに過ごせるでしょうが、それは本来の医師の姿ではないように思います。最初の思いを忘れないでほしい。そしてそのために、国民の皆さんが、生命と医療、自分の死生観について、今一度しっかりと考えてほしいと思います。

 私はこの仕事を通じて、「一人では何もできない。一人では医師としての使命を果たせない」ことを知りました。周囲の支え、浜の町の看板があっての今日に心から感謝しています。


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