医療ニーズに応え、業績をブランドに
福山市民病院は1977(昭和52)年に現在の蔵王の地に開院。今年で創立40周年を迎える。
坂口孝作院長に肝疾患診療連携拠点病院としての取り組みや、病院の今後などを聞いた。
◎福山市民病院、肝臓治療の取り組み
広島県には、県西部に広島大学病院(広島大学消化器代謝内科)、東部に福山市民病院の二つの肝疾患診療連携拠点病院があります。県東部にも多くのB型肝炎やC型肝炎の患者さんがいらっしゃいます。福山市民病院は肝疾患診療連携拠点病院としてB型慢性肝炎、C型慢性肝炎をはじめ肝硬変、肝がんなどのあらゆる肝疾患の診療・治療に対応しています。
最近では経口抗ウイルス剤によりB型肝炎ウイルスの増殖を抑制し、C型肝炎ウイルスを除去することが可能となりました。それらの新薬が登場し、治療成績が飛躍的に向上しました。当院でも積極的に新薬を用いた治療を行っており、高い治療効果を得ています。
また糖尿病・脂肪肝を基礎疾患とした肝硬変、肝がんの患者さんが増加しています。当院では肝疾患コーディネーター、看護師、栄養士、薬剤師などによるチーム医療として肝疾患診療・治療に取り組んでいます。
◎肝疾患相談室
病院玄関から入ってすぐの場所に肝疾患相談室があります。この相談室には看護師が常在し、肝疾患についての情報提供、医療費助成制度についての説明、肝炎ウイルス検査の案内、地域の肝疾患専門医療機関の紹介、病気に対する不安や疑問に対する対応、セカンドオピニオン受療案内などをしています。
また当院1階のホールでは肝臓病教室を年に4回開催していますし、院外で市民公開講座を年に1回開催しています。肝臓病教室では医師、薬剤師、栄養士などが、治療法や食事、薬についてなど毎回テーマを決めて講演します。これらの活動によって福山地域のみなさまが肝疾患の知識を深め、より良い肝疾患診療・治療をうけるきっかけになれば幸いと思っています。
◎さまざまなアプローチが選択可能
私は1979(昭和54)年、岡山大学第一内科(消化器・肝臓内科)に入局以来、35年以上肝疾患診療に携わっています。肝がんの治療も行ってきました。肝がんの治療にも薬物療法からラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法(カテーテル治療)などさまざまな治療法があり、それらのさまざまの治療法で肝がんにアプローチできることに魅力を感じます。院長になってからも外来診療は継続していますし、肝がんの治療もしています。院長業務の重要さは十分分かっていますが、正直に言うと、院長室に座って仕事をしているより、臨床をやっている方が楽しいのです(笑)。今後もなるべく臨床に関わっていきたいですね。
新薬の登場でC型肝炎の患者さんは、今後減少していくでしょう。しかし、肝がんがなくなるわけではありません。内科治療、外科治療を組み合わせた患者さんにとって最適な治療を今後も提供していきたいと考えています。
◎びんご圏公立病院等連絡会議
福山市民病院は「がん医療」「救急医療」「高度専門医療」を中心に、地域医療の中核病院としての役割を担っています。
これから力を入れていかなければならないのは備後圏の医療連携ネットワークの強化です。現在、福山市主導で、近隣の6市2町による備後圏域連携中枢都市圏構想が進んでいます。
この構想は圏域の経済成長のけん引と高次都市機能の集積・強化、生活関連サービスの向上を図るものです。
医療面においては当院が中心となって、びんご圏域医療・介護ネットワークとなる「びんご圏公立病院等連絡会議」を構築しました。同ネットワークでは他医療機関との「クリニカルパスの運用」「院内、院外の医療従事者の交流・育成」「当院から他病院への医師の派遣」「チーム医療の強化」などの取り組みをしています。
びんご圏域医療・介護ネットワーク内で私たち福山市民病院に課せられたミッションは「医療ニーズに応え、医療ニーズを業績に転換し、発展的に継続すること」です。業績を積み重ねていくことで「福山市民病院ブランド」の確立につなげていきたいですね。
◎コミュニティー創生を担う
当院は地域の高度急性期、急性期医療を担う総合中核病院として備後圏域コミュニティー創生の中心的役割を担っています。医療機関がない地域に住みたいと思う人はいないでしょう。信頼できる医療機関があるからこそ、人が集まり、コミュニティーが形成されるのです。
◎「断らない」救急
救命救急センターでは、9人の救急医が専従で診療をしています。圏域内唯一の3次救急施設として福山・府中をはじめ、因島以東、県境を越えた岡山県の井原・笠岡地域、愛媛県からの患者さん、ドクターヘリにより搬送される各地域からの患者さんを受け入れています。
2015年1年間の救急搬送台数は3557台、2014年は3198台。応需率は2015年が98.8%、2014年が98.3%です。院長就任以来「断らない救急」を徹底してきた成果だと考えています。
◎常に高みを目指してほしい
当院は若い医師が多いのが特徴です。
若い人たちには自分の業績を上げるよう努力し、キャリアアップを目指してほしいと思っています。そうすることは病院の業績にもつながります。向上心を忘れずに、自分の業績を上げて常に高みを目指してほしいですね。そのための環境は整っています。